一家団欒のロールキャベツ

文重

一家団欒のロールキャベツ

「皆集まって!」

 少し脂肪の乗ったひき肉母さんが招集をかけます。

「そう急かさないでよ。あたしがいないとコクが出ないでしょ」

 タマネギお婆ちゃんはさすが年の功、慌てず騒がず小柄な体を預けてきます。

「つなぎ役は俺に任せてくれよ」

 パン粉叔父さんは、縁の下の力持ち的役割にも満足そうです。

「仕方ないわね、私もつなぎ役をやってあげるわ」

 華やかな表舞台を夢見ていた卵叔母さんも、しぶしぶ皆と行動を共にします。

「味の決め手は僕たちに任せてよ」

 とナツメグ、ローリエ、塩、胡椒のスパイス兄弟たち。

「さあ皆、この胸に飛び込んでおいで!」

 一風呂浴びたキャベツ父さんが包容力のあるところを見せます。長いものには巻かれろというところでしょうか。

「このいぶし銀の底力、刮目せよ!」

 のぼせ気味のコンソメお爺ちゃんも存在感を発揮させます。

「お待たせ~」

 トマト姉さんが最後に鍋にダイブして、これで一家全員揃ったようです。


「いただきます!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一家団欒のロールキャベツ 文重 @fumie0107

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ