第三勢力編
第2話 処分
タウレッド王国、首都・トレード市
ワトソン重工本社ビル地下
円卓同盟特別会議室
2025年3月某日 夕方17時50分頃
ヴィクターは自分の席に座っていた。
ノートルダム会長より、円卓同盟のメンバー全員が18時に会議室に集まるよう、
2時間前にメールが届いた。
今回の緊急会合の議題はおそらく自分の謀反が会長にばれたことだと思った。
良心に従ったため、ヴィクターはまったく後悔していなかった。
会長と円卓同盟のメンバーを待っている間、加入した経緯を思い出していた。
1810年頃、まだ医学生だった頃、生命の神秘に惹かれ、
人工的に生命を創造することに没頭した。
独自に錬金術と化学を融合し、生命を生み出す実験に挑んだが、失敗に終わった。
それから更に勉強に励んで、実験に使う装置を改良し、大学を卒業する時までに
準備万全の状態で再び実験に挑んだ。
その時はヴィクター1人ではなく、イゴールと名乗った若い背中の曲がった男性を雇った。
1814年3月頃、彼の実験が成功した。
人工的に生命を創造し、死体の様々な部分を繋ぎ合わせた体の大男に生命が吹き込まれた。
大男は穏やかな性格で尚且つ知的な存在だった。
実験の段階で火傷を負ったものの、生命維持に支障がなかった。
ヴィクターは自分で造った大男を息子のように思い、アダムと名前を付けた。
大男はヴィクターを父と慕い、彼の元で勉強し、父の実験の手伝いまでできるようになった。
1816年11月頃、アダムは創造されて2年が経過した時に、会長と今地下で幽閉されている中東系の若い男性がヴィクターを訪れた。
野心もあったし、実験の成果を学会や世界中に示したかったので、ノートルダムの話に乗り、円卓同盟に加入した。
彼はある透明な血清を打たれ、あれ以来、歳を取らなくなった。
息子のアダムは実験の副作用で人間(ウォーム)に比べれば永遠の命を得たように見えたため、血清を打たなかった。
助手のイゴールは血清を打たれ、ずっとヴィクターの実験をサポートしてくれた。
ワトソン商会、現ワトソン重工の研究部門の総責任者に任命され、ずっと論理的に許されない実験を行ってきた。200年以上存在している今、その決断を悔やんでいた。
血清で得た永遠の命の代償は凄まじく、耐え難かった。
それは生きた人間(ウォーム)の血肉をずっと食べ続けなければならない、
呪いのようなものだった。
マイケル・ノートルダム会長が会議実に入り、自分の席に座った。
既に他のメンバー、全員が自席に座っていた。
「急に集まってくれて、ありがとう、皆さん。」
円卓同盟のメンバー全員、会長に軽く頭でお辞儀した。
「今回集まった理由はヴィクター・フランケンシュタインの謀反ですよ、皆さん。」
円卓同盟のメンバー全員、一斉にヴィクターを見た。
「そうですよね、ヴィクターさん?」
会長は独特な皮肉で問いかけてきた。
「会長のいう通りです。」
ヴィクターはノートルダム会長を真っ直ぐ見ながら答えた。
ノートルダム会長は大きな声で笑いだした。
「ずっと前からあなたの謀反を知っていたよ。対策も取ってあるし。」
悪意の塊みたいな嫌な笑顔でヴィクターに向けて、会長は話した。
「これからあなたを処罰する。永遠の命を得たのに、それを与えた私を裏切る傲慢な科学者にはこの神聖な円卓同盟に席がない。」
「神聖な円卓同盟?これが?」
ヴィクターは怒りと悲しみを混じった声で会長に言った。
「何か文句でもあるのか?」
会長は嫌味たっぷりの笑顔で問いかけてきた。
「永遠の命か。確かに私はそれを求めていたが、実際得てみると地獄だった。生きた者を食わなければならないまがい物の永遠の命など私は要らん!!」
ヴィクターは怒り、悲しみ、絶望を表している顔と声で会長に強く言った。
「要らないんだ?そうか、そうか。既に得たものは私でも取り上げることができないが、肉食わす、血を飲まずにどれだけ存在し続けられるのは見たいな。」
「私を殺せ、ミシェル。もう疲れた。」
ヴィクターは会長にお願いした。
「死ぬことができない者は殺せないよ、ヴィクター。君を地下で幽閉する。あの名無し男とともに。それとミシェルではないよ、私をマイケルと呼べ。」
席の後ろ、小島ともう1人の隊員が既に立っており、彼を連行した。
ヴィクターは抵抗せず、頭を下げて、歩き出した。
「ヴィクター、君と会えなくなる前に一つだけ教えてあげるよ。私専用のボーディガード、あなたが造ってくれたもう1人の人造人間、通称名[ジャック・ザ・リッパー]君の息子を追うように行かせた。」
ヴィクターの目に恐怖が浮かんだ。
「やめろミシェル、頼む、それだけはやめろ!」
「だから、ミシェルじゃないよ、マイケルだ。」
暴れ出したヴィクターを抑えていた小島に会長が命令した。
「小島君、その裏切り者をここから連れ出せ、地下に幽閉して、そして忘れるな、目と口を鋼の糸で縫い、頭を切り落として、別々のタンクに入れるようにしてくださいね。」
「承知いたしました、我が主(マスター)。」
蝋人形のよう笑顔で小島が答えた。
ヴィクターは連れ出された後、イゴールを新規加入者として、改めて他のメンバーに紹介した。
彼は大きな笑顔でヴィクターの元席に堂々と座った。
遡って先日
タウレッド王国、首都・トレード市
中心部にあるセントラルホテルタワー1階のロビー
2025年3月某日 夜20時頃。
ホテルのロビーで大男と神父がソファに座って、話していた。
「これは私の独自の判断です、ブラウン神父。」
「わかったアダムさん、私はこれを持って、枢機卿に渡す。」
「大変助かります。感謝します。」
「それにしても、驚いた。あなたのような人造人間が我々カトリック教会に頼るとはね。」
丸顔の眼鏡神父が大男に話した。
「あの円卓同盟は共通の敵です。闇の評議会だけではなく、あなたたちのもね。」
アダムは深刻そうな声で答えた。
「確かに、我々は静観を決めていたし、ほとんど機能しなくなった人間の評議会が既にワトソン重工の手に落ちているのが最近わかったので。」
眼鏡の神父がアダムに伝えた。
「私は闇の評議会の中でもワトソン重工に通じている者がいると予想はしている。」
「おそらくそうでしょうね。我が教会内でもいるだろうな。」
「私も予想していたので、敵に通じてないかどうか、あなたを徹底的に調べてみた。」
「それは、それは意外ですね。」
「1910年頃から世界中に派遣されて、難題な事件を解決してきたあなたを信用することにした。」
「そこまで調べたのか?流石アダムさん。」
「あなたの上司である枢機卿も信用できると判断した。」
「我々も数世紀、吸血鬼やら、殺人者やら、奇人やらと戦っているからね。連中は長寿である以上、我々も長寿にならざるを得ない。」
「お願いです、ブラウン神父。」
「安心して、必ず渡すよ。でもこれあのノートルダムにばれないと思う?」
「私は血清打たれてないし、単純な存在を装ってきたので彼の能力(スキル)探知(レーダー)にかからない可能性が高いと計算した。」
「なるほどね。ではまた君に連絡する、アダムさん。」
その後、トレード市国際空港からブラウン神父は23時のローマ行き便に乗った。
アダムはおそらく今夜父親がノートルダム会長を裏切り、自分を評議会の力のある主(マスター)のところへ逃がし、明日地下牢に幽閉されると予測した。
アダムは泣いた。
「呪いを終わらせる方法も含めて必ず助けるよ、父上。」
と悲しくつぶやいた。
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