第7話

 スーパーパワーアップした伊400を見た乗員達は今以上、訓練に励んでいる過程である日の事、朝霧翁の臨時招集がかかり七十五名の乗員が地下ドックに集合する。

 そこに柳所長が現れて明瞭完結に集合して頂いた訳を言う。

「前にも言いましたが伊400をサポートする為に護衛艦を派遣すると言いましたがその護衛艦をお披露目します」

 伊400を改造していた中型ドックの横にある大型ドックに皆を中に入れると柳はドック全体の照明を入れる。

「こ、これは……空母か? いや、輸送艦“おおすみ”型?」

 すっかり自衛隊ばかりか世界中の艦船を覚えた『澄田卓』中尉が唸る。

 彼の説明では形は同じだが規模が違うと言うと柳は頷くと性能を公表する。


艦名“さがみ”

基準排水量 三万四千トン

全長    二百二十五メートル

最大幅   三十五メートル

吃水    七メートル

主機    朝霧十六V四十二M-A小型熱核融合炉×四基

推進器   可変ピッチ・プロペラ×四軸

最大速力  三十五ノット

乗員   百七十名(運営全般) 二百十五名(技術者等) 五十五名(各学者等)

兵装   自動三十ミリレーザービームバルカン砲(CIWS)×四基

     朝霧七式アスロック二連装発射機×二基

     極超音速誘導弾発射機×三基

     小型ドローン無人自爆兵器発射塔×十基

防御   光学迷彩シールド、ステルス機能


「これで甲板を改造したら完全に空母になりますね? 艦載機と言うか搭載機はないのでしょうか?」

 日下の質問に柳は頷くとこの輸送艦はあくまでも伊400をサポートする役目ですと言い次の語句に日下達は息を呑む。

「輸送艦の格納庫の大部分が工場……!? 伊400に補充させる多々の砲弾や魚雷を一日で十本ですか! 凄い。ちなみにMOAB対空弾や対地MOAB弾とかも?」

「ええ、その通りです! 補給も整備もバッチリですよ、前にも言いましたが片道切符を了承して一緒に行く人達が乗っています」

 柳は自分の後ろに控えている中年の技術者らしい人物を紹介する。

「彼は朝霧エレクトロニクス株式会社の広島支店の技術長『吉田重蔵』でエレクトロニクス界において世界三指に入る人物だ。きっと貴方達の任務に必要になります」

 吉田と紹介された男性が前に出て日下に挨拶すると手を差し出して来たので日下は固く握り返す。

「吉田さんと言いましたか、あの……よろしいのでしょうか? 二度とこの世界に戻ることはないのですよ? 御家族とかは大丈夫なのでしょうか?」

 日下の心底から心配している表情を見ると吉田は頷く。

「ははは、御心配なく! もう妻とは別れて二十年で息子と娘も成人して家庭を持っています。技術畑三十五年一筋で生きてきました、犠牲にしたものは沢山、ありますが第二の人生として新たな事をやりたい」

 吉田の言葉に日下は礼を言うとお辞儀をする。

「この吉田君は伊400に乗船する事になる。勿論、この一年間は潜水艦訓練に参加して合格したから安心してくれたまえ」

 日下と吉田がお互いに固い握手をして自己紹介している時に背後の自動ドアが開いて二人の自衛隊員が入ってくる。

 彼ら二人を見た朝霧翁は二人を呼び寄せて日下に紹介する。

「“さがみ”艦長になる『有泉龍之介』一等海佐、こちらは副長の『柳本浩二』三等海佐だがこの有泉一等海佐のご先祖様が『有泉龍之介』大佐だ」

 日下は吃驚してまじまじと見つめると確かに有泉大佐の面影がある。

 有泉は恐縮してどのような反応を取ればいいか迷っていると日下がはっと気づいて謝る。

「申し訳ありません、確かに似ていたもので……」

「いえ、全然構いません! これからよろしくお願いします」

 日下は有泉と柳本の二人と握手をすると有泉がまだまだ準備があるのでこれで失礼しますといい朝霧翁に敬礼すると出て行った。

 その後姿を見送りながら日下は、朝霧翁に気持ちいい青年ですねと言ったら彼もまた頷いて彼らを宜しくお願いしますと。

 一通りの説明が終わると解散号令が掛かり伊400の乗員達が分散して日下も行こうかと言う時に朝霧翁から呼び止められて二人で話をしたいと言ってくる。

 三十分後、二人は呉市の中でも一番高い丘の上にいた。

 展望台があり望遠鏡が設置されていて軍港内が良く見渡すことが出来る素晴らしい眺めの場所であった。

「日下艦長に言っておくことがある。この件は有泉君と吉田君しか知らない事だ」

 朝霧翁の真剣な表情に日下は力強く頷いて他の者には口外しませんというと朝霧翁は笑みを浮かべて話す。

「昭和二十年の世界に戻った時に人工衛星“おおわし五号”を打ち上げる手筈になっていて遠隔操作で地球の何処でも見れる人口衛星で範囲内の地上におけるありとあらゆる物を鮮明に写し出すと共に、建物内にいる人物の会話をノイズなしで拾えることが出来るいわゆるスパイ衛星だ。それを打ち上げるのだがこの衛星にはもう一つの機能が備えられている。貴官もこの世界に来て知ったと思うが“天之加久矢あめのかくや”と言われる衛星から撃ちだされるマッハ二十の水爆ミサイル二発が装填されているのだ」

 ここまで朝霧翁が言うと日下は絶句すると同時に冷汗が流れ出るのを確認するがあまりにもの言葉に暫く何も出来なかったが数分後、絞り出すような声で答える。

「……威力はどれぐらいですか? 衛星から放たれるのですから威力はそこまでないと思いますが?」

 日下の言葉に首を横に振った朝霧翁が喋る。

「百メガトンだ、西暦二一〇〇年の技術なら百メガトン級なら小型化は当たり前のように出来る」

「……大都市でも一発で消滅しますね? しかし何故、そんな破壊兵器を昔に?」

 日下の言葉に朝霧翁はじっと軍港内を見つめながら答えるがその時の表情は鬼のようであった。

「……この水爆ミサイルを使用する時には日下さん、有泉二等海佐、吉田技術長の三人同時の指紋・網膜・解除キーで実施しなければならない。使うことが無ければいいのだが……」

 日下の質問に朝霧翁はあえて問わなかったが目線が広島市の方に向いている事に気づいた日下は成程と思った。

「……大事なお方が亡くなられたのですか?」

 日下の質問に朝霧翁は静かに頷くがこれ以上言いたくない事が分かったので日下は別の話に切り替える事にする。

「所で私達はどのような方法で戻るのですか?」

「四日後の十一月一日0600時に時空の扉が開く故、それで戻れる」


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