第6話◆冒険者ギルド――ランクとギルドカード

「なんか、わらわら人が集まって来ちゃったよ? ダメだよ、このクッキーは俺のだからね、あげないよ! シッシッ!」


「クッキーくらいならマジックバッグから出せばいくらでもあるから、小腹が減ってるなら摘まんでいっていいぞ」


「まぁた、そうやって子犬を餌付けするかのごとく新人を餌付けしていくー」


「さっきの講習に来てた人達かな? なんだみんな講習が終わってから自習か? 勉強熱心だなー。

 あぁ、次の講習の手続き待ち? そうだな、講習を受けると登録情報にどんどん記録されていくからな。そそ、ギルドに登録した情報はギルドカードを受付に出すと確認してもらえるようになってるな。

 このユーラティア王国では見たことないけど、他所の国にはカードをかざして魔力で本人確認をすると、自動的に登録されてる情報を見せてくれる魔道具が設置されてるとこもあるぞ。

 魔道具関連は西の諸国のほうがユーラティアより進んでるからそっちなら設置されるとこもありそうだな」


「西の方は国土が狭い国が多いから、農業に限界があって技術産業が発達している国が多いんだ。そそ、うちから農作物を輸入する代わりに魔道具やその技術を輸出してるね。

 うん、うちが農作物の輸出をキュッとすると大変なことになっちゃうね。あとあっち側はちょいちょい戦争もあるから、西の方へ行く時……西に限らず他の国に行く時は近隣諸国との外交状況をちゃんと調べて行くんだよ」


「うむ、うっかり外国に行って戻って来ようと思ったら戦争が始まって入国審査が厳しくなって、冒険者ランクが足りなくて入国税めちゃくちゃ取られるとかあるからな。

 それと変な国に行くと冒険者を戦争に駆り出そうとする国もあるから気を付けるんだ。本来それは国際条約で禁止されているのだが、国によっては冒険者ギルドがほぼ国営状態になっているので外国に行く時はよく調べてから行くんだ。

 冒険者ギルドは国境を跨いだ組織なので権力の影響を受けにくいが、全く受けないわけではない。ユーラティアは比較的冒険者ギルドの権利は守られているほうだな」


「戦争が始まると入国審査が厳しくなるから、身分証としてカードを作りやすい冒険者はランクが低いと審査が厳しくなって入国税も跳ね上がるんだ。

 魔力認証で同じ人物が重複して登録できないようになっているし、一度登録を取り消してまた登録しようとしても、過去の記録が保存されてるからね。冒険者ギルドは誰でも簡単に登録できるから犯罪防止のためだね」


「どこのギルドのカードもそうだが、ギルドカードは身分証になるからな。魔力証明で他人が使うとすぐバレる仕組みにはなってるけど、なくすと再発行は高いからな。

 ん? 他国にスムーズに行くにはどのくらいのランクが必要かって? そうだなぁ、友好国ならCなら充分かな。安定して出入りしようと思ったらBくらい? もちろんそれ以下でも出入りできるけど、審査に時間がかかって入国税も少し高くなるからな」


「そうだねぇ、東のシランドルとは長年の友好国だからDくらいで充分行き来できるけど、あっちは強い魔物が多いから気を付けるんだよ。

 西の方は小国が固まってて小競り合いも多いから情勢が悪い時はCでも少し税金は高いね。拠点から離れた場所の仕事をするなら最低Dくらいはほしいかな?」


「だなー、ランクのことは初心者講習で習ってると思うけど、だいたいDランクで一人前というか安定して稼げて尚且つ、ギルドカードが身分証として安定してくるランクだな。Dまでいけば国内の町に入る時の通行税がすごく安くなって遠方の仕事がしやすくなるぞ」


「大きな町の出入りや大きな街道にある宿場町は通行税や利用税がかかるとこが多いからね。これも領主の収入以外にも治安維持上の理由があるんだよ。だから各種ギルドのランクが上がって信用があると、こういう治安維持の意味が含まれている税金は少しだけ安くなるんだ。

 それにランクが上がると冒険者ギルドのサービスも安く使えるようになるからね。お金を預かってくれるサービスはFランクから使えるね。

 Dランクからはギルド支部間での郵送サービスも使えるようになるし、Bランクで発送地を相手に知らせずに荷物を発送できたりする。送金サービスはちょっと高いけどDからだね。出稼ぎに来てるならギルドから家族に仕送りができるよ」


「そういう意味でもDまで上げると楽になるな。ランクはGから始まってF、E~とAまで上に上がって、Aの上がSになってるのは習っているよな?

 Gは本当に研修期間。ランクと受注の仕組みを知る期間だから、講習を受けて二つくらい依頼を成功したらすぐにFになる。FとEは報酬も安いけど町の中や周辺の安全な仕事が多いな。ここまで期間は、冒険者ギルドの初級系講習に初心者割引が適応されるから、どんどん受けておくんだぞ」


「割引があるっていっても何でもかんでも受けてると、そのランクの収入だと生活費が足りなくなるからほどほどにね? 講習受けすぎて、食費や宿泊費がなくなって、道端の雑草を料理しながら野宿するような冒険者になったらダメだよ。お金の使い方は計画的にね」


「雑草も食べられるものが多いからな、知っていて損はないぞ。何事も知識と経験だ。

 ん? Dまで上がるのにどのくらいかかるかって? それは人によるなー、戦闘経験や戦闘向きのスキルがあればそう時間はかからないだろう。

 しかし冒険者は戦闘力だけが全てじゃない、経験や知識も必要だ。収入的にはやくDランクになりたいと思うだろうが、ランクが上がれば危険な依頼も増えてくる。自分のランクに対して前後一ランクの依頼が受けることができるから、自分の実力を過信しないで依頼を選ぶんだ。命は金に代えられないからな。

 そこら辺は実績を見て、やばそうなのは職員さんが止めに入るからそういう時は素直に諦めるんだぞ? 職員さんはどんなに可愛い女の人でもCランク以上の実力があるからな。

 ほらあそこの巨乳のお姉さんとか、ああ見えてAランクだし、右手で軽くリンゴを握り潰すゴリ……うっわ、めっちゃ睨まれた!」


「あー、これは素行評価にマイナス査定を付けられたねぇ。口は災いの元、君達も覚えておくといいよ。素行が悪いと冒険者の評価にマイナスを付けられて、あまりに素行が悪すぎるとランクや報酬のダウンもあるから気を付けてね。

 ランクは上にいくほど素行評価の割合が高くなるから、冒険者活動はお行儀良くやるんだよ。何でかって? 力だけある悪い人って迷惑でしょ?

 自分の力に溺れても、振り回されてもダメなんだよ。強い魔物がいる場所に行けるようになるってことは、それだけ自分も他人も命の危険もあるからね?

 そ、無駄に他人と諍いを起こすようじゃ、一回の失敗で全滅の危険のあるような場所に行く許可は出せないってこと」


「性格に難ありでAランクのランクアップ試験がずっと受けられなかったアベルが言うとやっぱり説得力があるなー」


「うるさいよ!! グランだってうっかりが過ぎるってランクアップの度に言われてるでしょ!! むしろランクが上がる毎にうっかりと非常識も一緒にランクアップしてるでしょ!!」






【冒険者カードとランク】


 ・冒険者ランク

 G→チュートリアル期間

 F、E→初心者(ここまでは初級講習に割引が適応される)

 D、C→中級者(Dランクで脱初心者)

 B、A→上級者

 S→ほとんどいない伝説級


 ランクアップには素行も影響。

 素行が悪いとランクや報酬が下がることもある。


 ・冒険者カード

 なくすと再発行の手数料は高い。

 冒険者ギルドで自分のカードに登録されている情報を確認できる。

 ランクが上がるほどギルドカードの身分証としての価値が上がり、通行税や利用税など治安維持の意味が含まれる税金が少し安くなる。

 戦争時は入国審査が厳しくなり、ランクが低いと入国税も上がる。

 冒険者ギルドの職員はCランク以上の実力。


 ・冒険者ギルドサービス

 お金の預かりサービス(Fランク~)

 ギルド支部間郵送サービス(Bランク以上で発送地非通知可能)

 送金サービス(Dランク~)

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