第71話
「先生連れてきましたっ!」
「良くやった青柳」
言われるがまま青柳に付いていった私たちは職員室に入ると、険しそうに席に座る高野先生が目に入った。
どうやらこのからくりは先生が仕掛けたらしい。
「ど、どうしたんですか、先生……?」
「まあな……お前らが困ってるってこいつに聞いてな。体育祭のハチマキの時みたく、な」
「ハチマキ……ってあれも青柳が場所を……? そ、そんな……っ」
だって彼は……二人して驚く私たちを尻目に先生は背後でガサガサと物音を立てている。
「大体のことは把握した。このままじゃ後夜祭も危ういだろう。だから……これをやろうと思ってな。俺に出来ることは……これくらいしかないから、な」
そう言って手渡されたのは……ギターだった。しかもかなりの年代物。
こんなもの……
「これは……」
「まあなんだ。俺も昔はそういう夢を見てた時期もあってな。意外だろ? でもなんか名残惜しくて一生手放せなくてよ。思い出……だからな。これで良いならぜひ使ってくれ」
「そ、それは申し訳ないですよ!」
「いいんだ。お前が弾いてくれた方がこいつも本望だ。かなり古いけどそれなりに良い値段だから逆に味のある音になってるはずだ。お前が弾けば尚更だ……ほらっ、試しに弾いてみろ」
先生から茶色のピックを渡された私は丁重に扱いながらそっと腕を振って――♪
「……良い音……!」
「だろ? これなら弾けるか?」
「……はい、十分すぎます」
「良かった。これで少しは貢献できたかな……?」
「でもほんとに……」
「男に二言は無い。お前にしか弾けない曲があるんだろ? 最近のお前はこれで自分を変えようとしてる。生徒の成長を見守るのが先生ってもんさ。それが俺の天命なんだよ」
「……本当にありがとう、ございます。先生」
「ほらっ、さっさと行ってこい」
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