第4話 休日
下の階からドンという音が聞こえて目を覚ます。
時計を見やれば、デジタル時計は『12:40』と表示している。
「……寝すぎた」
日勤が二日終われば、次の日は休日だ。今日が終われば明日から夜勤が二日。その後は三日休み。日勤二回、休日、夜勤二回、休日三日、というサイクルがずっとぐるぐる続いていくことになる。
休みの為何ら問題はないが、折角の時間を無駄にしてしまった感も否めない。悔やんでも仕方ないからと、ベッドから這い出て水を一杯飲む。
「あ、洗濯」
洗濯籠にため込んでいた洗濯物を洗濯機に放り込んでいく。その状態で洗濯機を起動させれば必要な洗剤の量を教えてくれるため、適量洗剤を入れて蓋を閉めた。
洗濯が終わるまでは三十分程かかる。
「どうしようかなぁ」
そうぼやいてから服を着替え、冷蔵庫の中を確認する。水と調味料以外ほぼなく、空といっても過言ではない。小さなため息をついてから近所のスーパーへと向かった。数日分の食料を買い込むためだ。
卵、肉、野菜などをカゴに入れていって、レジに着けば煙草を頼むのも忘れない。
「思ったよりかかるなぁ……」
帰り道、レシートを見ながらそんなことを呟く。
転職が決まるまでは実家暮らしだった。家に毎月三万ずつ入れてはいたが、こうやって生活費を考えて生活した経験が今までなかった。
煙草をやめればそれなりにお金が浮くとはいえ、今のところやめる気はない。
「ただいま」
誰がいるわけでもないが、実家の癖が抜けずに声に出してしまう。
ふと煙草を片手にベランダに出てみるが、両隣の部屋に洗濯物が干してあり、喫煙は止めることにした。部屋の中へと戻ってベッドに腰かける。
(アパート、困るな……)
会社側が借り上げている安いアパートだ。喫煙所が併設されているわけがない。
ヘビースモーカーと言われるような程吸っているわけではないが、それでもやはり無性に吸いたくなって仕方がない時というのはある。
解決策を探すも、暫く頭を捻っても出てこない。最悪コンビニ前にたむろするか、とも思ったが、それは最終手段にしたい。
そうこう考えている内に洗濯物が終わり、それらを干していく。
「つめた」
十二月ともなれば、水に濡れた洗濯物は凶器の様だ。その作業が終わる頃には一時半を過ぎていた。
「ご飯にするか」
とはいえ、これといって特に食べたい物はない。そういう時は、洗物が極力少なくて良いものを作るようにしている。
ノリの佃煮、牛乳、水を適量入れたフライパンに、十分茹でるタイプのパスタの乾麺を放り込む。良い感じに汁気が飛ぶまで茹でれば、ノリの佃煮のクリームパスタができる。動画サイトからの受け売りのレシピだ。
このレシピだとフライパン、皿、菜箸、フォークだけで良いから楽だ。横着をこけばフライパンから直接食べても良いのだろうが、流石にやめておく。
「いただきます」
可もなく不可もなく。ちょっと和風気味の、普通に美味しいクリームパスタ。
動画サイトを漁りながら食べ終えると、その後は作り置きを作っていく。作るのは明日明後日の分。夜勤の弁当のおかずに出来そうなものを考える。
たんぱく源として味玉、ハンバーグ、生姜焼き、ブリの照り焼き。野菜はモヤシとほうれん草のナムル、キャベツとツナの和え物、ほうれん草の胡麻和え、きんぴらごぼうを作ることにした。
「結構時間かかっちゃったな」
それなりの量を作った為、気づけば日が暮れていた。でもこれで明日明後日にバタバタする必要がなくなると思えばまあ悪くない。夜通し働かなければならないともなれば、出来る限り仕事のギリギリまで寝たい。
「……あ!」
洗濯物を取り込むのを忘れていた。ベランダまで取り込みに行き、洋服類はベランダに干していたままクローゼット内に吊り下げる。タオル類などは畳んで風呂場付近に設置したカラーボックス内に収納していく。
もう良い時間なのもあり、夕食は楽を取ってインスタントの味噌汁と、焼肉のたれで味付けをした豚肉を焼いて食べた。
「……何もしてない」
そんな虚無感に襲われながらも、その日は入浴を済ませて眠ることにした。
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