第32話 昔の事

「——あっちの世界は楽しかったよ」

 

 時刻:不明  天気:不明


 廃れた街を歩きながら、フォレストは言葉を発した。

「あっちの世界で何してきたんですか?」

 隣を歩くリークは、首を傾げながらそう訊く。

「本当は鍵を取りに行く予定だったんだ。だけど、昔の知り合いに会ってね」

「知り合い?」

「識別名——<ネメシス>」

「……あの子、ですか」

 人間界に<ベスティア>を五体放った後、フォレストは魔の神の動力源である「鍵」を取りに人間界にやってきた。

 そこで出会ったのは、昔の知り合いであるピジーだった。

「ああ、やつは……時間を止める能力を手に入れていた」

「……なるほど」

そう言われ、リークは腕を組み考える素振りをする。


 ディークストが治めていた時代では、妖精界と魔界は元々一緒だった。

 フォレストは元々、魔法学校という名の、超能力を身に着けるための学校の講師だった。

 そこで能力を教えていたのが、ピジー。そして、フェアリーだった。


「——おいピジー、そうじゃない。その能力は、もっと気持ちを入れるんだ」

「気持ち?……分かった」

 まだ廃れていなかった学校の放課後。

 ピジーは、フォレストと一緒に能力の最終調整を行っていた。

 フォレストの言う通り、もっと気持ちを入れていく。すると、手から炎が出るようになった。

「わ、できた」

「おお、良いじゃないか。最初は気持ちが大事なんだ」

「なるほど」

「まあ、次第に気持なんか入らなくてもできるようになるけど。とにかく、今日はこれでおしまいだ。それがあれば、進級はできるだろう」

「うん。ありがと」

「気を付けて帰れよ」

 

「——それで、<ネメシス>はどうしたんですか?」

「ああ。奴が撃った弾丸を止めて、リバースしてやった」

「……殺した、って言う事ですか?」

「まあ、そうなるな」

 かなりの銃弾をリバースしたから、恐らく生きていることはないだろう。

 そう思うと、笑いがこみ上げてくる。

「さてと、彼らにエサを与える時間だ」

 気が付けば、大きな城のようなものが見えてきた。

 あれが、彼らが住んでいる家になる。

「そうですね。今日はどうしますか?」

「いつも通り肉にしておけ」

「分かりました」

 そう言って彼らは、城の中に入っていった。






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