第9話 食事事情?
パーティー会場内の様子をそれとなく観察していると、メイドが料理と飲み物を運んできた。手慣れた様子でテーブルへサーブすると、一礼して壁の前に戻っていった。
並べられたのは、木のコップに入った飲み物と、これまた木の器に入ったスープとパンと野菜だった。そして、カトラリーも木製だった。
『軽く』と言ったからサンドイッチでも出てくるかなあと思ったけど、これは意外だわ。そういえば転生してから、サンドイッチを食べた記憶が無いかも。存在しないのかしら?
コップの中身は果物のジュースみたいで、甘過ぎもせず爽やかな感じで美味しかった。うーん・・・何の果物なんだろう?今度聞いてみようかしら。
次にスープを一口飲んだんだけど、思わず顔をしかめてしまった。その事に気が付いた何人かの使用人が近づいてこようとしたけど、それは手で制止した。それでもサーブをしたメイドが青い顔をして近づいてきた。
「お、王女殿下。何か問題がございましたでしょうか?」
うーん、ひどく脅えて震えているわ。本当に何も問題は無いんだけどね。これは安心させてあげなくちゃね。
「いいえ。何も問題は無いわ。大丈夫だから下がりなさい」
わたしの言葉に、メイドは余計に顔色を悪くして壁際へ戻っていった。安心させるために、最高の笑顔をしたというのに解せぬ。
実際の所、メイドには何の落ち度も無かった。問題があるとすれば、料理人かこの国だろう。何のことかと言えば、このスープは野菜の水煮だったんだよね。ポトフみたいな物を想像して口に入れたので、ポーカーフェイスが崩れてしまったのだ。肉でも入ってれば少しは変わったんだろうけど、見たところ表面に油は浮いてないし元から入ってないのだろう。
記憶を思い出す前は平気だったけど、食と味にうるさい日本人の記憶が戻った後だと、どうしても気になってしまう。ただ、前世のわたしは食べる専門で、作る方は得意ではないんだけど、今後の快適な生活の為にはどうにかしないと駄目だろうな・・・。
でもあまりやり過ぎると目立ってしまうだろうし、さじ加減が難しいかも。これは選択を間違えると、のんびり暮らす計画が狂ってしまうので慎重にしないとね。
ちなみにパンは固く噛んでも甘みも何も無い上に、バターもジャムも無かったので何の拷問かと思ったよ。
野菜は軽くゆでてあって、塩が振られているだけだったけど、これが一番美味しかった。
食べ物チートは完全に専門外なんだけどね。でもどうにかしないと、今後のわたしがストレスでどうにかなってしまいそうだわ。
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