第64話

「ただいま」


 帰宅した私は仕事から帰っていたお母さんがリビングでテレビを見ているのを見つけた。


「今週末、文化祭だから。しばらく忙しくなる。気にしないで」


 一応言っておかないと後から変ないちゃもんを付けられそうだ。


「星宮さんとは仲良くしてるのかしら?」


「うん。してるよ」


「風のうわさで聞いたのだけれど……吉原さんの家の息子さんとも仲が良いらしいじゃない」


 そんな噂、何処からどうすればそんなものが……やはり保護者のコミュニティは怖い。


「まあ、それなりに」


「吉原さん家、シングルマザーなのよ。それなのにあんな良い子を育てて……」


「え、そうなの⁉」


 あの吉原君が……? 

 余計、私の中で彼の評価が上がった気がする。

 彼は限られた環境の中でしっかり勉強してスポーツして楽しんで……ものすごい努力家だ。


「はぁー……あなたもそうだったら良かったのに。良い? 私も今はシングルマザー。そこら辺のこと、ちゃんと考えて行動しなさいよ」


 離婚したのはお母さんたちの結果なのになんでその責任が子供に圧し掛かるんだろうか? 

 訳が分からないがここで反論しても面倒なだけ。

 私は無視して自室へと向かい、数時間勉強してギターを一時間弱弾き、眠りについた。

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