第3話◆ポーション――品質と売り方
「よっし、みんなちゃんとポーションは作れたな。鑑定スキルのある者は自分の作ったポーションを鑑定してみるといい。できなかったらアベルにやってもらうといい。助手だからな、コキ使っていいぞ」
「うん、できない子は俺がやってあげるよ。でも、できる子はちゃんと自分でやるんだよ。
ふふ、嘘はダメだよ? 俺の鑑定は何でもお見通しだからね? やましいことを追求されたくない子は嘘をついたらダメだよ? うん、良い子だね? それじゃ、鑑定スキルがない子は素直に手を挙げてね」
「鑑定をしてレアリティとか品質とか効果とかランクとしてわかれば問題ない。わからなかったらアベルに確認してもらってくれ。できれば自分で鑑定できるくらいに鑑定スキルを使えるようにしておけば、冒険者生活が楽になるぞ。
ポーションは効果は一番上がS、その下はAからFまであり、その効果の程度によって三段階にランクわけされる。効果がC以上ならハイポーション、Aを超えるとエクストラポーションだ。効果のランクはだいたいはレアリティに近いランクになるはずだ。
この辺は素材のランクや質とも密接な関係になるので、素材はお財布と相談して自分に合うものを選ぶんだ。
そして品質、これは効果に直結するからな。レアリティが低い素材でも品質が良ければ、できたものの効果は高くなる。またその逆もあるから品質は大事だぞぉ。
ポーションの品質は制作者の技量に大きく左右されるから、ポーション作りに励むならその腕を磨いて品質は特上を狙っていくんだ」
「って、グランは言ってるけど、なんでもかんでも特上品質を狙うのは難しいからね? 上品質が作れるならそのランクでは充分な腕前だから、特上が安定しないって落ち込む必要はないからね。
特上にこだわらず状況によっては一つ上のランクの素材を使う選択肢も忘れないようにね。安いもので良いもを作れるのは良いことだけど、それだけじゃなくてそれに費やす時間や量の効率もちゃんと考えるんだよ」
「そうだな、その辺は調合を続けていると自分のスタイルが見つかるだろう。興味があったらこのままポーションについて学んでみるといい、ちょっとした小遣い稼ぎになるからな」
「うんうん、手に職があるのは悪いことじゃないし、もし怪我をして休むことになったり冒険者を続けられなくなったりしても、他にできることがあれば収入には困らないからね。
グランはあれこれ手を出しすぎだけど、自分のペースで冒険者をしながらできることを学んでみるといいよ。知識は場所を取らないからね。その知識がいつか君達を助けてくれるはずだよ」
「うっわ、アベルがド正論を言ってる」
「グラン、何か言った? 講義中に私語はよくないよ?」
「うぇ、何も言ってません。……っと、今日の講習もそろそろ終わりの時間だな、何か質問はあるか? ん? ポーションを売るのはどうしたらいいか?
そうだな、ポーションや薬を正規のルートで買い取ってもらうには、薬師の資格が必要だ。魔法薬師がポーションで薬師が一般薬の資格になる。ポーションと一般薬の違いはわかるよな?
そうそう、魔法薬といわれる魔力を多く含み、効果が高いものがポーションだ。こっちは効果が高く即効性がある分、含んでる魔力が多いから魔力抵抗の低いものには魔力酔いや副作用が出やすい。
一般薬――薬っていったらこちらを指す。薬も副作用はあるものは多いが、ポーションのように魔力酔いはない。病気の類はポーションでは直せないから薬の領域だな」
「薬の中にはポーションに近いものもあって線引きが曖昧なものもあるけど、そこはギルドや薬屋にいる専門の鑑定士が判別してくれるよ。わからなかったらその場で専門家に聞いてみるのがいいね。
自分で作ってただの塗り薬だとか飲み薬だと思っていても、ポーションに近い効果のものの時もあるからね。ただ効果が高いだけじゃなくて人によっては魔力酔いや副作用の危険もあるから、魔法薬や薬の効果は自分の先入観だけで判断しないこと。違和感があれば詳しい人や冒険者ギルドの窓口で確認してもらうこと」
「慣れてくると感覚が麻痺しやすいから、少しでも違和感がある時は他人の意見を聞いてみるのがいいな。で、調合の資格を取ったらその資格に応じたものを売ることができるようになる。その気になれば薬屋だって夢じゃないぞ」
「でもここにいるほとんどの人は自分で店を構えるつもりはないよね?」
「薬屋を開くまでじゃなくてもポーションを売ることはできるからな。
どこで売るかっていうと一つは冒険者ギルド。王都の冒険者ギルドみたいなとこは売店に専門の買い取りカウンター、小規模な冒険者ギルドなら素材の買い取り窓口で作ったポーションの買い取りをしている。
冒険者ギルド以外なら商業ギルド、ここも買い取り窓口があるが冒険者なら冒険者ギルドでいいよな。それから個人の商店でも買い取ってくれる。
ギルドより高く買い取ってくれるとこもあるが、店の客層と売れ行きに合わせての買い取りなので買い取ってもらえないことある。商店の類は時々悪質な奴もいるから気を付けるんだぞ?」
「そうそう、悪い奴に騙されたり搾取されたりしないように、知識を身につけて自己防衛をするんだよ。
いいかい? 騙す方が悪いのは当然だけど、だからといって自己防衛しないと泣くのは自分だからね? 悪いことをする奴が悪いということと、自分で自分の身を守るのは別の話だからね」
「そうだな、せっこい商人や役人はいるからな。そいつらに足元を見られないためにも知識は大事だぞ。
それともう一つ、よく町でバザーをやってるだろ? あのバザーは商業ギルドに登録すると自分で露店を出すことができる。一番低いランクで会費も安いから、何か売りたいものがあったら登録して参加してみるのもいいだろう。
まぁこっちは薬師の資格がなくても売れるけど、薬の類は資格があった方がやっぱり高く売れる」
「そうだね、バザーでの取り引きは自己責任だから、売り物に保証がされていないからね。正規の店で売られているポーションは制作者と品質がわかるように管理されてるんだ。ちょっと高い分、安心を売っているってことだよ。
そそ、もし制作者や品質を偽って販売しても、薬師の資格を管理している薬師ギルドに問い合わせればわかるようになってるんだよ。その辺の仕組みは薬師の資格を取った時に詳しく教えてもらえるよ。
ちなみに自分で店を構えようと思うと薬師としての資格とは別に、商業ギルドのランクを店が出せるまで上げないといけないからね」
「各ギルドのランクについてはそのギルドの窓口で聞けるし、ギルド同士で横の繋がりもあるから、冒険者ギルドロビーにある広報用の掲示板に他のギルドの広告が貼ってあると思うので見てみるといい。
それじゃ今日の講習はここまでかな? 次回があったらまたよろしく」
【ポーションのランクと販売方法】
・ポーションのランク
効果Cランク以上→ハイポーション
効果Aランク以上→エクストラポーション
効果はレアリティに近いものになるが、品質によって上下する。
・ポーションと薬の違い
ポーションは魔法薬とも呼ばれ効果が高く即効性もあるが、魔力抵抗が低いと魔力酔いをしやすく、副作用も出やすくなる。
ポーションでは病気は治せない。
一般薬、薬というとだいたいこちらを指す。効果は緩やかなものが多いが、ポーションのように魔力酔いはしない。
病気の治療は薬の領域。
・作ったポーションの売り方
冒険者ギルドや商業ギルドで買い取ってもらえる。
個人商店でも買い取ってもらえるが、何を買い取ってもらえるかは店によってばらつきがある。悪質商店に注意。
商業ギルドに登録するとバザーでも売ることができる。
自分で薬屋を構える場合薬師の資格以外に、商業ギルドのランクを店が出せるまで上げないといけない。
・バザーについて
商業ギルドに登録すると一番低いランクで露店を出すことができる。
バザーでの取り引きは自己責任。
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