第2話 お父様の襲来

 メイドのあまりもの行動にあっけにとられてると、なんだかこちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。




 この城の中は騒がしい人しかいないのかと内心呆れていると、突然”バァン”と大きな音とともに扉が開いた。




 「クリスティーナが目覚めたとは本当か!?」




 どうやらこの城の住人にはマナーとか気遣いという言葉は無いらしい・・・。




 で、誰が入ってきたのかと思ったら、お父様(現国王)だった。




 「お父様、いくら親子とはいえレディーの部屋に入るのですから、ノックくらいはなさってくださいませ」




 「うん?おお、すまんすまん。可愛い姫が目覚めたと聞いて、いても立ってもいられなかったのだ。まあ、許せ」




 相変わらずこの父は・・・まったく反省する気が無いですわね。そもそも本当に悪いと思ってるのかしら?




 「はあ・・・もういいですわ。見ての通り元気ですので、お父様はお仕事にお戻りください」




 「仕事の方は大丈夫だから、そんな冷たいこと言うな。なにせ優秀な宰相がいるからな。お飾りな俺などいない方が、あいつもやりやすかろう」




 そう笑いながら言うけど、自分を”お飾り”というなんて大丈夫なのかしら?




 「お父様、そんなこと言って、謀反を起こされても知りませんわよ?」




 「それは大丈夫だ。むしろ謀反されたら、喜んでそいつに玉座を譲ることにするよ」




 ああ、そういえばこういう人だった。若い頃は本気で冒険者になりたかったようで、側仕えの目を盗んで城下へ出かけたのも一度や二度では無いらしい。この様子だと、まだ諦めてはいないようね。




 「陛下、そのような誤解を招く発言は困りますと、何度も申し上げているはずです。誰かがその言葉を鵜呑みにしたらどうなさいますか」




 「なんだ、おまえも来たのか」




 お父様以外の声が聞こえてきたので、そちらに視線を向けるとお父様の言うところの”優秀な宰相”様が困り顔で立っていた。




 この宰相様は公爵家の当主で、お父様の同腹の弟だったりする。つまりわたしの叔父なのだ。お父様は王座に就く前に、何度も継承権を叔父様へ譲ろうと計画して失敗したらしい。ちなみにその計画を潰したのは、叔父様本人だったりするのだ。




 「お久しぶりですわ叔父様」




 「姫様。いや、ティナ。元気そうで安心しました」




 「ご心配をおかけして申し訳ございません。なんとか無事に回復することができました」




 「そのようですね。安心しました。ですが病み上がりですし、あまり長居しても身体に悪いので、そろそろお暇しますね」




 「はい。身体の調子が戻りましたら、少し相談したいことがありますので、お時間を作っていただけますか?」




 「?かしこまりました。ご都合のよろしい時に、執務室へいらっしゃってください。ほら、陛下も一緒に出ますよ」




 「こ、こら!何をする!放せ!ティ、ティナ・・・また来るからね」




 叔父様は最後に一礼をすると、お父様の襟首を引っ張って引きずりながら部屋を出て行った。

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