第5話◆冒険者ギルド――施設

「あぁ、君達はさっきの講義にいた子達だな? ん? 何をしてるかって? 今日の経費の申請と報酬を待ちながら、小腹が空いたからおやつを食べてたんだ。ん? チーズグラタンはおやつというか重すぎる? どこで買えるかって? ああ、これは俺が自分で作ってしゅ……」


「はーいはいはいはいはい、食べ物はあそこの売店で買えるよ。これはグランが作った料理を"マジックバッグ"で持ち込んで来たものだけどね!!

 ギルドの受付ロビーの一画に設けられたテーブルのある場所は、食事をしてもいいし自習をしてもいいんだよ。そ、フリースペースってやつね。混み合ってる時にあんま長く居座ると邪魔になるからほどほどにだけどね。食事は持ち込んでもいいし、売店でも買えるよ。

 あとギルドによっては食堂もあるし、だいたい冒険者ギルドの近くには冒険者向けの食堂があって、良心的な値段で量も多いからおすすめだよ。

 ん? ロビーの中がチーズの香りで満たされていてお腹が空く? 飯テロ? うん、それはグランの常識ではよくあることだから気にしないでいいよ。ふふ、このじっとりとした羨ましそうな視線を浴びながら食べるおやつは最高だよね」


「何言ってんだコイツ。お腹空いたから自分達も何か食べてく? 相席でいいならそこの席が空いてるぞ? うん、相席ついでにフライドポテトでも摘まんでいくか? ああ、なくなったらまた揚げればいいだけだからな」


「まぁた、そうやって新人を餌付けしてるー。いい? グランに餌付けされすぎると、保存食とか野営で適当に焼いただけの肉とかが感情的な理由で食べられなくなるからね? 美味しいものに慣れすぎるのはよくないよ?

 え? 俺? 俺はグランの親友で相棒だからいいの。うん、絶対に譲らないからね。ふふふ、そうだよ、余計なことを望まないのが身のためなのは貴族も冒険者も同じだよ。ふふふふふふふ、わかったらそこの売店で適当に何か買っておいで」






「お、売店で買って来たのか? 王都のギルドは人が多いから売店は商品の入れ替わりが激しくて内容も充実してるからな。

 ああ、この建物の隣に大きな建物があったろ? あれも王都の冒険者ギルドの建物で別館だ。あっちの一階には冒険者向けレストランもあるし、上の階には冒険者向けのショップが入ってる。新品もあるけど、中古品も安く売ってて時々掘り出し物もあるから覗いてみるといい。うん、もちろん自分がいらなくなった装備品とかも買い取ってくれるぞ。

 そうだな、せっかくだから飯を食いながらギルドの施設の説明でもするか」


「飯って言った。おやつじゃなくて飯って言った。だよね、チーズグラタンなんてどう考えてもおやつじゃないよね」


「うるせぇぞ、昼飯と晩飯の間に食べる間食、つまり飯であったとしても実質おやつだ。おっと、ギルドの施設の説明だったな。

 この王都のギルドもそうだが、どこのギルドも入ってすぐに受付ロビーがある。まぁ、受付は説明しなくてもわかるな。依頼の受注や報酬の支払いを含めた事務手続きをやってもらうとこだ。

 おう、あそこの掲示板に依頼が貼り出されてる依頼の紙を剥がして受付に持っていくやつな。朝の依頼の貼り出される時間はいい依頼を取り合ってケンカにもなるから気を付けろよ。他にも講習とか資格試験の申し込みも受付からだな。

 小さいギルドは素材の買い取りカウンターが受付と一緒になってたりもするが、王都のギルドは別だな。おっと、どこの冒険者ギルドもそうだが二メートルを超えるものは、解体場に大型素材専用の窓口があるからそこに持っていくんだ」


「小型のものでも大量に持ち込む時は、そっちの窓口に行くほうがいいね。基準? そうだね、常識的に考えてこれは屋内に置くのは無理だろうって量は大型の窓口へ行くんだよ?

 いい? グランもだよ? 薬草ばっかりだから大丈夫じゃないよ? 大型草食獣の餌かってくらいの量をカウンターで出すと迷惑だからね?」


「お、おう。最近は迷惑はかけてないと思う。アベルの言う通り量が多いものも大型用の窓口がいいな。

 ギルドが買い取った素材のストックは、解体場の近くにある素材保管倉庫にぶち込まれることが多からな。それで冒険者をしてるとやる機会も多い解体だが、小型のものは狩ったその場でもできるし、宿なんかにも魔物を解体できる場所があるとこもあるな。そういうとこは解体した魔物をお裾分けしたり、利用料やチップを渡したりすれば快く貸してくれる」


「王都に家がある人はいいけどない人は常宿を決めないといけないからね。長く滞在する宿を決める時は冒険者活動に便利なサービスや施設があるとこをえらぶんだよ。

 解体場や調理場を貸してもらえるとこがいいね。ペットや騎獣がいるならそれも可能か確認するんだよ。時々ペットは室内に連れ込めない宿もあるから確認するんだよ? グランもだよ? 変な動物をホイホイ持って帰ってくるんじゃないよ?」


「そうだな、トイレの問題もあるし毛の生えてるペットは部屋に毛が飛び散るからな。まぁ、爬虫類系とか昆虫系なら毛は大丈夫なので問題――」


「あるよ! ありすぎるよ!! トカゲも虫も部屋から逃げて大騒ぎになったことあるでしょ!!

 宿やにペットを持ち込む時は宿の許可を取る! 絶対に脱走されないようにする!! 許可を取ってもイモムシ系や蛇は禁止!! いや、虫はダメ! よくわからない謎生物もダメ! ペットの持ち込みは一般常識を守って!!

 よくわからない魔物を拾ったら冒険者ギルドで確認すること!! いいね!? グランもだよ!!」


「ええー、イモムシ君可愛いのに……。そうだ、解体場の話だったな。

 大型の魔物を解体するのは難しいよな。そういう時は冒険者ギルドの解体場。手数料を払えば解体もしてくれる、もしくは解体場を借りて自分で解体してもいい。

 後者のほうが少し安いな。つっても手数料はその素材を売った金で払えるからな。解体場を借りて自分で解体する場合、解体場の機具も貸してくれるし、手数料はかかるが職員さんに解体のアシスタントや指導を頼むこともできる。

 でかい魔物の解体は施設がない場所で無理にやるより、専用の場所でやったほうが時間もかからないし、素材も傷まず綺麗にばらせるから結果的に儲けは多くなると思うぞ。解体は冒険者をやっていると絶対必要なことだし、やれば覚えていくと思うが、一度くらい解体のプロに指導してもらうのがいいな。

 ん? 俺? まぁできなくはないけど、やっぱ毎日解体してる本職の人のほうが圧倒的に上手いし、専門的な道具や新しい道具についても詳しいからな」


「イモムシ以外、グランが珍しく正しいことしか言ってない」


「だまらっしゃい、俺だってそろそろベテラン冒険者だからな、後輩の指導くらいちゃんとできるんだよ」





【冒険者ギルドの施設】

・受付ロビー

 受付カウンターで依頼の受注、報酬の支払いの他講習や資格試験の申し込みができる。

 掲示板に貼ってある依頼を剥がしてカウンターに持っていって受付。

 ロビーのフリースペースは飲食可で自習に使ってもよい。

 ロビーには売店があり買い物ができるようになっている。


・素材の買い取りと解体場

 素材は買い取りカウンターで買い取ってもらえるが、二メートルを超えるもの、量が多いものは解体場にある大型素材用の窓口へ。

 手数料を払えば解体場で解体してもらえる。

 有料だが解体場を借りて自分で解体することもでき、解体用の機具を借りることができる。

 追加料金で職員さんにアシスタントや指導を頼むこともできる。



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