第3話 お母様が来た(お見舞い)

 叔父様(ついでにお父様)が仕事に戻ってから、入れ違う感じに今度はお母様とメイド数人が訪ねてきた。




 今度は常識的でマナーのある訪問で安心したよ。




 「ああクリスティーナ。元気になって良かったわ。心配で心配で、このまま儚くなってしまったらと考えたらとても怖かったわ」


 


 そう言いながら、お母様はわたしに抱きついてきた。目元には薄ら涙が見えたので、寝込んでる間の記憶は無いけどこの様子だと相当心配させたようだ。




 「お、お母様。ご心配をおかけしました。も、申し訳ございません」




 「王妃様、姫様が苦しそうですよ」




 「あら、ごめんなさいね」




 わたしが苦しげにもがいてるのを見かねて、お母様の後ろに控えていたメイドの助言で解放してくれた。確かこのメイドは、お母様が幼い頃から付き従っていた人だったはず。なんでも、お母様が王家に輿入れをする時に一緒に付いてきたみたい。で、今は家族以外でお母様に諫言できる唯一の人らしい。名前はたしかアンナだったかしら?




 「アンナ、助かったわ。ありがとう」




 「いえ、もったいないお言葉です」




 「ところでお願いがあるのだけれども・・・・・・少しお腹がすいているの。なにか口にできる物はあるかしら?」




 「畏まりました。起きられたばかりですし、果物をご用意いたします」




 アンナはそう言うと、別のメイドに指示を出していた。指示を出されていたメイドは、すぐに部屋を出て行ったので、おそらく厨房へ果物を取りに行ったのだろう。




 「それと、喉が渇いたので水を貰えるかしら」




 「畏まりました」




 わたしのお願いに、今度はアンナが自らベッドサイドに置いてある水差しからコップへ注いで、わたしに手渡してくれた。




 「ありがとう・・・ふう、おいしい」




 アンナにお礼を言いつつ、渡された水を一口飲んだ。それにしても、コップは木製なんだね。ガラスとは言わないけど、毒対策には銀製の食器を提案しても良いかもしれない。ただ、全ての毒に反応するわけじゃないし、それを知ってる理由も説明できないから保留かなあ。




 「本当にティナが元気になってくれて良かったわ。でも、念のために司祭様に診てもらいましょうか」




 お母様がそう言うと、メイド達の後ろから一人の男性が現れた。聖職者の証の法衣を着ているし、この男が司祭様なんだろうけど、後宮に家族以外の男性が入って良いのかなあ・・・ああ、そういえば禁止という法は無かったわね。




 ところでこの司祭様、見た目は人の良いおじさんなんだけど、なんとなく生理的に受け付けないというか何か嫌な感じがするんだよね。お城のしかも後宮へ出入りできるのだから、おかしな人物ではないと思うけど、どうしてか不安が心からはなれないんだよね。

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