第15話 ◆スキルとギフト
「はーい、はぐれないようについて来てねー。はぐれたらこわーいギルド長のおじさんに怒られちゃうよー」
「おい、ギルド長を煽るのはやめろ。あの人、いい年して何だかんだで大人げねーから……あっ! 手帳になんか書いてる!! これは素行の査定にマイナスが付けられたのでは!? やばい、ここから挽回しないとっ!」
「グランもギルド長を無駄に煽らないで。あ、ギルド長に気を取られているうちに、最初の目的地が見えてきたよ。はい、まずはあそこのお店ね。
お店の前にお洒落な服装のそこそこ顔のいい男の人が立ってるでしょ? ほら腰に剣を下げてるのが見えるかい? そう、あれはお店の護衛、実は冒険者なんだよ」
「あそこは女性向けの服とかアクセサリーのお店だな。店員さんは女の人がほとんどで、お客さんも女の人が中心なんだ。つまりか弱い女性とお金が集まる場所なんだよ。
女性の中にも悪い奴に立ち向かう強い人はたくさんいる、でも世の中には女性だからって軽く見る輩が多いからな。だから悪い奴が近寄ってこないために、悪い奴が来たらやっつけるために冒険者のお兄さんがお店の前を見張ってるんだ。警備の人がいるだけで悪い奴らが寄って来にくくなるからな。
でもね、恐すぎる人だとお客さんもビックリしちゃうから、見た目は優しそうなお兄さんが護衛してるんだ。優しそうな見た目だけどすごく強いから、悪い奴が来たらビシッとやっつけてくれるんだ」
「パッと見、あまり恐そうにないし店員さんにも見えるでしょ? ああやって自然にお店を守って、悪い人を油断させるのも作戦の一つなんだよ。
それにね力でねじ伏せるだけじゃないんだよ。あ、ちょうど変な人がお客さんに絡んでるね。ほら、警備のお兄さんが行って何か話してるでしょ? うん、ちょっと威圧系のスキルを使ったね。お店の前に立ってる時は優しそうに見えるけど、やっぱり冒険者だから迫力があるね。
ほら、悪い人が諦めて帰っていったよ。ああやって、何か大きな事件になる前に悪い人を追い払うのも冒険者の仕事なんだ。悪さをする人を捕まえるのは当たり前だけど、悪さをされるのを先に防ぐのも大事なんだ」
「ん? 威圧のスキル? そうだな、次の場所まで少し距離があるから、歩きながらスキルとギフトの話でもするか。
お店の警備のお兄さんが使っていたのは威圧スキルといって、相手をびびらせるスキルなんだ。自分より弱い相手ほど有効で、びびった相手は逃げていくから無駄に争わなくていいってことだな。ただし強い相手には効かないし、自分と同格の相手は逆上することがある。格下でも時々効かない奴はいるな。
威圧系のスキルは冒険者に限らず、体を鍛えたり、自分が強い信念や心を持っていたりすると勝手に身につく系だな。
スキルは最初から持っているものだけじゃなくて、習ったり、体を鍛えたり、ただ生活しているだけでも身につくもんなんだ。技術とか才能ってやつだな」
「中には珍しいスキルを生まれつき持っている子もいるよね。それはどんなものでも才能だから大事にするんだよ。スキルはちゃんと伸ばしてあげるときっと役に立つからね。
ただ自分のスキルをちゃんと把握できる人は少なくて、無意識に使ってる人がほとんどだね。ちょっとこれが得意だとか、やっているうちに上達したとか、それはスキルがあって成長してるってことなんだ」
「武器や魔法を使えばその扱いが上手くなる、つまりスキルが上がっている。武器だけじゃなく日常生活の料理や裁縫、物作り、それもスキルに依存してるんだ。
こうやって誰でも覚えることのできるスキルはコモンスキルといって、誰でも学んだり使ったりしているうちに身についてどんどん伸びていくんだ。
他にはレアスキルという生まれながらに素質を持っているスキル、素質がないと目覚めないスキルもあるんだ。素質があってもその存在に気付くきっかけがなくて使えないまま、自分の気付いていないスキルが眠っている可能性だってあるぞぉ」
「そうだね、生まれた時から持っていたスキルでもその存在に気付かないと使えないスキルもたくさんあるからね。そしてもう一つ、ユニークスキル。
そう、ユニーク。その名の通り固有のスキル、その人だけの固有のスキル。もしくは過去に所持者がほとんどいない珍しいスキルのことだよ。上位の冒険者にはユニークスキル持ちが多いね」
「安心しろ、俺はユニークスキルなしでもAランクまで上がったぞ! レアスキルもほとんどないぞ! コモンスキル最高! 育てればわりと何でもできる!! 努力と学習で才能は作れる!!」
「グランはコモンスキルだらけだけど、持ち主に似て非常識なコモンスキルもあるからなぁ……。
確かに才能があってもそれを伸ばす努力をしないと意味がないからね。眠らせている才能より、磨いた技術のほうがずっと有用で役に立つんだよ。でも、努力ができる、その努力して伸ばせるって時点でそれはもう才能かもしれないね。
そして、その才能と深く関係があるのがギフト。スキルは自分で習得したり、家系のものだったりすることがほとんどだけど、ギフトは神様がくれる祝福ともいわれていて、ギフトを持っていると才能に恵まれやすく、そのギフトの影響を受けるスキルはすごく成長しやすいんだ」
「ギフトの効果はその影響を受けるスキルの効果が上がったり、成長が早かったりといったのが多くて、中には特殊な能力がくっついてるギフトもあるな。
しかしギフトを持っている人はそうじゃない人より少ないんだ。神様からのサービス品みたいなものだからなー。ん? 自分のスキルもギフトもわからない?
そうだな、ほとんどの人が自分のスキルとギフトを正確に知らないまま生活をしてるからな。教会や役所、大きな冒険者ギルドでお金を払えば調べてもらえるけど高いんだ。これは生き物を鑑定できる鑑定スキル持ちが少ないのと、同じく生き物を鑑定できる魔道具が非常に高価で数が少ないからなんだ。そして、精度が高くなるほど更に稀少で高価になってその分鑑定料も高くなるんだ」
「そうだね、王都の冒険者ギルドにある鑑定用魔道具ですら、ギフトはわかっても詳細まではほとんどわからないからね。いつかお金に余裕があれば鑑定してもらうのもいいかもしれないね。
でもね、ギフトがあるからって喜んでいるだけじゃダメだよ。ギフトには代償やペナルティがあるものも多いし、間違った使い方をすると反転して呪いになっちゃうこともあるんだ。ギフトが呪いに変化すると持ち主にすごく悪い影響を与えることになるんだ。
そう、神様がくれたものなら悪いことに使っちゃうと怒られるのは当たり前だし、何かの恩恵を受けるならその対価を払うのは当たり前だよね? ふふふふふ……ギフトに限らずタダより恐いものはないって覚えておくといいよ」
「そうだな、知らない人やギルドがタダでくれるってものは気を付けような。うむ、とくにギルド長や職員のあまい言葉には気を付けろよ……うっかり釣られると、とんでもなく面倒くさい仕事を押しつけられるからな。あ、ごめんなさい、もうカメムシ討伐は勘弁してください。フンコロガシ系もやめてください」
「話しているうちに、目的地が見えてきたよ。今日の一日冒険者のお仕事は王都の公園で花壇の手入れの仕事をしながら、害虫や小さなスライムの駆除をするよ。小さなスライムはどうしても魔物除けをすり抜けて町の中にも入って来ちゃうし、家庭で飼育してるのが逃げ出すこともあるからね。
うん、それくらいの作業ならやったことのある子もいるかもね。今日はその作業でお給料がもらえるからがんばってね」
「地味に見える? 地味だけど、これも公園をみんなが気持ちよく使うための大事な仕事なんだ。それにスライムは小さくても危ないからな、君達より小さな子供や、小型のペットがスライムの粘液で怪我をするかもしれないだろ?
よっし、わかったら手袋を嵌めて作業をするぞー。大きなスライムや色の濃いスライムを見つけたらお兄さん達かギルド長のおじさんに言うんだぞ。 大物は強いからな一緒に処理しような。
ヒッ!? ギルド長!? スライムにその魔力の弾を撃ち出す機能付きのかっこいい剣は過剰火力ですよ!!」
【スキルとギフト】
・スキル
スキルには三種類あり、基本的に使えば使うほど成長する。
成長速度は個人、スキルによりまちまち。高くなるほど上がりにくくなる。
コモンスキル→後天的に誰でも習得できるスキル
レアスキル→先天的な素質を持っていないと習得できないスキル。
ユニークスキル→固有のスキル
・ギフト
神の祝福ともいわれる才能、特殊な能力。
ギフトの影響化にあるスキルに大きな恩恵を与える。
ペナルティや代償のあるものも多く、使い方を間違えると反転して呪いになる可能性もある。
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