第19話 お忍びの代償
まったく酷い目に遭った。ほんのすこ~し羽目を外したかも知れないけど、あんなに怒らなくてもいいのに・・・。
城下町から強制帰城させられる途中でブラオから散々小言を言われ、城に着いてからは報告を受けたお父様とお母様から別々に説教のフルコースだったよ。
その時に勉強の強化を言いわたされ、さらにその日から数日間はマナーレッスンという名の監視が付いたのもツラかった。
最近はそんなツライ日々から多少は解放されてるんだけど、
「ふぃーちかれたぁー」
今日の課題を全て終わらせて自室に入ると、自然と身体がベッドに吸い込まれるように倒れ込んだ。
「王女殿下。そのようなことをしていると、また王妃様に叱られますよ」
「っ!な、なんだ、アリアか。脅かさないでよ」
不意に聞こえた声に反応して飛び起きると、ティーセットを持ったアリアが呆れ顔で立っていた。
あのお忍びの日以降、アリアはわたしの専属(仮)としてお世話をしてもらってる。ちなみにブラオはわたしに対して良い感情を持ってないようで、辞退寄りの保留という事になっている。
「申し訳ございません。ノックはしたのですが、お返事が無く何かあるといけないと思い入らせていただきました」
うん。その理由はどうかと思うよ。ま、いつものことだから良いけど。
「まあ、いいわ。それよりもお茶にしましょう」
「畏まりました。ただいまご用意いたします」
お茶の支度をするアリアを観察しながら、ふと気になったことを聞いてみた。
「ところでその服の着心地はどうかしら?動きづらいとかは無い?」
「はい。とても動きやすくて、助かってます。この服を王女殿下が街で注文されたときは何に使うのか分からなかったのですが、実際に着て仕事をしていると良さが実感できます」
お忍びの時に注文したメイド服なんだけど、ちょうど良いのでアリアに着てもらって問題点を洗い出し中なのだ。
この感じだと平気そうね。残る問題は耐久性かしらね?あとは、周囲の反応も気になるわね。
「それは良かったわ。何か問題が発生したら、遠慮無く言ってきてね。そういえば周囲の反応はどうかしら?何か聞かれた?」
「そうですね・・・この服はどうしたのかとか、どこで買ったのかはよく聞かれます。話を聞く感じですと、他のメイド達もこの服を着たいみたいですよ。特に、母からの圧力が日に日に強まってる気がします」
このアリアが言う”母”というのは、
「あーそろそろ限界かなあ・・・。それじゃあ、その服のことをアンナに話してみてもらえるかしら」
「よろしいのですか?」
「ええ。アンナの意見も聞いてみたいし、良いわよ」
こういうものの意見は多い方がいいって言うし、ちょうど良かったかも知れないわね。
後にわたしは、この時の判断に酷く後悔することになるのだが、まだその事に気づけていなかった・・・。
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