第46話
質問:これから、どうすればよいですか?
アンサー:俺に聞くな。こっちが知りたい。
「で、どうされるのですか?」
「……ど、どう??」
こっちの脳内では、やっと今回の件の全貌が飲み込めたばかりだ。
しかし、グレゴリオ――原作では『裏社会の皇帝』と呼ばれるほどの巨悪が、熱い視線を向けている。
……俺の方に。
が、そのとき。
「おいおい、新入り。坊ちゃんが考えてねえわけねえだろ。あまり、ジェネシスをなめるなよ」
「は?」
あまりの混乱に、こっちが神妙な顔で黙っていると追い打ちを掛けるかのようにアホな男の声が入ってきた。
エンリケ。
なぜこいつは訳知り顔で腕を組んで、頷いているのだろうか????
そんな俺の疑問をよそに、ペラペラとエンリケが語り出す。
「だいたい、ああいう大規模な魔法ってのは下準備がいるんだよ。上位の魔法ともなれば、な。それをあえて、坊ちゃんは止めなかった。わかるか? つまり、坊ちゃん。いやジェネシスは、この状況もすべて織り込み済みだってことだ」
「ふむ、なるほどねえ……さすがは歴戦のS級冒険者、と言うことか。いやいや君も案外するどいな」
そしてなぜか、そんなエンリケに感心するグレゴリオ。
……何を言われたが知らないが騙されているぞ。そいつはFランクだ。
もう余計なことを言わないでくれと思うが、エンリケのわかっているムーブは止まらない。
「ったく。そもそもよお」
エンリケが席を立つ。
チッチッチと指を振りながら。
もうダメだ、否定の動作すら痛々しい。そのデスゲーム主催者みたいな動きをやめろ。
「ジェネシスの仲間としての疑われた時点で、坊ちゃんは王国の中央騎士団から目を付けられているんだよ。この疑惑をかけられたままだと、ランドール家の子息って地位すら危ういかもしれねえ。そんな状況で、あの坊ちゃんが何も考えてないわけねえ」
そしてムダに的確に状況を把握しているのが、これまたムカつく。
なんだこいつ。
「さあ聞かせてくれよ。坊ちゃん、アンタの策をな」
ニヤリと笑うエンリケ。
この馬鹿……!!
中二病のくせに、余計なことばかり……!!
こっちに……! 会話の……!!
ボールを急に投げるな!!
「……たしかに、エンリケの言うとおりだな」
こいつ、マジでいつ解雇しようかなと考えつつ、返事をする。
エンリケの怖いほどの冴え。
というか、こいつ今日で人生を終わらすつもりだろうか???
しかも、さらにハードルを上げてくれるというナイスアシスト付きである。
……とはいえ、実際、エンリケの言うとおりだった。
俺の抱えている問題はなんと嬉しいことに2つもある
1. 動き出してしまった帝国最強の死霊魔法使い・エルドへの対処
2. ジークくん、そして王国側にウルトスは無罪だと、ジェネシスとは無関係だと信じてもらわなければならない。
「…………」
部屋を気まずい沈黙が満たす。
……これ、控えめに言って、詰んでないか???
◆
このままだとすべてが台無しになってしまう。
ラスアカは18禁ゲー。
18禁ゲーというのは、女の子が可愛いだけではない。
場合によっては鬱ルートもグロルートもあり。
普通に原作主人公だって死ぬ可能性がある。それくらい難易度が高いという修羅の世界なのである。
そして基本的に『ラスアカ』では、魔法使いを相手にするときは魔法を発動する前に攻めまくって魔法を潰す、という動きがベストとされている。
ところが、今回は逆の逆。
敵の最強魔法がすでに発動しているのである。
そもそものエルドだって、とんでもなく強い。
帝国最強の死霊魔法使いの名は見せかけではない。
『ラスアカ』の作中では何人もの魔法使いが登場するが、その中でもエルドの出した被害はトップクラスである。
原作開始後のジーク君が信頼できる仲間たちとともに必死に倒した相手。
そんな相手の領域内に俺たちはいる。
しかし今のところ、俺の周りにいるのは面だけはいいが信用性皆無の男――グレゴリオと、自分をSランクの戦士か何かだと勘違いしている冒険者ギルド公認の変人――エンリケだ。
リエラは信頼できるが、戦いを任せるわけにも行かない。
……お、終わってる。
「どうした、坊ちゃん」
「ちょっと考え事を……」
あまりにもひどいラインナップに、呆然としながら立ち上がり、フラフラと窓の方にいく。
夜空には月。
死ぬほど美しい光景だが、その間にも、後ろから地獄のような会話が聞こえてくる。
「だいたい、そういうお前には策あるのかよ」
「もちろん、ありますとも」
聞き耳を立てる。
……いや待てよ。
グレゴリオには策があるらしい。
グレゴリオは頭脳明晰な悪役。たしかにこいつの意見が使えれば――
「そうですね。そもそも今は、城から出てきたアンデットを必死に中央騎士団やレインが押しとどめている最中です。だからこうしましょう」
パンっと楽しそうに手を叩くグレゴリオ。
「――彼ら全員には囮として頑張っていただきつつ、我々は安全に、ここを脱出しようじゃありませんか」
は???????
――――――――――――――――――――――――
毎日投稿できなくてすみません。
そしてこれは第1章のときからそうなんですが、これから作品を書こうとしている人は
マ ジ で 事 前 に プ ロ ッ ト を 書 き ま し ょ う 。
ノリと勢いで何とかなるだろうなどと甘い考えでいると自分のように毎日広げすぎた風呂敷をどう畳むかで死ぬほど苦労します。
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案外売れている(らしい)。
……大丈夫か、日本??
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