第8話 パーティー

 教会でお祈りをした次の日。




 わたしは今、王宮の大ホールで開かれているパーティーに参加している。




 詳しい参加者の内訳は知らないのだけど、見たところ貴族の他には教会関係者と商人ぽい人も数人居るみたい。




 正直参加はしたくなかったのだけど、『王女の回復を祝う会』みたいな感じなので流石に逃げられなかったのだ。




 所謂いわゆるわたしが主賓なわけで、淡いピンクのドレスを着させられて招待客きぞくの挨拶を受けている。今日のドレスも、丈が足下まであり非常に動きにくいので、動かなくて良いのは一応助かってる。でも、笑顔を崩さずにいるのが、非情にツライ。もう1時間くらい同じ場所で対応してる気がする。とっくに表情筋が悲鳴を上げてるよ。




 まあ笑顔を張り付かせてるのは、相手もだからお互い様だろうけどね。




 こんな時に相手の考えてる事が分かる魔法があれば便利だと思う。自慢じゃ無いが、前世から相手の心を読むのは苦手なのだ。って・・・考えてて落ち込んできたわ。今度、そういう魔法が無いか調べてみよう。




 「王女殿下?いかがされましたか?」




 「い、いえ・・・何でもありませんわ。オホホホ・・・」




 笑って誤魔化してみた。




 いけない、いけない。少しぼーっとしていたみたいで、挨拶を受けてる貴族に心配されてしまった。その貴族は、何かを察したように離れていった。どうしたんだろう?




 それから程なくして、挨拶の列が途切れたので、一段高い場所にある王族専用のスペースへ移動することにした。




 王族専用といっても、臣籍降下した元王族も使えるのだけどね。それでも、さっきまで居た場所に居るよりは数倍マシだと思う。それに今は皆挨拶回り中みたいで誰も居ないしね。




 わたし達家族用に用意されたテーブルに着くと、年若いメイドが近づいてきた。




 「王女殿下。何かお持ちいたしましょうか?」




 「そうね。飲み物と軽く食べられるものを持ってきてくれるかしら。あとできれば飲み物は冷たい物がいいわね」




 『畏まりました』と一礼すると、メイドは王族専用スペースの隅にある料理コーナーへ向かっていった。




 そういえば、さっきまで挨拶を受けていた会場の方には、飲み物はあっても料理は無いようだった。そういうものなんだろうか?




 あと、料理を持ってくるように頼んだメイドもだけど、使用人達の服装は統一されているわけじゃないようだ。貴族達が着飾ってる服ほど高品質そうには見えないけど、それでも王宮に勤めている者達なのでそれなりの品質の服を着ている。なので、今日みたいに民衆も招待されてるパーティーとかだと、紛れ込んで区別が付かないことがあるんだよね。それに仕事着だから汚れることもあるだろうし、そのあたりの補填とかってどうなってるんだろう?




 おそろいの服おしきせがあった方が統一感あるし、一目で使用人かどうかも分かるし良いと思うんだよね。今度お父様に相談してみましょう。




 やっぱりメイドにはメイド服を着せたいじゃない!ひとまず情報収集から始めようかな。

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