【2巻&コミカライズ】クズレス・オブリージュ~18禁ゲー世界のクズ悪役に転生してしまった俺は、原作知識の力でどうしてもモブ人生をつかみ取りたい~
第37話 知ってるか?人は殴ったら気絶するんだぜ side:マシュー
第37話 知ってるか?人は殴ったら気絶するんだぜ side:マシュー
謎の男を追う。
(本当に何なんだあの人は……!)
「ハァハァ……」
少年は、息を整えながら森を抜けた。
森を抜けると大きな道があり、そこから村へはほぼほぼ一本で行くことができる。
だが同時に、まずい、と少年は思っていた。
そもそも、少年は追手に追われていたからこそ、自分の土地勘がある裏手の森に逃げ込んで、ここまで来たのだ。
たしかに道に出た方が楽だろう。
しかし、それは敵に見つかるリスクを増やすことにつながる。
「ここは、まずいですよ。追手がいるんです! 早く森に!!」
戻りましょう、とマシューは言いかけた。
が。
そういやよ、と気楽な様子の男が言う。
「さっきから言ってる追手ってのは」
そのまま、立ち止まって地面に伏せる2人の男を指さす。
「――こういうやつのことか?」
黒づくめの男が2人、地面に横たわっていた。
闇に消えそうなほどの黒衣。
そして、傍から見ても恐ろしい切れ味であろう短刀。
間違いなく、村を襲った男たちの一員だろう。
男の指摘に、少年は必死にうなづく。
「そうです、こんな感じの人たちがもっと大勢いて!!!」
だからこの場は危険なんです、と少年は続けようとした。
が、
「……ん???」
――違和感。
少年はもう一度、目の前の光景をよく見た。
黒づくめの男2人が、倒れている。
「え、な、なんで?」
少年の口から思わず疑問が漏れた。
「倒れているん……ですか??」
正直に言って、何もかもが理解不能だった。
男たちの恐ろしさは、遠くから見ただけの素人であるマシューにもわかっていた。
恐るべき身のこなし。
無言にもかかわらず、まるで一個の群れのようにスムーズな連携。
マシューが追手から何とか逃げれていたのも、こっちに地の利があり、一番早く逃げれたからだろう。
が、その恐ろしいはずの男たちはなぜか、なすすべもなく倒れている。
「ど、どうして?」
マシューは改めて眼の前の男を見た。普通だ、というかちょっと小汚い。
騎士団のような強さを漂わせているわけでもない。
なのに、なぜ――
「ああ」と男は親指で自分を指し、自慢げな表情で言った。
「俺が殴った」
「……えぇ」
マシューは思った。
この男は格好だけではなく、頭もおかしいのではないか、と。
「おいおい、知らなかったのか? 坊主。人は殴ると気絶するんだぜ」
「え、いや、そのくらいはわかりますけど……つまり、その攻撃方法自体を聞きたいわけではなくって……そもそも、なんでこの人たちが倒れているかって話なんですけど」
外見だけでなく、返答も常軌を逸している。
この人は圧倒的な筋力はあるが、頭が弱いことで有名な魔物、【
殴ったから、気絶している。
それは当たり前だ。
原理としては当然の話である。
ただ、ここで聞きたいのは、そうではなく、なんで明らかに危なさそうな村を襲った賊が、平然と気絶させられているかが、知りたかったのだが………。
こちらの微妙な雰囲気を感じ取ったのだろうか。
男は、なるほど、と何かに納得したような様子を見せた。
「あぁ、もしかして寝かさない方が良かったか???」
「え??」
なんだよ、早く言ってくれよ。
そう言いながら、ぺしぺしと黒づくめの男の頬を叩き始める変人。
「おい、手加減して殴ったんだから、目を覚ませよ」と言いながら、である。
そのあんまりな光景に、思わずマシューも
「え、いや別に起こす必要もないんですけど……」と口にしてしまった。
「へえ、そうなのか」
じゃあいいや、と途端に2人を起こすのを止める男。
(無茶苦茶だ……、狂ってる)
だが、目の前で起きる不可解な出来事に、マシューは思い当たる節があった。
血統を重んじる貴族でも、人々の平和と安寧を希求する騎士団でも、利を求める商人でも、魔法の追求に生涯をかける魔法使いでもない。
目撃したこと自体はなかったが、マシューはその存在を聞いたことがあった。
社会の爪はじき者。
逸脱者たちの集まり。
ダンジョンの探索及び、対魔物戦闘のプロフェッショナル。
自身の存在をかけ、鎬をけずる者たち。
間違いない。
この浮きっぷり。
この男は――
「冒険者……」
「へえ、良く気づいたな小僧」
マシューの発言を聞き、男がにやりと笑った。
「――が、俺というお代は高いぜ?」
闇夜の下でもわかるほど、獰猛な笑み。
その笑みは問いかけていた。
お前には、何が差し出せるんだ、と。
―――――――――――――――――――
エンリケ
→脳筋。強者ムーブをしすぎて、村の少年をビビらせてしまう。
マシュー(村の少年)
→貴重な現地一般人枠の少年。「こいつらは、俺が殴ったから気絶してるんだぞ」という元Sランクのあまりに身も蓋もない説明にドン引き中。
※文字数、どのくらいが読みやすいですかね??
最近は大体、2000語前後になるようにしているのですが、このくらいがいい!とかありましたら是非是非コメントで教えてください。
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