第22話◆ダンジョンとは――セーフティーエリア
「はーい、到着ー! お疲れ様、ここの目的地、三階層目のセーフティーエリアだ。入り口には入場チェック用の魔道具があるからな、そこを通過するんだぞ? 変なとこから入ろうとすると侵入者防止の結界があるから痛い思いをするぞ。これは魔物が入って来ないためでもあるし、防犯のためでもあるんだ。入り口を通過した時点で持っているギルドカードで利用した冒険者が記録される仕組みになっているんだ。冒険者カードを紛失して持っていなくても通過はできるけど、通過した時に魔力が登録されて誰が通過したかは調べればわかるんだ。魔力っていうのは個人で違うっていうのは習っているよな? 冒険者の個人情報はそれを利用して管理されているんだ」
「出入りの記録が残るってことは、ダンジョン内でいつどの辺りにいたかという大まかな証拠になるんだ。それは君達が犯罪に巻き込まれた時の状況の解明や犯人の特定、そして犯罪の証拠にもなるんだ。ふふ、悪いことをしなければ自分達の身を守ってくれるシステムだからね気にしすぎる必要はないよ」
「まぁ、やましいことがなければ気にする必要はないシステムだな。やましいことがあるからって壊すとものすげー額の賠償金を払わされるから、変なことは考えるんじゃねーぞ。このダンジョンに限らず、冒険者ギルドが冒険者のために設置しているものは色々なとこにある。それらを事故で壊した場合はその過失により賠償金は上下するが、正当な理由もなく故意に破壊した場合はとんでもない賠償額になるから、やましいことがあって隠蔽したくても、後のことを考えるとギルドのものを壊すより、素直に怒られた方が楽だからな?」
「ダンジョン管理用の施設はグランですら壊したことがないからね。いいね? そんなものを壊したらグラン以上ってことだよ? これはいい意味じゃなくて悪い意味だからね?」
「普通にしてたら壊すようなものじゃないから、その基準はどうかと思うぞ。ちなみにこの結界はAランク程度の魔物がぶつかってもビクともしないけど、もし故意に破壊するようなことをしたらヤベー額の賠償金になるから気を付けろよ?
よっし、全員セーフティーエリアに入ったな、それじゃあ軽く昼休憩を挟んでセーフティーエリア内の施設の説明をするぞぉ。セーフティーエリアの仕様はだいたい習ってるような? そう、セーフティーエリアはダンジョンを管理する冒険者ギルドやその地域の統治者が設置管理しているもので、基本的に魔物は入ってこない休憩場所だ。
魔物使いなら冒険者ギルドで発行されるペット用のタグをペットに付けているな? ペット用タグを付けておけばセーフティーエリア内に魔物を連れ込める。ダンジョンで魔物を捕まえるつもりなら捕獲後に付けておく仮タグを買ってくるのを忘れると、捕まえた魔物をセーフティーエリアに連れ込めないから気を付けろ。仮タグにはランクがあるからな、タグに設定されたランク以上の魔物は連れ込めないから注意しろ。でも高ランクの魔物に対応してる仮タグは高いから気を付けろよ。これも魔力による識別だが、時々このタグが正常に作動しないやつもいる。
それと魔物をセーフティーエリアに連れ込んだ場合の責任はタグの所有者にあるからな? いくら強い魔物を連れていても、ちゃんと扱えない魔物を連れ歩くと大変なことになるからな? もちろん魔物が暴れて周囲に被害が出る危険がある場合は他の冒険者によって処理されることもあるからな? 魔物だって生き物だ、魔物を使役するということはその命を預かるということをよく覚えておくんだぞ」
「うぇ、グランがまともなことしか言ってない。大丈夫? 変なものを拾い食いしてない?
まぁ冗談はおいといて、すごく弱い生き物や、結界をすり抜ける能力を持った生き物、もしくは強すぎて結界そのものが効かない生き物もいるからね。そうだねぇ、ランクにしてFランクより弱いような魔物は結界をすり抜けちゃうことが多いね、小さな虫とか小動物とか。後は妖精系、こいつらは結界をすり抜ける能力を持っているものが多いうえに性悪なやつもいるから気を付けるんだよ。見た目が可愛くても釣られたらだめ、グランもいいね?
それから問題は、すっごく強くて結界が効かない系。これも結界を無効化するタイプと結界を壊すタイプがいるからね。まぁそういうのがいる場所は、ダンジョンが一般開放される前の調査段階で調べられてその階層にはセーフティーエリアは作られないことが多いかな。そういうやつはランクの高いダンジョンに極稀にいるくらいだけど、たまーに何かの変異でランクの低いダンジョンにもひょっこり出てくることもあるから油断はしないでね。ダンジョンでは……いや、魔物を相手にする時は"絶対"はないからね、よく覚えておくんだよ」
「わぁ……アベルがまともなことを言ってる。まぁ、ちっこいペットや結界をすり抜ける能力のあるペットはタグがなくても連れ回せるけど、しっかり管理してちゃんとペットだってわかるようにしておかないと、他の冒険者に侵入してきた魔物と間違えて討伐されても文句は言えないから、悲しいことにならないように気を付けろよ。
よし、じゃあ空いてる場所で昼休憩時間だ。うんうん、セーフティーエリア内はダンジョンにものを吸収されないから安心していいぞ。といってもやっぱダンジョンの外よりも劣化速度は速いから、ダンジョンに来る時は少々高くてもダンジョン用の資材を使う方が結果的に安く上がるぞ。
それじゃ昼休憩! 楽しいお食事タイム!! ん? 俺の飯が食いたくてこの講習に参加した? ははは、欲望を隠さない素直な奴は俺も好きだぞ。いいぞ、今日はダンジョンでも簡単に作れて美味しい料理を一緒に作ろうか。どうせなら美味いものが食いたいもんな」
「まぁた、そうやって餌付けしていくぅ~。君達、グランのご飯が食べたいなら、キリキリ動いて食事の準備を手伝うんだよ。グランがいつも言ってるよ、働かざる者食うべからずって。グランにしてはすごくいいことをいうよね」
「うるせぇ~、働いた後の方が飯は美味いんだよ。ついでに自分で作った飯も美味く感じるんだよ」
【セーフティーエリアについて】
・セーフティーエリアとは
ダンジョン管理者(冒険者ギルドまたはその地の統治者)が設置している、魔物が入ってこない休憩場所。
ダンジョン探索の拠点にしやすいように色々な設備が設置されている。
セーフティーエリア内ではダンジョンにものが吸収されにくいが、それでもダンジョン外部に比べ物の劣化は速い。
(通常のものよりやや高めだがダンジョン用に劣化対策をされた機材を使う方が結果的にはお得)
またセーフティーエリアの入り口には、防犯のため出入りする者を記録する魔道具が設置されている。
魔力は個人によって違うため、個人情報の管理は魔力認証によって行われている。
ダンジョンに設置されている施設を壊すと賠償金がクソ高い。グランですら壊したことがない。
セーフティーエリアの結界はAランク以上の魔物をぶつけても大丈夫だが、魔物があまりにも強すぎると壊れることもある。
故意に破壊すると賠償金がやばい。
・セーフティーエリア内への魔物ペットの持ち込みについて
冒険者ギルドでペット登録をするともらえるタグを付けた魔物はセーフティーエリア内に連れ込むことができる。
現地で捕まえた魔物をセーフティーエリアに連れ込むためには、それ用の仮タグを購入し用意しておかなければならない。
仮タグにはランクがあり、そのタグのランク以上の魔物には効果がない。高ランクの魔物に対応するタグほど高い。魔物の魔力による認証方式でタグが正常に作動しない個体もいる。
ペットの魔物の管理責任は飼い主にあり、また弱すぎる生物や結界をすり抜ける能力を持つ生物、強すぎる生物がセーフティーエリア内に入ってくることがある。
調査の段階でセーフティーエリアに入ってくる可能性がある危険生物がいる場合、その階層はさけてセーフティーエリアが設置される。
(セーフティーエリアはだいたいその階層の入り口か出口周辺に設置される)
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