第14話◆冒険者とは――冒険者ギルドの仕事とは何ぞや
「冒険者ギルドは依頼主と冒険者の間を取り持つ以外にも、色々なことをやっているんだ。例えば素材の買い取り。冒険者が集めてきた素材を買い取って、必要としている店に売るのも冒険者ギルドの仕事なんだ。依頼主から頼まれて依頼として素材を集めることもあるけど、それ以外の素材も買い取ってくれるんだ。素材を集めるのは楽しいぞぉ」
「素材を集めるのは楽しいけど、ほどほどにね? ため込みすぎないでおりを見て売らないといけないよ。持ち物の整理整頓は大人の嗜みだからね、片付けのできない大人になったらいけないよ」
「お、そうだな? でももしもの時に必要な分くらいは残しておいてもいいかもしれないぞ。いつか役に立つかもしれないからな。
ん? そうだな、魔物を倒せば肉も手に入るから、食にも困らなくなるな。肉はいいぞ、心と腹が満たされる。もちろんそのためには魔物の解体方法も覚えないといけないが、それもギルドの講習で教えてくれるから安心していいぞ。
こういう冒険者として必要な技術を冒険者に教えるのも冒険者ギルドの仕事なんだ。これは受講料は少し高くなるが冒険者じゃなくても講習を受けることができるんだ。生活するための知識や技術だな。時々、一般向けに防犯や護身術の講習もやってるな。そういう講習会も冒険者ギルドの仕事だ」
「冒険者ギルドは何でも屋だからね、何でもするんだ。何でもするから他の専門色の強いギルドに比べて気軽に訪れやすい気がするでしょ?
それも冒険者ギルドの仕事なんだ。たくさんの人に来てもらってたくさんの人に知ってもらう、覚えてもらう。そうすればそれを活かして冒険者以外の仕事もしやすくなるでしょ? それじゃあ、冒険者ギルドが教えるだけで損をしてるんじゃないかって?
そうかもしれないけど、その人が冒険者にならなくて他の仕事に就いたとしても、冒険者ギルドの仕組みを知っていれば依頼を出しやすくなるでしょ?
冒険者ギルドの講習はね、冒険者を育てるだけじゃなくて、仕事に就ける人、未来の依頼人を育てるのも仕事の一つなんだよ」
「それから、冒険者ギルドは仕事柄悪い奴にも遭遇しやすい。だから悪い奴を捕まえる権利も持っているんだ。
冒険者は明らかに悪い奴が悪いことをしている場面を見つけたら取り押さえてもいいんだ。そうだな、時々治安部と一緒になって悪い奴をやっつける仕事もあるな。うむ、町の平和を守るのも冒険者の仕事なんだ」
「もちろん自分の判断で犯罪者に罰を与えるのはダメだよ。それは法務の仕事だからね。悪い奴を捕まえたら速やかに治安部に引き渡す。でもね、悪い奴が暴れたら大人しくさせないといけないからね。ふふふ、ちょっと手荒なことになる時もあるね、ふふふふふふ」
「あのお兄さん、ちょっと変な人だから気にしないでいいよ。
他にもお金を預かってくれたり、他の支部留めではあるが個人宛の荷物を運んでくれたりする。ここら辺は冒険者じゃなくても利用できるが、冒険者のほうが手数料が安い。冒険者のほうが割引があってお得だが、冒険者以外でも食堂や売店は使えるな。
図書室なんかは冒険者専用だな。でもこの講習会を受けた君達は図書室はいつでも使えるようになるから、ぜひ利用してほしい。文字が読めない人向けに、文字を覚えるための本もあるからな。そうだな、読み書きができるほうができる仕事が増えるぞ。
他にも色んな細々したサービスがあって、その地域の特色のあるものをやってる支店もある。その辺は君達が冒険者になった時に実際に見て回るといい。
ん? 冒険者ギルドじゃなくて職員にはどうやったらなれるかって? えーっと、どうやったらなれるの? アベル、パス!」
「そっか、冒険者になるのは簡単だけど、職員のほうはかなり厳しいし、募集してる場所も限られてるからあまり知られてないよね。冒険者ギルドの職員になるには、難しい採用試験を突破しなきゃいけないんだ。
その試験を突破するには、たくさんの知識とそれなりの戦闘力が必要なんだ。もしもの時、職員も一緒に戦うためであり、態度の悪い冒険者をなだめるためにね。
それに加えて依頼主と冒険者の双方とたくさんの交渉をしないといけないので、世間の常識は当然、経済や政治の仕組み、法律についての知識もないといけないんだ
ふふふ、びっくりした? 受付で暇そうにしてる職員も実はすごいんだよ?
そうだね、それだけのことを一人で学ぶのは難しいね。王都だと王立学園、地方なら領立の学園、それらの役人系のコースで学ばないと難しいね。うん、家にお金がないと少し厳しいね。そのせいでギルド職員は貴族出身者が多いんだ。
だけど勉強をしたい人のために奨学金制度があって、お金がなくても専門性の高い学校に通える制度があるんだ。もし君達にやる気があるなら、お役所に行ってごらん。
有能な人材は身分なんか関係なしにどこにでもいるから、取りこぼすのはもったいないからね。やる気があるならぜひチャレンジしてみてね。
うん? お役所には意地悪な大人がいる? へー、その話後で詳しく聞かせてほしいな」
「冒険者ギルドの職員になるのは大変そうだなぁ。職員になってからも大変そうだしな。奨学金で学校に行けるのかー、ギルドの職員にはなりたくないけど学校に行ってみたかったなー」
「グランは学校に行ってないわりに物知りだよね。算術も得意だし、語学以外なら知識も多いし、時々専門職じゃないと知らないような難しいこと知ってるし、どこでそんなこと覚えてきたのか不思議すぎるよ」
「お、おう、冒険者ギルドの講習とか本? 後は遠くからきた旅人や商人? うむ、俺は職員になれるほど勉強はしなかったけど、それでも冒険者ギルドの講習や図書室で読んだ本でたくさんのことを学べて、それは今でもすごく役に立っているし、そのおかげで命拾いをしたこともあるからな。
それから遠くからくる旅人は知らないことを知る切っ掛けになるからな。人と関わる力は大事だぞぉ! そう、みんな仲良し! 楽しく話して、楽しく学んで、快適冒険者ライフ!! 君達が将来冒険者になってくれることを楽しみにしているぞ!!
それじゃ講義はここまでにして、ちびっ子冒険者体験会お待ちかねの、一日冒険者の時間だぞー。これからギルドの外に出て、現役冒険者が働いているところを見学するぞー。そして最後にみんなで冒険者の仕事をやってみような! よーし、じゃあこれから冒険者の仕事場を案内するけど、ちゃんと指示に従って行動してよ」
「冒険者の規則や現場での指示の基本はね、安全のためなんだよ。そう、規則を破ったり現場の指示に従わなかったりすると、そのツケは自分に返ってくるんだ。時にはその代償は君達の命になることもあるからね。
ふふふ……命は一つしかないからね、でしょ? 命を代償にしたくないよね? 優秀な冒険者は命を代償にするような行動はしないんだよ。優秀な君達は、命を代償にするような行動はしないよね? うんうん、良い子ばかりだね。ん? 俺が言っても説得力に欠ける? うるさいな、あの頃は俺も若かったんだよ、今でも若いけどって……ん? うわっ!? ギルド長!?」
「うげ!? ギルド長がなんでここに!? ちびっ子冒険者体験会の見物? 新しい試みだからギルド長会議で話し合うために現場の視察? ついでに、野外体験会の護衛と見張り? へ、へぇ~、ギルド長が直々に護衛なんてココロヅヨイナー。ドラゴンが突っ込んできても大丈夫! みたいな?
いいか、よく覚えておくんだ。あのおじさんが王都冒険者ギルドのギルド長だ。めちゃめちゃ強いから逆らったらダメだぞ? ん? お兄さん? あー、見た目だけ、見た目だけ。イケメンじゃなくてイケオジだな確か四十代だよ。その通り! 君達のお父さんお母さんよりも年上! もしかしたらお爺ちゃ……ヒッ!?
なんか飛んできた! ギルド長、なんすかその武器!? 剣の刃の上に魔力の弾を撃ち出す筒が付いてる? え? 暴発した? やだ、カッコイイ……でも屋内でそんな武器を抜かないで下さいよ……、ほら黒板にヒビが入ったじゃないですか? え? 後で修理しとけ? あ、はい、合成スキルでくっつけときますね」
【冒険者ギルドの仕事とギルド職員】
・素材の売買
依頼とは関係なく買い取ってくれる。
それを売ることにより利益を上げている。
・講習会
冒険者向けの講習会だが、受講料を払えば冒険者以外も参加できる。
一般人向けに護身術や防犯の講習会もやっている。
・治安維持
犯罪者を拘束することができる。
・郵送、貯金、飲食、販売などのサービスもある
・冒険者ギルド職員になるには難しい試験を突破しなければならない。
学園で学ばないと厳しいため、職員には貴族などの裕福層出身者が多い。
奨学金制度もある。
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