第2話 ゴミ収集と試用期間
「お疲れ様でしたー」
仕事を終えた社員達が、洗車場を通過して家路に急ぐ。オレとマキナさんは、他の人に水がかからないよう注意して収集車を水洗いしていた。他に洗車しているチームはいない。ウチが最後だった。
ホースを持ったまま、片方の手でハンマーを振ってみる。今度はちゃんとできるようになりたい。魔石の核を割るイメージを脳内で再生して、何度もハンマーを振った。
「うわ臭っ。またゴミ汁かかったのか」
声に反応して振り返る。苦手な先輩がいた。鼻を摘み、手でパタパタ扇いでいる。
「ウガン地区の現場で魔石が孵化したんですよ。何度もおばあちゃんにゴミの分別の説明をしたけど、できなくて」
「ウガン……ああ、ホルダのばーさんのところか。そりゃそうだろ」
「知ってるんですか?」
「近所の奥さんから聞いたんだよ。同居人の孫が出ていって、一人暮らしになってからボケ始めたってな。だから何度言ったってムダだってーの」
先輩が黄ばんだ歯を見せてニヤニヤ笑う。
「分別の説明なんてテキトーにやっとけ。孵化した魔獣が出たら、倒して収集すりゃ解決じゃねぇか。いや、まだ一匹も倒したことがないお前じゃムリか。試用期間の間に倒せなくてクビかもな。冷た!?」
マキナさんがホースの先を摘まんで、先輩に水をかけていた。
「何すんだ。やめろって。悪かったって。後輩のことバカにしねーから」
先輩が退散していく。オレの口からため息が出た。
「そう落ち込まないの」
「でも、先輩が言ったことは事実ですし」
今日だって現場で足を引っ張った。オレが魔獣を倒せることができれば、マキナさんの負担を減らせるのに。
マキナさんがホースの水を収集車に向けた。こびりついた野菜の破片や生ゴミのカスを、水の勢いで落としていく。
「先に服と身体の汚れを落としておいで。収集車と道具は私がしまっておくから」
「オレもやります。迷惑かけられませんよ」
「そんなことはいいの。このあとおいし屋に行くんだから、他に気にすること、あるでしょ」
俺は汚物で染まった作業着の裾を、鼻に近づけた。
「やっぱ臭います?」
マキナさんは鼻で息をしないように返事をした。
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