第⑧話
♭
月、本当にありがとう。
君が居なかったら僕はこんなにも色んな経験が出来なかったと思う。
もしかしたら、初めて君を見つけたあの日からこうなるって決まってたのかなって。
そう思えてしまうほど、この不思議な巡りあわせに心を震わされて、今日もまだ眠れない。
記憶は失くしてしまうけど、その事実までもは消えやしない。
服を買って、ライブに行って、映画を見て、勉強して、弾いて、泣いて笑って、また笑う。
晴れの日は二人乗りで学校に通った。
揚揚とした気持ちが空に伝わり、元気いっぱいの日差しが僕たちの行く先を照りつけていた。
それに油断して猫に尿をかけられたりもしたね。
雨の日は二人で傘を差した。
車が水たまりの横を通って、跳ねた泥水にかかった君を見て笑った。
雨粒に覆われた傘越しに見る君の頬は春を思わせるかのように淡く染まっていた。
夜を共にした。
永久の幸せがあの部屋に広がっていた。
必死に顔を隠す君が可愛くて仕方が無かった。
そういう僕も月以上に恥ずかしくて。
人の温もりのすごさを知った。
朝、昼、夜。晴れ、曇り、雨。
登下校、授業中、放課後。
色んな時間を君と過ごせた。
ねえ、月?
――次はどんな時を一緒に過ごせるかな?
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