ふときみを思い出した医薬師のお話 3
『おい、これに何入れたんだよ……』
泣きそうに目を潤ませたあいつがそう言ったから、彼の手にある小瓶を一口舐めてみた。
『うっ……』
吐き気がするくらい、苦かった。
『ガ、ガフワンってやつ……』
涙を堪えながら俺が呟く。
『ば、ばあやが育ててるやつ……』
『バ、バカッ! ガフワンは眠気防止用の薬草だろ。しかもかなり効果の高い。疲労回復の薬草はガフワンを乾燥させたものだ』
俺、今日は夜勤じゃないのに……と、頭を抱えたあいつに、俺は飛び上がった。
ごめん……そう言いたかったけど、いつものくせでその言葉は出てこなかった。
『チビスケ……』
そう自分の愛称で呼ばれ、怒られると思って目を閉じたけど、あいつは笑っていた。
それにしても上手く調合できるようになったな、と。
そしてポンッと頭を撫でてくれた。
毎日毎日、俺が意味不明な疲労回復剤を作っていくたびに、あいつは嫌がらずに飲んで、それで苦しそうな顔をすることは何度もあったけど、何度もわかるところは教えてくれて、ありがとうと笑ってくれた。
マター草だってそうだ。
あの日、見つけられなくて落ち込んでいた俺に、あいつは優しく教えてくれた。
雨の日にしか見つからないのだと。
ここになら少しあるぞ、と、あの時の、月明かりに照らされながら水辺を見下ろしたあいつの笑顔は二度と忘れないと思う。
初めてあいつが好きだと気付いてしまった時だった。
いつもみんなの先頭に立って、みんなに慕われ、誰よりも忙しくしていたのに、生活に必要なことは何でも知っているあいつは俺の尊敬する人物であり、憧れの象徴でもあった。
なんでいつもそんなに何でも、薬草にまで詳しいのか、と聞いたら、もし自分が怪我したり、身体に異変が出た場合にいつでも対処できるように、そんな時のために備えて調べたのだとあいつは言っていた。
近衛隊の隊長なのに文官並みに賢くて、本当に変なヤツだとあの時は思った。
いつも誰よりも熱くて、誰よりも強い。
それでいて、あいつはすごくかっこよかったんだ。
⚘⚘⚘
会いたい。
すべてを口にしてしまったら、終わってしまいそうな気がした。
だけど、もう一度あの笑顔が見たかった。
「おやすみ、アル」
ゆっくりと瞳を閉じたナイーダは、ただただ願う。
明日も良い日になりますように、と。
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