第3話 好きな人


 待ち合わせ場所に行くと美玖は男と一緒にいた。

 知り合いか?



「美玖?」


「悠っ…」 


 男から離れて俺の後ろに隠れる美玖


「ナンパよ。しつこいの」



「あん?誰だおまえ?邪魔すんなよ」


 いやお前が誰だよ……。



「友達です。彼女と待ち合わせしてたんで…もう良いですか……?警察呼びましょうか?」



 舌打ちすると男は去っていった。



「そこは彼女です、でいいんじゃない?」



「友達、で十分だろ?」



「あっそう…」



「行こうぜ?」



「うん……」





 カラオケに入って選曲をしている美玖に話しかける。



「美玖もナンパなんてされるんだな……」



「まあね。割とされるわよ?」



 2月に入ってもうすぐ高2、付き合っていた頃から一年ほど経った。

 残っていた幼さも薄まり美玖は確実に大人の女性に近づいてより魅力的な美少女になっている。



「好きな人とはどうなんだ?」



「なによ…気になるの?」



「まぁ……」


「ふ〜〜ん?」



 美玖はニヤニヤとこちらを見つめてくる。



「なんだよ……」



「べつにぃ? そうね、あんまり進展してないかもね」


「そうか…」


 思わずホッとしてしまう。


「その人にも好きな人が居るらしいの。でも諦めたくないわ。…身体で誘惑とか……した方がいいと思う?」



「っ……!?ダメだろっ…そんなのっ……!」



 なに言ってるんだよ…身体で誘惑なんて……。


 そんなに好きなのか? そいつのことが……。


 美玖のみたいな可愛い顔や身体で迫られたら男なんて……。



「そうなの?男の子ってえっちなこと好きでしょ?」



「そうかもしれないけどっ…」



 もう…聞きたくなんてない……胸が苦しくなる……。



「一度えっちなことさせてあげたら気持ちが揺らいだりしないかなぁ??」



 伺うように熱っぽい顔で見つめてくる。



 頼むからっ…やめてくれっ……




「どうしたのよっ、そんな顔して……。もういいわ…」

「あんたはどうなのよ? 好きな…女の子と」




「っ……そいつにも好きな奴がいてさ……もうだめかもな」



「そっ、そう…。な、ならさ」

「あんたが振られたら私が…私……なんでもないわ」



 すごい暗い顔しだしたけどどうしたんだ?


「上手く行くと良いわね」


「え?…ああ……」



 そのあとお互い元気がなかったが交代で歌い合った。




「はぁ、歌ったわね!」


「そうだな」


 メニューを頼みつつ2人で3時間歌い切った。

 大声をだしてなんだかんだと楽しんだ。




 外はすでに暗くなっているため送っていくべきだろう。



「いいわよ、そんなの。彼女でもないのに」



「そんなの関係ないだろ?頼むから送らせてくれ」



「悠は相変わらず……」


「なんだよ?」


「ううん、なんでも。じゃあ送ってもらうわ。狼にならないでね?」



「なる訳っ……!多分ならないよ」


「ふふっ…多分ってなによ。」



 2人並んで美玖の家へと進んでいく。





 送り届けた帰り道、気づけば、どうやって気持ちを伝えようかと考えてしまっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る