第6話

『日下敏夫』中佐率いる伊400が未来の世界にジャンプして残り一月で一年の月日が過ぎて遂に魔改造された伊400が朝霧造船所の地下秘密ドックに鎮座している。

 日下中佐は毎日毎日、ドックを訪れて改造される伊400の傍にいて作業員たちと一緒に改装を手伝っていたのである。

 自分達の命を預かる船なのだから。

 高倉少佐は日下中佐がまるで恋人に逢いに行くように生き生きとしていたと言う。

 生まれ変わった潜水空母:伊400を見る為に乗員がゾロゾロと地下秘密ドックへ降りてきて思い思いのまま陣取る。

 勿論、その中には朝霧翁もいる。

 この一年間で乗員一五七名の内、約半数の七十名がこの時代で生きていきたいという意見が出て朝霧翁や日下を交えて対話した結果、彼らの意見を取り入れることを決定してそのまま朝霧コーポレーションに就職することになったのである。

 日下は彼らの意見を聞いたときに笑みを浮かべながら新たな旅立ちを歓迎する。

 朝霧翁によると運用や戦闘等半数の乗員で十分、やっていけるとの事で人数が減ったお陰で居住に関してはかなり改善されるとの事。

 引き続き、日本滅亡が決定されている世界に戻り戦場へと行く乗員達は一年間、みっちりと最新鋭兵器の取り扱いや熱核融合機関について勉強して今やベテランの域に達していた。

「では、日下艦長以下の皆様! お待たせいたしました。生まれ変わった伊400の御披露目致します」

 朝霧造船所所長『柳 隆二』がドックの電気照明のスイッチを押すとLEDがドック内を照らす。

 ガントリーロックに固定されていた伊400が彼たちの目に映る。

 凄い大歓声がドック内に響き渡る。

 外見上は殆ど変わらないが所々、違う個所があるが重厚な雰囲気が船体から発せられている。

「むう……外見は変わらないが分かるぞ! この艦の凄まじさが」

 日下の言葉に乗員達が頷く。

 朝霧翁も満足そうな表情をしていて柳に目配せすると彼は頷いて引き続き船体の改造面を説明する。

「排水量を始めとする重量も従来と比べて重くなりましたが戦闘や航行に関しては殆ど問題ありませんが大幅に変更している箇所がありますのでスクリーンに展開します」

 柳の操作でスクリーンに基本性能が映し出される。


基準排水量:四五三〇トン

全長:一二五メートル

全幅:十三メートル

吃水:七メートル

機関:朝霧式小型熱核融合炉×二基 

推進機:電磁推進装置


「伊400の船体全てに特殊金属のコーティングを施しています。この特殊金属は後に説明いたしますがこの世界では通常兵器の一つであるレールガンの直撃を受けても跳ね返す代物です。ですので昭和時代の兵器では一切、破壊されません! 例え四十六センチ砲の直撃を受けても破壊されることはありません」

 この説明の中で、日下以下の乗員は誰も言葉を発せないでまじまじと柳の顔を眺めていた。

「凄まじい耐久力だな……信じられないが……本当なのだな」

 日下の言葉に高倉も頷く。

 その表情を見た柳は引き続き説明を再び始めていく。


「推進力ですが、一切の回転系推力発生器を使用せず、かわりに、超伝導電磁石を利用し強力な磁場を作り出し、磁場中の海水に電流を流してローレンツ力により海水を噴射するウォータージェット推進方式を採用しています。これによりスクリューや内燃機などが不要になりほぼ無音航行が可能であり、また不快な振動が無く環境性能も高くなります。構造特性からプロペラ部分のスペースが不要になる事により自由度が高い船尾設計が可能になり、船殻を貫通する構造物が無い為に海水が船体内部に侵入しない、スクリューを高速回転させる事で発生するキャビテーションが発生しないなどの利点があります。速力ですが海中で五十ノット・水上で六十ノットのスピードで航行出来て最大潜水深度八千メートルまで可能です。勿論、スピードは潜航深度に一切、関係ありません。さて、ここから艦内の説明に入りたいので皆さま、私に着いてきてくださいますか?」


 柳の言葉に日下達は頷くが全身が武者震いしたかのように冒険心が駆け巡る。

 艦内に入った日下達は改めて感動する。

「潜水艦独特のあの匂いは一切、ないが……?」

 西島航海長が感嘆している。

「ええ、艦内は常に換気されていますので快適ですよ! さて、これから機器の説明をしていきます」

 柳は伊400の全ての機能に関わるCICルームを説明する。

「まとめると以下の通りですね」

 柳所長が手持ちのノートパソコンで武装システムの項目を出す。


(1)四十口径十四センチ自動レールガン単装砲一門

(2)二五ミリ三連装自動レーザー砲三基

(3)二十センチ拡散荷電粒子砲発射管 一基

(4)五三センチ多目的魚雷発射管  艦首八門

(5)六四式誘導魚雷 四十本

(6)MOAB対空対地ミサイル 五十本

(7)自動無線航行戦闘機“晴嵐”三機


「先ず(1)についてですが、このレールガンの用途は多々あります。後で説明しますが多種の砲弾を装填できます。(2)は文字通りのレーザー兵器でエネルギーは核融合で賄っていますので無限大に撃ち続けます。勿論、コンピューターと連動していますので。(3)ですがこの伊400最大の武器で必殺兵器です、発射した後に扇状に拡散しますので密集している敵に有効ですね。命中すれば一瞬で蒸発します。(5)(6)についてですがこの世界では先進国なら何処の国でも持っている魚雷ですが昭和二十年なら未知の兵器でしょう! たった一本でエセックス級空母を真二つにして撃沈出来ますよ? (7)についてですが遠隔装置にて飛行する戦闘機で人がいない分、色々な機械を搭載出来ます。この世界に来たパイロットを含む全員がこの世界に残ることを選択しましたのでこういう風に改造しました。以上です」

 一時間に及ぶ説明に日下達は言葉を発する事が出来ない程、衝撃を受けたが直ぐに現実を受け入れる。

「それでは残りの一月でこの伊400の操縦や戦闘システムを会得するのですね?」

 朝霧と柳が頷くと日下以下の乗員が力強く頷く。

「それと防衛機能として光学迷彩シールド発生装置がありますので目視なら絶対に見つかる事もないですしレーダー波も吸収しますのでステルス機能もバッチリです。


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