第19話◆ダンジョンとは――ダンジョン内での危険行為
「それじゃダンジョンの中の注意事項をおさらいしておこうか。俺達の班はわりと緩めだけど、あっちの班の人間だけど熊っぽい人と猫獣人のお母……ヒーラーは厳しいから気を付けろよー。熊っぽい人は今回のリーダーだからなー、はしゃぎすぎて先走ったり、勝手な行動をしたりすると、めちゃくちゃ怒られるぞー。それは君達の安全のためでもあるからなー、リーダーの指示にはちゃんと従うこと。それから、ヒーラー様はパーティーの生殺与奪を握っているからなー、ヒーラー様は絶対怒らせたらいけないぞー、ヒーラー様はパーティーの命綱だからなー、冗談抜きで大事にするんだぞー?」
「グラン、獣人は耳がすごくいいからね、馬車が違っててもリヴィダスには聞こえてるかもしれないよ。まぁともかく、ダンジョンに入ったらリーダーの指示にはちゃんと従うこと、ヒーラーの回復の届かない場所までいかないこと、これはダンジョン内に限らずどこでも同じだよ」
「ぎえっ! 大丈夫、怒られるようなことは言ってない!! と、ともかくリーダーの指示にはちゃんと従って、行動する時はヒーラー様の位置、メンバーの位置を常に確認して自分だけが突出しないように注意をすること。
パーティーで協力すれば楽な敵も一人だと苦戦することも多い。一人になると狙われるのは常に自分だ、狙われている状態で攻撃し続けるのは難しく、それだけ敵を倒すのに時間がかかり負傷もしやすい。敵が複数なら自分が袋叩きにされることもある。
そうやって、一人で突出することを狙って誘導し、飛び出した奴を袋叩きにする魔物もいるから気を付けろ。絶対に自分と仲間の位置を見失うな」
「うわ、グランがすごくまともなことを言ってる!! それと同時にすごく自分のことを棚に上げてる!!」
「だまらっしゃい! これは俺が冒険者を始めてからの経験でもあるんだ。油断して飛び出したり、つい調子に乗って敵を追いかけ回したりしたらダメだぞぉ。
あと一歩まで追い詰めた敵を逃がしたくない時は誰にでもあるよなぁ。だが、何も考えずに追いかけるには危険だ。追い詰められた魔物は非常に危険だし、足の速い魔物なら追いかけているうちに孤立しやすい。それにダンジョン内の道は、何もないように見えても罠が仕掛けられていることが多い。
ランクの低いダンジョンなら罠だけで致命傷になることはまずないが、その罠で動きを制限されたところを魔物に襲われると命に関わる。いいか、ダンジョン内では常に周囲を気にして行動をするんだ」
「うわ、グランが当たり前のようにまともなことを言ってるけど、だいたい過去にやらかしたことだよ」
「そうだぞ、経験は大きな学びである。俺は俺の経験から得たものを君達に伝えている。君達は俺から聞いた話をぜひ危険の回避に活かしてくれ」
「うっわ、開きなおっちゃったよ。ダンジョン内で無闇に走り回って、罠を踏みまくる体験なんて他の冒険者にも迷惑だからしない方がいい体験だから、グランの話を聞いたなら真似をしちゃダメだよ。
ダンジョン内での行動は、当たり前だけど他の冒険者に迷惑をかけるようなことはダメだよ。君達も命の危険があるような場所で、他人に迷惑をかけられたら腹が立つだろ? 危ないし、トラブルの元になるからね。ダンジョンでの行動では常に周りに配慮して行動するんだよ」
「トレイン常習犯のアベルが言うと説得力がねーなー。ギルドでも習ったと思うがトレインっていうのは、魔物から狙われている、追われている状態で移動することにより、その魔物を連れ回すことだ。その魔物の数が増えれば長く連なって見える様が、おとぎ話に出てくる長ーい乗り物に似ているせいでそう呼ばれるようになったんだ。このトレイン行為はダンジョンに限らず、他人を巻き込む可能性がある非常に危険な行為なんだ」
「グランも充分トレインの常習犯だけどね。トレインはうっかり自分の実力では倒せない魔物を触ってしまった時、もしくはそのような魔物に遭遇してしまって、逃げた時に起こりやすいんだ。
もちろん勝てない魔物に無理に挑む必要はない。命が一番大事だからね。だけど逃げると魔物も追いかけてくる、追いかけてくる間に他の魔物がついてきたりもする。こうしてどんどん追いかけてくる魔物の数が増えると手に負えなくなり非常に危険なんだ。
ちなみにこっちを狙っている魔物に他の魔物が次々と反応してこちらを狙い始める現象のことはリンクっていうんだ。トレインとリンクは同時に起こりやすくどちらも非常に危険だから、そうならない立ち回りを心がけないといけない。
もしそういう状況になってしまうと、逃げている途中にたまたまいた人を巻き込むことにもなりかねないから、魔物から逃げる時は上手く魔物の気を逸らしたり足止めをしたりして、魔物が追いかけてこない状態を作りながら速やかに逃げるんだよ」
「さすがトレイン上級者、正しい捌き方もよく知っている。追いかけ回される時間が長ければそれだけ自分も危険だからな。気配を消すスキルを磨くのは冒険者として当然だが、魔物の足止めに便利な道具や、自分の逃走した痕跡を消せる道具や技術、知識もあるに越したことはない。スキルや知識や道具は君達の命を救ってくれるんだ」
「はいはーい、ここで大事なことね。その痕跡を消せる道具や足止めができる道具は、爆発物のことじゃないからね? もちろん炎上する類のものもやめた方がいいね? ダンジョンには色々な地形があるけど、ダンジョンに限らず閉所や燃えやすいものがある場所、崩れやすい場所では爆発炎上する系の道具も魔法もダメだよ? いいね? 自分も周囲の人も危ないからね?」
「そうだな、爆発炎上するものは用法と用量を守って……」
「狭い場所や燃えやすい場所、崩れやすい場所ではダメだからね」
「そうだな、爆発炎上するものは周囲をよく見て、自分の安全が確保できる場所で。もちろん他の冒険者を巻き込まない場所でだな。爆発物は効果的に使えば戦況をひっくり返せるし、爆弾系のポーションや小爆発を付与した投擲武器の使いどころは多いしな。興味があったら爆発物についても勉強してみるといい。ちなみピエモンという町の冒険者ギルド長監修の下、俺が書いた初心者向け爆発物ハンドブック"完全爆発マニュアル~これで君もニトロラゴラ博士~"という本がギルドの図書室にもあるから良かったら参考にしてくれ。売店でも売ってるぞ」
「何なのその本!! 絶対碌でもない本でしょ!? 何でも爆発させればいいってもんじゃないよ!!」
【ダンジョン内での危険行為】
・先走り、突出注意。
味方の位置、特にヒーラーの位置を確認し、孤立しないようにする。
ヒーラー様を怒らせてはいけない。
ダンジョン内は何もなさそうな場所でも罠が仕掛けられていることもある。
(ダンジョンのランクが高いほど極悪な罠が増える傾向がある)
・トレイン行為の禁止。
トレインとは魔物に狙われている状態で移動し、その魔物を連れ回すこと。
語源はおとぎ話に出てくる空想上の乗り物の名前。
自分達を狙っている魔物に反応し、連鎖的に他の魔物もアクティブになる現象をリンクという。
・狭い場所、燃えやすいものがある場所、崩れやすい場所での炎上、爆発系の魔法及び道具の使用は危険。
具体的には洞窟や屋内、森や山などの木の多い場所など。
倒壊、崩落、火災の危険がある場所では爆発や炎上の起こる攻撃は自重すること。
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