転生したら器用貧乏な勇者だったので世界観をゆっくり解説してみた
えりまし圭多
第1話◆ポーション――基礎知識
「はい、どうも。主に素材や魔物の基礎知識と冒険者向け便利な生産技術の講義を担当する、臨時講師のグランだ、よろしく。こっちは、助手のアベル。
あ? アベルに講義させろ? そこの女子うるせぇぞ!? コイツは勝手について来ただけの助手!! 講師は俺!! いいね!? あー、あー、わかったわかった、とりあえずアベルに自己紹介させるから、少し黙れ」
「はーい、アベルだよ。俺はグランの助手、グランが変なことを君達に教えないか見張る役だから、俺に質問しても無駄だよー。難しいことは全部グランに聞いてね。魔法のことは魔法の授業で教えるからね。
え? ああ、俺のこと? 君、貴族の子だっけ? 余計な詮索が身を滅ぼすのは貴族も冒険者も同じだからね、気をつけてね。
じゃあ、初心者冒険者向けの講義を受けに来た君達に、冒険者としての基礎知識をグランが教えてくれるからね、常識と照らし合わせて正しい知識だけを身につけて帰ってね。物事を正しく見定める能力は生き残るために重要だからね、グランの講義を通してそれをしっかり身につけてね」
「というわけで、今日の授業を始めるぞ。記念すべき第一回はポーションについてだ。
ポーションとは一般的に魔法薬のことを指す、ここまではいいな? では魔法薬とそれ以外の薬の違いはわかるよな?
うん、そうそう、魔力使って調合して魔力を帯びた薬が魔法薬、魔力を帯びていない薬は魔法薬とは言わない。魔法薬はその性質上、液体のものが多いためポーションと呼ばれることが多いが、中には固形のものや粒状の魔法薬もある。
ポーションは俺達冒険者にとって欠かせないものだ、回復魔法があると言っても回復魔法が使えない時、間に合わない時など不測の事態は必ず起こる。不測の事態に備えを用意することはいつか必ず君達の生死を分けることになる。いいか、備えあれば憂いなしだ。備えはいくらあっても問題ない、冒険者として活動する際、それ以外の時でも必ずもしものことを考えて備えはしっかりしておくんだ」
「はい、今、グランがすごく大事なことを言ったからね。ちゃんと一般常識と照らし合わせて覚えておくんだよ。備えは大事、でも限度も大事。
ポーション、それ以外の薬や消耗品には安全に使用できる期限があるからね。備えすぎて不要な量まで持つ必要はないからね。備える時はその量と使用期限をこまめにチェックして持ち物は常に整理整頓。いざと言う時に古くて使えないものが出てきたら意味がないからね。使う時は古いものから使って新しいものが残るようにするんだよ」
「そうそう、ポーションは時間が経つとどんどん効果が下がっていくんだ。それを防ぐためにポーションは専用の瓶が使われていて、これには"停滞"っていう簡単な時間魔法が付与されているんだ。停滞、つまり時間が停滞するってことで中のものの劣化を遅らせることができるんだ。
付与については付与の講習会でやるからよかったらそっちも受けてみてくれ。知識と技術は場所を取らないからな、講習はどんどん受けておくと冒険者以外でも役に立つぞ」
「グランにしてはすごく常識的なことを言ってる……」
「アベル、うるせぇぞ。おっと話が逸れたな。正規のポーションは専用の保存瓶に入れて未開封の状態で約一年。それ以降は急速に効果が失われるから要注意だ。これは瓶にかかっている停滞の付与が一年ほどしか保たないためと、専用の瓶に入れていても徐々に劣化することは防げないからだ。
それから一度開封したポーションは劣化が速くなるためすぐに使い切ること。勿体ないからと一度開けたものを長い期間残しておくと、劣化して効果が出なかったり、腐ってお腹を壊したりするからな? 冒険者ランクの低いうちはポーションは高く感じるかもしれないが、命は金に代えることができない。いいか? 命に関わるものに勿体ないは禁止だ」
「開封後放置した毒消しポーションでお腹を壊したことがあるグランが言うと妙に説得力あるね」
「アベルは黙って俺が言ったことを黒板に書いてろ。ポーションの有効期限は瓶のもので一年のものが多いが、ものによって差があるので購入の時は期限もよく見て買うこと。そして正規店で売られているポーションには厳しい基準が設けられており品質が保証されており、品質を保証するラベルが張られている。
この基準をクリアしていないものを安く売っている非正規の店や、ラベルを偽造して正規品と偽って売る悪質な店もあるので要注意だ。自己責任ではあるがうっかり粗悪品を掴まされると命に関わるから、少々高く感じるかもしれないが、冒険者ギルドの売店やギルドが指定する店で買うのが安全だ。できれば自分の鑑定スキルを磨き、自分で品質を見抜けるようになるのがいい。
まぁ、冒険者をやっていると自分で素材を集めてポーションを作ったほうが安上がりなので、ポーションを自作している者も多い。ポーション制作者の資格もギルドで取得できて、資格を取ると作ったポーションを買い取ってもらえるようになる。興味があったら窓口で聞いてみるといい」
「グランはすごく簡単そうに言ってるけど、初級はともかく中級以降は試験が難しくなるからね。ポーションにはその効果でランクがあるのはみんな知ってるよね。
ポーション、ハイポーション、エクストラポーション――後者になるほど効果は高くなって、材料もえげつなくなって値段も高くなるよ。それで薬調合の資格も初級はポーションだけ、中級はハイポーションまで、上級はエクストラポーションまで買い取ってもらうことができるよ」
「ポーションのランクの話をしようと思っていたが、今アベルが言った通りだ。効果が高ければ値段も高くなるので、自分に合ったものを選ぶのがいい。ただし、もしもの時のために効果が高めのものを持っておくとお守りになる。
それから、すでに初心者講習で習っていると思うが、ポーションの瓶は使用後捨てずに持って帰ると、ギルドや薬屋、雑貨屋で買い取ってもらえる。これは買い取ったものを浄化し、瓶の魔力を補充して停滞を付与しなおして再利用するためだ。僅かな金額かもしれないが塵も積もれば山となるだ。できれば持って帰って買い取ってもらうほうがいい。
使用後の空き瓶を入れておくポーチを腰にぶら下げておくと楽だぞ。よし、座学は眠くなるからな、説明は程ほどにしてポーション作りの実習に入ろうか」
【ポーションの基礎知識まとめ】
・ポーションにはランクがある。
低:ポーション
中:ハイポーション
高:エクストラポーション
・品質が保証される使用期限は瓶のもので約一年。
ポーションの形状や保存方法によってまちまち。
・正規販売店のポーションの品質は保証されており安全。
非正規店で安いものは売っているが品質の保証はなく使用は自己責任。
中には正規品のラベルを偽造して売っている悪質な店もあるので要注意。
ギルドやギルドが指定した店で買うのが確実。
・薬調合の資格を取得すると自作のポーションを買い取ってもらえる。
資格は初級、中級、上級とあり買い取ってもらえる、ポーションは資格に応じる。
・ポーションの瓶は再利用可能。
ギルドや買い取りをしている店に持ち込むと買い取ってもらえる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます