第16話 婚活法
「へ?花嫁候補ぉ?」
ほらほら、素が出ちゃってるよん!イリスちゃん!
気を抜いちゃダメよ!
でも、いきなりそんな事言われたら、へ?ってなるよねぇ~
サーバンク公爵家公女レイチェル
クレイトン侯爵家令嬢イザベル
アシュレイ辺境伯家令嬢クラリス
エリントン侯爵家令嬢ミシェリー
家格の順番で席が決まるんだよ。
当然、イリスとオリビエは王女の両隣に座る。
顔ぶれの紹介はホストのマレーナがするんだ。
名を呼ばれたら軽く会釈をすれば良いの。
イザベルとは
あれからも何度か顔を合わせているよ。
お互いの屋敷に招待して、すっかりお友達~
他のお嬢さんは初めましてだね。
そう!このメンバーが例の婚約者候補。
あぁ、オリビエにはもう婚約者が居るよん。
余裕のよっちゃんだね。
じゃぁなんでここにいるの?って事なんだけどさぁ。
社交界の情報でね、イリスだけを呼んでも断られるけど、
オリビエと一緒に招待したら来るって話が廻ってるのよ。
凄いよねぇ~
「今日は皆さまに大切なお話がありますのよ」
オバルト式お茶会の初めはテイスティングから。
上座から順番に口を付けるの。
一巡したら「いかがかしら?」とホストが
すると「とても美味しゅう御座いますわ」と最上位の客が返答するの。
後は順不同で感想を述べて行くのよ。
そして銘柄の当てっこをするのね。
その次はお茶菓子の褒め合い。
ここまではお約束だからどこも同じ。
その後が本番なのよ。
それぞれが持ち寄った噂話を披露するんだけどね。
皆を制してマレーナが口を開いて言ったのが、さっきのやつ。
そして聞かされたのが例の集団お見合い合戦の話し。
みんなポカァ~ンって感じ~
だよねぇ~
「何のお話しで御座いましょうか?」
「ですから、あなたも候補の一人として参加するのです」
「私が!・・・で御座いますか?」
「何も聞いてませんの?」
「何を?で御座いますか?」
「まぁ・・・呆れたこと・・・」
そう!カーライルにはイリスを口説けなんて言っときながら、
イリスには何ぁ~んにも伝えてないのよ、サイモン。
実は王子か公子かのどちらかと結婚させるつもりだと聞かされて
もぉ~びっくり!
「は、初めて聞きました・・・」
「雑ですわねぇ~これだから殿方は」
とにかく!候補者の名誉と王政の公正さを護るために、
5対5の集団縁組大会を開催する!
マレーナは、そう宣言したの。
「相手の候補も厳選するようにと、私からも釘を刺しておきますわ。
ですから心置きなく勝負なさいましね」
例え王子と結ばれなくても、充分な保険が用意されているわけね。
最初は不安そうだったお嬢様方も内容が理解できると笑顔が戻った。
つまり、どう転んでも損はしないって事だ!
悪い話しでは無い。
それどころか、儲け話じゃないか!
<婚約者選定に落ちた令嬢>
そんなレッテルを貼られるリスクが無くなったもんね!
なんじゃそりゃ!なんじゃそりゃ!なんじゃそりゃぁ~!
いやまぁ、貴族の娘の結婚なんてどうせ親が決めるもんだから?
誰が相手でも、はいそうですかで終わりだけどさぁ。
そうだ!何もしないで置こう!
他の御令嬢が決まった後に最後に残ったお方と結婚すれば良い!
それでも高位貴族の御子息なんでしょう?
子爵家出身の私には勿体ないくらいだよぉ~
ってこの時はそー思ってたのよ。
***
必死のパッチのフリーデル!
貴族院長官を呼び出して、10歳から14歳までの
高位貴族の子弟で婚約者の決まって無い者を洗い出し、
その中から家格の順に3名を選び出した。
勿論、世間の評判の悪い
その辺は王妃アライラに手伝って貰ったんだ。
「集団お見合いですって!?」
地獄耳~
お昼前には、ちゃっかり選定委員に入ってたよ。
こいつは乱暴者だ、これは頭が悪い、本人は良いけど親が駄目等々。
男連中では分からない内部事情に精通してる。
さすがだねぇ~
ギルダー大公家モリソン 13歳
ウインダム侯爵家ヘルター 11歳
ミクラス侯爵家レイオット 12歳
いずれも名門の誉れ高い家柄だ。
これなら文句はあるまいね。
マレーナからもOKを貰ったよ!
緊急招集が掛けられた!
何事か!と血相を変えて飛んで来た候補者とその親たち。
話を聞いて更にビックリ!
「息子を晒しものにするおつもりか!」
と憤慨する親もいたね。
そりゃぁそーだよぉ~
こんなの前例が無いもの、ふざけてるのか?
「この度、新しく導入した制度です」
王妃アライラの言葉によると、将来的に王子の側近として
重責を担う者達を選定し、広く知らしめる為の行事であると言う。
このイベントを通じて互いに信頼関係を築くのが目的であると。
物は言いようだねぇ。
「では!我が息子が選ばれたと?」
「いかにも」
「なんともそれは光栄の至り!」
「異存はありませぬ!」
満足げに退出して行ったよ。
「良いのか?あんな事を言って」
「何がで御座いましょう?」
「いや、側近を決める行事だと・・・」
本来、側近の選定は功績によってなされる。
こんな段階で決められる事じゃ無いよね。
「良くはありませんわ、嘘ですもの」
「なっ!いかが致すのじゃ!」
「ですからすぐに閣議決定なさって下さいまし」
「か!閣議決定とな!」
「えぇ、王が嘘をつくわけには参りませんもの」
「そ!そなたが申したのではないか!」
「御否定なされなかったでしょう?」
「そ、それはぁ~・・・」
必死のパッチのパッチパチのフリーデル!
各大臣に至急集まるようにと命じた!
「陛下、式典のお時間で御座います」
「分かっておる!白蓮の間に閣僚たちを待機させておけ!」
「御意のままに」
晩餐会までには法案を成立させねば!
幸い、この程度の人事なら元老院を通さずとも、
閣議決定で事足りる。
式典の合間に抜け出して・・・
精霊歴2013年 春季第一節。
第三王子限定の特例法案
「王位継承権有資格者近衛従事選定、及び、
婚姻活動に関する特別法」が成立した。
いわゆる婚活法である。
なぁ~んちゃって!
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