第5話 繋ぐ美雨


「告白して、前に進もう……」


 昨日家に帰って俺はそう心に決めた。


 今更告白なんかしたってきっと迷惑だろうけど。


 美玖には好きな人がいて俺はもう過去の男なんだから。




 学校から帰った俺は着替えて美玖の家に行く準備をする。


 俺と美玖の家はそこまで遠くはない。

 中学が同じだったから歩いて行ける距離だ。


 今から行く、と伝えて美玖の家へと向かった。




 家に着くと、すぐに行くと伝えていたからか外で待っていてくれた。



「どうしたの?急に会えないかなんて……」



「ああ…その……」



 っ…!

 言わないとだろっ……! 言え言え言え言えっ!



「急にこんなこと言われても迷惑…だと思うけど……

 俺さ、美玖と疎遠になった時から今日までずっと美玖のこと好きだったから……。あ…ありがとな今までっ!」




「え……?」



「それだけ…言いたくて……それじゃっ」



 完全な言い逃げである……。

 情けないけど…伝えるだけで精一杯だ……。



 ダッシュで家に帰る……、



 後ろで美玖が何か言ってるが。今は無理だっ……!




 曲がり角に差し掛かり人とぶつかりそうになった。



「す、すみませんっ!ごめんなさい!」


「びっ、びっくりしたぁ……!って悠さん?」



「え…?美雨ちゃん?」



 美玖の妹の美雨ちゃんだった。

 付き合っていた頃に美玖の家に行くと一緒によく遊んだ仲だ。




「どしたの?そんな泣きそうな顔……。お姉ちゃんに振られでもした??」



 なんで今会うかなぁ……。



「いや……まぁ……うん。」



「え?? 振られたの???」


「振られたっていうか…美玖には好きな奴がいるから

 もう諦めようと思って……。前に進むために好きだって伝えたんだ」



「んん???」



「ごめん、帰って寝るわ…。おやすみ……」



「あっ!ちょっと!?悠さん!?」



 〜〜〜〜〜〜〜〜


「ただいま、なんでこんな所に居るの?お姉ちゃん?」


 家に着くとお姉ちゃんが外に出ていた。


「ねぇ……美雨」



「ど、どうしたの…?」


 お姉ちゃんは心ここに在らずって感じだ。



「悠に告白されちゃった……好きだって……!」



「悠さんにさっき会ったよ?そこで」



「そ、そう……。な、何か言ってた??」


 髪をくるくると弄りだすお姉ちゃん。



「諦めるって…」



「え??」



「お姉ちゃんには好きな人がいるから自分は諦めるって!!」



「えぇ!?」



「なんでこんな事になってるの!?お姉ちゃん!」



「ど、どどどうしよう!?美雨ぅーー!」




 お姉ちゃんにしがみつかれて息がくるじぃ……。

 外で恥ずかしいから私は強引に家に連れ込んだ……。
















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