第15話 次の行き先は?

 「やはり先程の商人は許せません。お嬢様に対して無礼すぎます」


 わたし達は商業ギルドの用事を終わらせて、次の目的地へ歩いて移動してる途中なんだけど、ブラオはさっきの商人への怒りが収まらないらしい。


 「まあまあ。わたしのこの見た目なのだから仕方ないわ。実害が無かったのだしもう良いじゃない」


 「・・・お嬢様がそう仰るのなら・・・」


 渋々といった感じだけど、納得してくれたのかなあ?


 「ところでお嬢様。何処へ向かっているのですか?」


 ブラオとの会話が一段落すると、アリアが今向かってる目的地を聞いてきた。


 「そういえば言ってなかったわね。ちょっと服屋に行こうと思ってね」


 「なぜわざわざ自ら行かれるのですか?」


 アリアが不思議そうな顔で聞き返してくる。


 「まあ別に王城いえに呼んでもいいんだけど、厳密には私の用事というか服じゃないしね」


 ・・・・・・それに王城いえに呼んだら、お母様が来て面倒なことになるしね。


 「お嬢様には何か深いお考えがあるのでしょうし、これ以上聞くのは止めておきます」


 「そうしてもらえると助かるわ。っと着いたようね」


 話していたら目的に地到着した。商業ギルドからさほど離れていない距離にあるそのお店は商店街の一画に建っていた。お世辞にも高級店と呼べるような店構えではないが、清潔感が感じられるお店だった。


 「え?ここで、ですか?ここは古着屋ですよ?お嬢様が古着を買うんですか?」


 うわー舌の根も乾かないうちに、色々と聞いてきたよこの子は。


 「違うわ。ほら、あそこの看板に『仕立て承ります』って書いてあるじゃない」


 「ですが・・・」


 「ほら。ぶつぶつ言ってないで入るわよ」


 「あっお待ちください」


 強引に中に入ると、そこは予想通りの店内だった。所狭しと服が並んでいるが、乱雑といった感じではなく、お客が見やすいように陳列されていた。


 「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」


 店内の様子を観察していると、奥から二十代くらいのお姉さんが出てきた。


 「ええ。服の仕立てを注文したいのだけど、頼めるかしら?」


 「はい・・・できますが、お嬢ちゃんが注文するの?後ろの二人はご両親・・・というわけじゃなさそうね」


 「へえ・・・なかなかいい目をしてますわね」


 「まあ、なんとなくね。感よカン」


 「ま、そういう事にしておきましょう」


 「「ふふふふふ」」


 後から知ったんだけど、この時のことをブラオとアリアは「まるで狐と狸の化かし合いのようだった」と語ったそうだ。・・・ていうか、この世界でもその言葉はあったのね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る