第2話◆ポーション――機具と薬草
「それじゃまずは道具の説明だ。今回は冒険者ギルドの売店でも売ってる、携帯用の薬調合機具セットを貸し出すからな。
野営で使う携帯コンロとこれがあればいつでもどこでも簡単な調薬作業ができるから、一つ持っておけば気が向いた時にどこでもポーションが作れるぞ。宿に泊まってる人なら宿の部屋でもできるから、仕事が終わった後に練習も気軽にできるぞ」
「宿屋でやる時はちゃんと許可を取ってやろうね。野営用の携帯コンロは火の魔石が熱源になってて、炎は出ない仕組みだから火事にはなりにくいけど、調薬作業は臭いが出るし零すと部屋が汚れるからね。臭いが部屋に染みついたり、零して部屋を汚したりすると当然清掃代を取られるからね。
ホント今まで何回グランの部屋の掃除手伝ったことやら……」
「お、おう。宿の部屋でやる時は注意も必要だな。まぁ宿によっては宿泊者用の共同キッチンがあったり、厨房や作業場を貸してくれたりするところもあるから宿で聞いてみるのが一番だな。
それじゃ携帯用の調合道具に注目! 鍋と匙とすり鉢とすり棒。重ねてしまえるようになってて持ち歩くのにも邪魔にならない。値段もそんなに高くないので余裕があったら買っておくといいかな。
でも見ての通り小さいので、いっきにたくさんは作れないな。普通の調理器具でも作れるので、家に調理器具がある人はそれでやってもいいぞ。それならたくさん作れるしな」
「調理器具でやってもいいけど、臭いと汚れの問題はあるから、実家暮らしの人なら使う前にちゃんと家族の確認を取るんだよ? あと臭いとか色の強い素材を扱う時は周囲への影響も考えてからやるんだよ。
作業した後の片付けも忘れないようにね。他の人も使う場所に道具や材料を置きっぱなしにしない、いいね? 夜中だから誰も来ないだろうって、下宿の共同キッチンで魔物の頭を干したりしたらダメだよ。風通しがいいからって部屋の窓際に吊すのダメ!!」
「お、おう。知らない人が見たらびっくりして大騒ぎになるから共同の台所や部屋の窓際に生首系の素材を干すのはやめた方がいい。治安部に通報されることもあるからな、気を付けるんだぞ」
「もちろんそんな騒ぎを起こしたら冒険者としての評価にマイナス査定が付くから、効率と一緒に常識も考えて行動すること」
「おっと、前置きが長くなったが今日は簡単なポーションを作ってもらう。じゃあ薬調合機具のセットの中身を確認するぞ。
目盛り付き匙、これは計量用だな。混ぜ棒、材料を混ぜ合わせる時はこれを使う。すり鉢とすり棒、それから鍋、これは説明はいらないな。漏斗とお玉は瓶にポーションを入れる時に使う。
で、今日みんなに調合してもらうのはこのヨモ草、毒消しポーションの材料だ」
「うわ……すごい量。それ全部採って来たの?」
「ヨモ草はその辺に生えてるから日頃から摘んで溜めてたやつだよ。ギルドが講習で使った分は経費として買い上げてくれるっていうから……ごにょごにょ。
今日使う材料費と瓶代は講習費用の中に含まれているので、心置きなく失敗をしていいぞ」
「そうだね、ヨモ草ならその辺にいっぱい生えてるからね。普通はギルドでも買い取ってくれないからね」
「うむ、その辺にたくさん生えていて一見雑草に見えるような植物が、実はポーションの材料ということはよくある。このヨモ草はその代表だな。他にも道端に生えている薬草はたくさんあって、効果は低いが扱いも簡単なものが多い。雑草みたいな扱いだからギルドも買い取ってくれないので、見つけた時に回収しておけば気兼ねなくポーションの練習に使えるぞ」
「確かに歩いて移動している時に道端に雑草のような薬草はよく生えてるね。だけど回収しないともったいないって片っ端から回収しても、保存手段がなければ無駄になるし、回収してると先に進めないから道草はほどほどにね」
「そ、そうだな……何事もほどほどにだな。まぁ、どうせいつでもその辺で手に入るからな。
もしこういった道端で手に入る雑草に見える薬草に興味があったら、俺の書いた"道草ポーション"ってハンドブックがギルドの資料室に置いてあるから読んでみてくれ。気にいったら売店でも売ってるぞ」
「え? グラン、本なんて出してたの?」
「うん、お小遣い稼ぎ。こんな風に調合を覚えると冒険者のついでに小銭稼ぎもできるからな。
それじゃヨモ草が全員に行き渡ったらやるぞー、ヨモ草と一緒にこの陽輝石の粉も一緒に渡すぞ。アベル、全員にこれを配ってくれ」
「うわ、また冒険者ギルドが買い取りを嫌がる素材だ……それじゃ、順番に配るね。
とっても珍しい空間魔法で君達の手元に直接届けるから、全員に行き渡るまで大人しくしててね。うん、物理的に大人しくさせられるのは嫌でしょ? そうそう、良い子で待てしとくんだよ」
「それじゃ、材料を配っている間に触媒の説明だ。これは陽輝石、その辺の道端に転がっていてすごく手に入れやすい調合触媒だ。
調合用触媒は効果の低い素材でポーションを作る時には素材の効果を底上げするために、触媒と呼ばれる魔力を底上げする素材を使うことがある。効果の低い素材だけでなく、値段の高い素材を使う時も触媒を混ぜることによって量を水増ししつつ効果を維持することができる。
素材だけで調合するものもあるが、ほとんどの場合この触媒を使って効果の底上げをする。主な触媒に今回使う陽輝石のような鉱物や魔物の骨や牙角爪などで、これをすり潰して粉にして使う。今回はすでに粉にしたものを渡すよ。
ものによって相性があるのでそこは調合する前に必ず調べること。相性が悪い触媒を使うと品質が下がることがあるし、場合によっては悪い副作用が付くことがあるので要注意だ。素材は使う時に足らないと困るからな。調合をやるなら使いそうな素材を覚えて残しておくといいぞ」
「薬調合をするなら魔物を解体した時に骨を少し取っておくのもいいね。でも骨は重いしかさばるから集めすぎると邪魔だから、自分が持てる量をよく考えて残しておくんだよ。
骨だけじゃなくて他の素材も同じだよ。もったいないって全部残してたらいざという時、ものが持てなくなるからね。はい、全員に材料は行き渡ったかな?」
「行き渡ったら、実際に調合をするぞぉ。これから実際にやってみて興味を持ったら、もっと上級の講習にもぜひ参加してみてくれ。
ん? 上のランクの講習も俺とアベルがやるのかって? さぁ? まぁ教えられる範囲なら依頼がきたらやるかもな? ん? 指名? ああ、指名が多かったら講習の依頼は来るかもな」
【ポーション作成の基本のまとめ】
・携帯用薬調合機具セット――冒険者ギルドの売店やポーション屋、冒険者向け用具店で 購入可能
計量目盛り付き匙、混ぜ棒、すり棒、すり鉢、小型鍋、漏斗、小型お玉
・素材+触媒→ポーション
触媒とはポーションの効果の底上げ素材
鉱石、魔物の骨、牙、角、爪などを粉にして使う。
素材と混ぜてポーションの効果の底上ができる。
素材との相性がある。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます