第4話 美玖side

 悠と待ち合わせしていたら男が声をかけてきた。



「良かったらご飯でも一緒に食べない?」



 断ったのに連絡先は聞いてくるし彼氏いるの?とか聞いてきて……さっさとどこか行ってくれないかな……。



「美玖?」



 そう思っていると悠が来てくれた。


「悠っ…」

「ナンパよ。しつこいの」




「あん?誰だおまえ?邪魔すんなよ」


 あなたの方が邪魔!!




「友達です。彼女と待ち合わせしてたんで……。もう良いですか……?警察呼びましょうか?」



 舌打ちすると男は去っていった。



「そこは彼女です、でいいんじゃない?」



「友達、で十分だろ?」



「あっそう…」



 あそこで彼女、じゃなくて友達って出るくらい私のことなんとも思ってないのかな……。



「行こうぜ?」



「うん……。」





 カラオケに入って選曲をしていると悠に話しかけられる



「美玖もナンパなんてされるんだな……」



「まあね。割とされるわよ?」



 待ち合わせとかその場で止まる必要がなかったら無視して振り切れるんだけどさっきは助かった。



「好きな人とはどうなんだ?」



「なによ…気になるの?」



「まぁ……」



「ふ〜〜ん?」



 え…気になるだ……?



「なんだよ……」



 思わず顔が緩んでしまった。

 逆に悠は訝しげに顔がしかめっ面になった。



「べつにぃ? そうね、あんまり進展してないかもね」


「そうか……」



 今の関係を壊したくなかったから……。


 もし告白して断られたりしたら、もう一緒にいられなくなったらって。


 あの時に空いた距離が少し戻って、やっと普通に遊べる様になったのに、それは嫌だった。


 だけど悠に好きな人ができたんだったらそんなこと言ってられない…。

 このまま仲のいい友達で終わって、悠の隣に他の女の子が一緒に居るなんて嫌だ……。




「その人にも好きな人が居るらしいの。でも諦めたくないわ。…身体で誘惑とか……した方がいいと思う?」



 どうかなぁ?

 そういうことされたら悠はどう思うかなぁ??



「っ…!?ダメだろっ…そんなのっ……!」



 ダメなんだ……。



「そうなの?男の子ってえっちなこと好きでしょ?」



「そうかもしれないけどっ……」




「一度えっちなことさせてあげたら気持ちが揺らいだりしないかなぁ??」



 それで悠の気持ちがこっちに向いてくれたりするなら……。

 私はほんとうに……。

 思わず顔と身体が熱くなってしまう。



 だけど悠の様子がおかしかった。


「どうしたのよっ。そんな顔して……もういいわ…」

「あんたはどうなのよ? 好きな…女の子と」




「っ……そいつにも好きな奴がいてさ……もうだめかもな」



 そうなんだ…。

 それなら私にももしかしたら……。


「そっ…そう……。な、ならさ」

「あんたが振られたら私が…私……なんでもないわ」



 私……悠が振られたら、なんて……。

 そんな風に言ってしまうなんて最低じゃない……。


 思わず暗い顔をしてしまう。




「上手く行くと良いわね」


「え…?ああ……」




「はぁ、歌ったわね!」


「そうだな」



 お互い大声出して少し元気になったかも。

 気休めだろうけどね。




 外に出るともう暗くなっていて冷えた風が身体を冷ましてくる。


 悠が家まで送ってくれると言う。



「いいわよ、そんなの。彼女でもないのに」



「そんなの関係ないだろ?頼むから送らせてくれ」



「悠は相変わらず……」



 相変わらず優しいなぁ。

 なんで私もっと早くに……。



「なんだよ?」



「ううん、なんでも。じゃあ送ってもらうわ。狼にならないでね?」



「なる訳っ……!多分ならないよ」


「ふふっ…。多分ってなによ。」



 悠なら狼になってくれていいんだけどなぁ。



 2人並んで帰路に着く。



 手を繋ぎたいなぁと思いつつ悠の隣を歩いていった。





 〜〜〜〜〜

 補足として


 悠が自分のことを好きだと気づいていないので

 美玖は悠に嫉妬させる様なことをいってしまっています。

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