第10話

 伊400と護衛艦“さがみ”は無事に過去の世界にジャンプ出来たが現在地点が分からず至急に調査する。

 現在地点は直ぐに分かったが伊400と“さがみ”の各艦橋では戸惑いがあった。

「ここは……サンディエゴ西方百キロ海上だな、そして現時刻は……十月二十九日か。本土決戦三日前だな」

 現在、護衛艦“さがみ”と伊400は海面にて停止状態であった。

 日下艦長と有泉艦長は、TVモニターにて簡単な打ち合わせをする。

「お互い、全速力で行けば到着予定は十一月二日ですが既に上陸が開始されているでしょう。そこでこのままパナマ運河を破壊してみてはどうですか? ついでに“晴嵐”の無線飛行の実戦を兼ねてみて」

 有泉の言葉に日下は考えるがその破壊した結果の絶大な効果を押し測る。

「……いいですね、パナマ運河を破壊すれば本土攻撃に集中出来なくなり部隊の一部をパナマ方面に回す筈! そこを各個撃破で撃沈していく」

 日下と有泉はそれで決定すると航路の計算をして弾き出された結果、今この時点で人工衛星“おおわし五号”を打ち上げてそのまま“晴嵐”を無人飛行させてパナマ運河を破壊する事を決定する。

 有泉の指示で、いつでも直ぐにでも人工衛星を打ち上げることが出来るように準備が出来ていた。

 前部格納庫EVが観音開きで開放されると人工衛星を搭載したロケットが垂直に立てられる。

「発射五分前、ロケットエンジンに燃料注入開始!」

 その時、“さがみ”と伊400の対空レーダーが敵機をキャッチする。

「日下艦長、光学迷彩シールドを展開しましょう!」

 有泉の言葉で“さがみ”と伊400は光学迷彩シールドを展開すると見事、周囲の風景に溶け込んでいく。

 それから二分後、アメリカ沿岸偵察機“カタリナ”が伊400と“さがみ”の上空を通過したが一切、何も探知しなくそのまま通り過ぎて行き充分な距離が離れたことが分かるとシールドを停止する。

 再び海上に大型護衛艦と大型潜水空母が出現する。

「有泉艦長、発射準備OKです!」

 柳本がモニターを見ながら言うと有泉は肯くと発射命令を出す。

 “さがみ”CICルームでロケット発射ボタンに手を掛けていた乗員がボタンを押すと轟音と共にロケットが打ち出されて一瞬でキラリと光って視界から消える。

 ロケットは成層圏を抜けて宇宙空間に出ると人工衛星“おおわし五号”が起動されると共にロケットから切り離されて独自の慣性航行で軌道上に乗る。

 連続で打ち出した媒体は何の異常もなくスムーズに連結して展開する。

「大成功です! 衛星との同期リンク開始されますが伊400も異常なく同期リンクされていますか?」

 柳本の質問に日下は現在、順調に同期リンク実施中と答えると了解致しましたと返事が来る。

 三十分間経つとリンク完了との表示が出て来ると伊400の発令所内に設置されている大型モニターに現在の衛星から捉えている映像を映す。

 艦長席に座っている日下が感嘆の声を出すと他の乗員達も唸る。

 大型スクリーンには真上から見下ろされる感じで“さがみ”と伊400が鮮明に映っていてスティックを動かしながら拡大や反対に最小にすれば地球が映っている。

「Google Earthみたいに3Dで表示されないのか?」

 日下が色々と操作しながら吉田技術長に質問すると吉田は笑みを浮かべながら明日には可能になりますと答える。

「バージョンアップを重ねて行きますので時間がかかります。全ての機能が使用できるまで二十四時間後です。現在は、基本的な映像を映し出す事が出来ますよ」

 吉田の言葉に日下は肯くとパナマ運河を見てみようかと言うと吉田も頷いて操作方法を日下に教えると日下は手慣れた操作でパナマ運河に視点を合わせる。

「本当にGoogle Earthみたいだな、しかもリアルタイムだ」

 現在のパナマ運河の様子が映し出されると見たこともない多数の船が映し出されていて中には巡洋艦や駆逐艦も関門に入る為に縦列で並んでいた。

「ちなみに日本はいけるのでしょうか?」

 日下の問いに吉田は勿論ですと言うが機能を完全に起動させてからですと。

「まあ、二時間もあればいけますが今はバージョンアップをも兼ねていますので明日以降までお待ち下さい」

 吉田の言葉に頷くと日下は早速、晴嵐の射出命令を出すと格納庫入口扉がゆっくりと開いて全開になる。

 晴嵐が自動的に格納庫から引き出されて発射台に固定されると畳んでいた主翼が開いてセットOKのランプが“晴嵐”管制室内に点灯する。

 胴下に八百キロ貫通爆弾が搭載されている。

 『矢吹一郎』少尉がボタンを押すと轟音を上げて“晴嵐”が射出される。

 引き続いて順番に二機の“晴嵐”も無事に射出される。

 燃料が超小型核融合炉なので永遠に飛行させる事も可能でありこれからの伊400の戦法に寄与出来るであろうと日下は思う。

「晴嵐がパナマ運河に到達するまで約三時間か、それまで艦内を回るとするかな? 高倉先任将校、同行を頼みます」

 日下の言葉に高倉は敬礼すると日下の後を追って発令所を出る。

「先ずは……機関室だな。在塚機関長、大いに張り切っていたが」


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