とある少女の場合④

─更に二日後


「先輩! 一緒に帰りましょう?」


 瑠美が榊原に向かって声をかけるが、榊原の様子がおかしい。


「ごめん。知ってると思うけど、俺彼女いるからさ」


 まだ三日ではあるが、付き合っている相手に対する反応ではなかった。


「えっ? 何言ってるんですか? 先輩の彼女は私のはずじゃ…」


 そして、そこにとある少女が近付いてきて、榊原に抱きついた。


「せーんぱい。早く帰りましょう?」


「ああ」


「春菜! な、なんで…」


 それはなんと、春菜だった。


「ごめんねー、瑠美。今は私が先輩の彼女だから」


「はっ?! なんで…」


 瑠美はただ困惑することしか出来なかった。


「飴」


「え?」


 春菜の口から信じられない言葉が出て来て、瑠美は驚いた。


「知ってたんでしょ? どうして教えてくれなかったの? 私達、友達じゃなかったの?」


 春菜は冷たくそう言い放った。


「そ、それは…」


 瑠美は何も言い返せなかった。


「まあ、教えたくなんてないよね。先輩を取られちゃうもんね。…まあ、こうして私に取られちゃったんだけど、ね。それじゃあ、バイバイ」


 春菜と榊原は腕を組んで帰っていった。


 瑠美はまたあの男を探した。そして、何故かすぐに見つかった。


「どうなってるんですか? 私が先輩と付き合ってたはずなのに!」


 瑠美は苛立ちが抑えきれなかった。


「あなたがやったことと同じですよ。彼女も飴を使った。それだけのことです」


 男は極めて冷静に返す。


「そんな…。私の願いはどうなるんですか!」


「そうですね。それでは、さらに願い《舐め》ますか?」


 男がそう言いながら飴を取り出した。

 瑠美は躊躇いなく飴を受け取り、また願った。


 その後の瑠美は他の人も飴を使うという可能性を考えられていなかった。榊原と付き合っていた少女や春菜という前例があるというのに。


 何度も何度も飴を舐め、そして瑠美は、彼女達は─

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