破天荒な天才

弥生

破天荒な天才1

 

 そいつの狂った才能は、まさに厄災とも思えるようなものだった。


 6才にして作った重力制御装置は、『力士って風船みたいで、たくさん飛ばしてみたいよね』という無邪気な発想によって、大量の力士が宙を舞う地獄かと思うような光景を産み出したし。


 8才にして作った生体類融合マシーンは、『うさぎと猫どっちも好きだから、混ぜちゃえば最高に可愛いよね』の悪魔か? という発想によって産み出された幾多の生物は、世界機構による超弩級の禁忌実験として封じられたし。


 とにもかくにも、この破天荒な天才が、いや、天災が産み出したしたものたちは、畏怖と奇異性をもって、世界から恐れられていた。

 俺にできるのは、どあほぅ! って産み出された災厄たちをこんこんと、その危険性というか、悪用されたら大変だろうということを幼馴染みとして嗜めることぐらいしかできなかったが。

 もちろん、この天才はそんなつもりじゃなかった……。としょぼくれて一応反省はする。

 その直後に『ねぇ、ちょっと考えたんだけど!』と、また恐ろしいアイデアを披露するんだが。


 そんな無邪気な狂人も、さすがに進行性の病を止めることはできなかったらしい。

 発覚した時には末期。若いからこそ回りが早く、入院した時には手の施しようがなかったようだ。

『うそだ……そんな……僕にできないことがあるなんて…………』


 泣きじゃくり、悔しがり、発狂しそうなぐらいに思い詰めるその姿に、少しだけ憐愍れんびんを感じる。

 そうだよな、お前。

「お前ができなかったことはなかったもんな」

 そう呟くと、首を振って嫌々と泣きじゃくる。


「お前は天才だから。その才能を正しいことに使ってくれ」


 そう呟くと俺は事切れた。



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