第17話 市場の見学と・・・

 次にやって来たのは、食料品を多く取り扱ってるエリアだ。


 もちろんここにも徒歩で来たんだけど、ブラオとアリアが驚きとも不安とも取れない表情をしていたんだよね。まあ、気持ちは分からなくもないけどね。普通は王宮育ちの王女こんなこむすめが、これほど歩けるなんて想定外な事だろう。


 ここは市場らしいけど、前世のイメージだとフリーマーケットが近いかなあと思う。それぞれが店舗という形ではなく、屋台や地面にゴザをひいて商品を並べていた。ただ通路は広くとられているようで、人が多すぎて動けなくなるということは無さそうだ。


  興味があったから来てみたけど、特に目的があるわけじゃないんだよね。そんなわけで、気になったところに突撃していたんだけど、気が付いたらブラオとアリアが満身創痍な感じになってしまった。わたしが急に動いて売ってる人のところに行くから、その後をついてくるのが大変だったみたいね。


  もう一度今度はゆっくりと見て回ろうとしたところ、どこからかいい匂いが漂ってきた。


 足を止めて匂いの元をたどると、少し離れたところに屋台のエリアがあった。


 「そういえば少しお腹がすいたわね。あそこに行ってみましょう」


 「いけません。お嬢様」


 屋台へ向かおうとしたら、ブラオに制止された。


 「なぜ止めるの?」


 「あちらは屋台です。テーブルや椅子が在るかどうかも分かりませんし、それに屋外です。それよりも市場ここから少し離れますが、そう遠くない場所にレストランがあったと思います。そちらへ参りましょう」


 お忍びとはいえ令嬢、まして王女が外で立ったまま食事をするなどというのはあり得ないことなのかも知れない。この世界の常識的にはブラオの意見が一般的で、わたしの考えが異常なのだろう。


 「ブラオ。あなたの意見はもっともだと思うわ」

 

 「では・・・」


 「今日の目的的にはレストランよりも、屋台こっちの方が合ってるから見逃してちょうだい。それに何かあってもあなた達が不利益を被らないようにするから安心してね」


 「いや、しかし・・・」


 「お・ね・が・い」


 「・・・分かりました」


 なかなか納得しないブラオに上目づかいでお願いひっさつわざを使ったら落ちた。やはりどの世界でも少女の上目づかいは最強のようだ。


 どこからか『あざとい』とか聞こえてくる気がするけど気にしなーい。


 「ありがとう」


 「ただし、自分が買ってきますので、お嬢様はアリアさんと一緒に居てくださいね」


 「わかったわ。それじゃあ・・・えっと、あそこの串焼きかしらね?あれを三本買ってきてくださいな」


 「三本・・・ですか?」


 「?そうよ。あなた達の分も含めて三本よ」


 「ありがとうございます。ですが我々は職務しごと中です。お嬢様と一緒に頂くわけにはまいりません」


 「王国騎士あなたのしごととしてはダメなのは分かるけど、この場合はわたしだけ食べてたら不自然だし、逆に目立つと思うのよね。そうね・・・今回は毒味ということで納得してちょうだい。アリアもそれでいいわね」


 「「かしこまりました」」


 二人とも納得してくれて、やっと話がまとまったわ。


 だけどこの一連のやりとりだけでも、かなり目立っちゃったと思うけど大丈夫かなあ?うーん・・・周囲に敵意は感じないから、まあいいかなあ・・・。

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