第150話

伝説の武器を登場させる度に悩ませられるんだが、有名どころは大体Fa○eに出てるという...弁明になりますが、SNのアニメは見たけどFGOなんて触った事もないのでマジであの作品は意識してないです。

ではどーぞ

――――――――――――――――








感謝の言葉を告げる事すら、出来なかった。

ただただ、無念だった。


彼の魂は、彼の愛する人の元へ辿り着けただろうか。

それを知る術を、俺達は持たない。

だからこそ、人々は祈るのだろう。


だがここに聖職者はいない。

居るのは犯罪者だけである。


俺達は、懲罰部隊なのだから。


それでも、祈らずにはいられなかった。


神は嫌いだ。

主は罪人こそを救うと言うが、俺を救ったのは何時だって人だった。

いや、そもそも。一体全体、一齧りの林檎で、何故全人類が罪人に成り得るのだ。そしてそれは、主に乞う事でしか雪げぬ罪なのか。


分からない、理解出来ない。

故にこそ、俺は神が嫌いだ。


だが、それでも。


「...彼の者の魂が、正しき場所に導かれん事を」


祈らずには、いられなかった。


地面に転がっていた短剣を手に取る。

ガル。その刃には、短く刻まれた名前があった。


目を瞑る。


これは、罪ではない。

ガルが生き、命を賭して戦い、そして死んでいった証だ。


目を開く。

そこに、一滴の涙をも溜めず。

より一層、強くなった覚悟を宿して。





『愛しき者と共に在らん事を

           安息の地で憩えR.I.P――ガル』


墓石というには少しばかり簡易的に過ぎる、積み上げられただけの石。

その一つに刻まれたのは、そんな言葉だった。


その下に、彼が眠っていた。


「...行こう。ガルの死を無駄にしない為にも」


振りかぶってそう言った俺の腰には、彼の名が刻まれた短剣が挟まれていた。出来ればこれ以上増えて欲しくはなかった、持ち主を失った短剣である。


「おう」

「了解」

「あぁ」

「...うん」


十人十色な返事。しかし、そこには明確な共通点があった。

皆、悲しみの色をその言葉に滲ませていた。


一歩。

再び、前を向いて歩き出す。

背負わぬと誓った罪ではなく、仲間の想いを背負いながら。


「...前途多難だな。全く」


――或いは、視線の先から迫り来る、騒々しい足音を耳にしながら。


気配はしていた。人の物ではない、魔の者の気配が。

だがそれは、竜を恐れてかこちらに向かう事はなかったものだ。


そして竜が死し、ガルが息を引き取り、墓標を立てている時すらも、その魔物共が此方へと向かう雰囲気はなかった。


魔物如きに空気が読めるとも思えないが、それにしては狙い澄ましたようなタイミングだった。俺としては魔力が回復するまで待って欲しかったが、それは贅沢が過ぎるだろうか。


「...すまない、魔力切れだ。少しばかり頼む」


柄に手を掛けたが、それを抜いたところで俺が戦力になれる気はしなかった。

腰を落として休息に専念する。体を休める事で魔力の吸収が早くなるかどうかは分からないが、少なくとも皆の邪魔をする訳にはいかない。


「うん。ここは任せてライトは休んでて」


朝日で煌めく艶やかな金髪を揺らすサラの後姿は、何時になく頼もしかった。

だが、そんな彼女に見惚れる時間はなかった。


「っ...来たぞ!」


声を上げたディランの視線の先を辿る。行き着いた先にあったのは今上ったばかりの朝日。眩しさのあまり細めた目で更に注視する。


――それは、やはり魔物だった。

雪を巻き上げながらこちらへ大挙して走ってくる、魔物の大軍だった。

だがその姿は見知った物である。猪、狼、空に目をやれば鳥が此方へ向かってきていた。目が赤いという一点を覗けば、野生のそれらと何ら変わりない魔物だった。


「【炎よ、いと気高き炎の精霊よ】」


溌剌とした声が、山頂に染みわたる様に響く。


「【安寧秩序を穢す者に償いを】」


彼女の周りに、炎が立ち込める。

それは罪人を苦しめる劫火ではなく、団欒の真ん中で人々を照らす焚火の炎のようであった。まるで、いつも俺達が囲んでいるそれような。


「【人々を遍く照らす太陽、今墜ちて魔を滅ぼさん】」


炎が一か所に集まる。

最初は燈火のようだったそれは、やがて篝火をも超える火球へとなった。


...なぜだろうか。あれは、ただの火魔術ではないような気がした。

微かに纏う神々しい光が、あれがただの火球ではない事を証明していた。だが、では何なのだと言われても見当が付かない。


「【破邪陽焔サンファイア・パージ!】」


そんな正体不明の違和感を置いてけぼりにして、サラの火魔術は放たれる。

そして一瞬の間を置いて、後を追う様に次々と放たれていく多種多様の魔術群。懲罰部隊の面々が放った物だ。


そして狙い違わず着弾する弾幕。血飛沫と断末魔が響いた。魔獣共とは違い、奴らにはそれを防御する術はなかったのだ。


「...少しは頭使えよ。こうなるの分っただろ普通」

「ならお前が言え」


馬鹿にした様な口調のマイルズに、呆れた様なディランがそう指摘した。両方とも口が悪いし似た様な人物に思えるが、10歳ほど年を食ってる分ディランの方が落ち着きを持っていた。


「まぁ、にしても雪山で火魔術はあかんでしょ」

「あはは...ごめんね、ちょっとは考えなきゃだった」

「擁護したいところだけどそんな暇ないだろこれ」


自分の声がちょっと震えている気がした。

だがそんな事に気を割いては居られない。視線を元に戻すと、ちょうど魔物達の死体が吞み込まれていくところだった。


山頂は巨大な椀のような形をしていた。かなり急勾配な坂が、ぐるっと周りを囲っているような地形である。そんなところに破壊力のある魔術を放ったらどうなるかなど、火を見るよりも明らかであった。


地滑り...というより山崩れ。山頂の一角が、こちらへ向かって落下してきていたのだ。積もった雪のせいで一見ただの雪崩に見えるが、見え隠れする岩がそれを否定していた。


「...ゲイジ、土魔術で防げたりしないか」

「無理だ。魔力が持たん」


端的な返事。だが、それで十分伝わった。

13人が一定時間一酸化炭素中毒にならなくて済むような、そんな空間を土魔術で作り維持するというのは簡単ではないのだろう。


だが、そうと分かれば。


「宝が置かれてた洞窟に避難する。入り口を塞ぐくらいなら出来るな?」

「あぁ」

「頼んだ」


もっと休ませてくれと悲鳴を上げる体を無視し、アスカロンを地面につきながら立ち上がる。都合が良い事に、その洞窟は直ぐそこにあった。

そして、それぞれ移動を開始する隊員達。だが、彼らの後を付いて行こうと歩を進めるが俺の腕を、誰かが掴んだ。


「待って、ガルのお墓が...!」


サラだった。

悲痛な色を宿す彼女の目は、今しがた立てたばかりの彼の墓石へ向いていた。


「先に行ってくれ」

「っ...でも――」

「早くッ!!」


時間がなかった。

俺の事はどうでも良い。どうせ何とかなるのだから。

だが、サラがあれに巻き込まれるのは想像すらしたくなかった。


「...っ、絶対、絶対直ぐ来てね!約束だよ!」

「あぁ、だから早く!」


迫る轟音に満ちている耳に、微かに足音が聞こえた様な気がした。

振り返る事もせず、俺はガルの墓へと走り出す。



この行為に意味はあるのだろうか。

ガルは死んだ。その魂の行方は知り得ず、肉体は既に埋葬されている。であるからして、あれはただ無造作に選んだ、彼の名前を刻んだだけの石だ。


そんなものの為に体を張る事に、一体何の意味があるのだろうか。

だが、止める気にはなれなかった。


足は地を踏みしめ、伸ばした手は墓石へと届いた。


そこに彼の名前が刻まれている事を確認するや否や、直ぐに反転して再び駆け出す。目指すは洞窟、こちらへ手を伸ばしているサラ。



そして、俺は彼女の手を掴んだ。

するとその身からは想像できない様な力で引かれ、倒れ込む様に洞窟に倒れ込む。


その瞬間、入り口が土魔術で塞がれたのが分かった。

間を置かずして耳をつんざく轟音、そして衝撃。

崩れた山の一角が激突したのだ。


「...間に合ったな」

「あぁ、なんとかな」



...さて、この後はどうしようか。












「ったく、呼び寄せられた挙句山送りとか舐めてる?舐めてるよな」


白い煙を吐きながら、不精髭の男がそう愚痴た。


「止めなさい。今は我々だけではないのですよ」


諫める様な声色でそう発したのは、男の直ぐ横を歩く青年だった。

その目は、呆れた様に少し細められている。


「下っ端だろ。舐めやがって」

「士気下がりますよ」

「書記長サマの演説で上がった士気がそう簡単に下がるか。舐めてるだろ」


ぶつくさと文句を垂れ続ける男の顔は特徴的であった。黒髪黒目、比較的細い目に平たい鼻。東洋系の顔だ。

そしてその横で歩く青年は、如何にも人の好さそうな顔をしていた。同じく東洋系の特徴を持っていたが、そこに浮かべる表情は全く違う物である。

人々に遍く光を照らす太陽すらも光を当てられそうにないような、そんな暗い、暗い目をした無精髭の男。

そしてもう片方の青年は太陽の寵愛をその身に宿したような明るさと優しさ、品位が滲み出ていた。

そんな彼らの後ろには、数千人にも及ぶ大部隊が列をなして追随していた。

ウラリスキエ軍管区を担当する第9チェリャビンスク防衛師団を主軸とし、他複数の師団より選出された特別任務連合部隊より構成される、赤い翼作戦実行部隊である。


「確かに、我々東方にまで招集が掛かるのは意外でしたね」

「加護も遺物もねぇ連中が調子乗りやがって。その尻ぬぐい誰がやんだよ。あんま舐めんなよ」

「全く...少しは控えなさい」



溜息を付いた麗しい青年。


その腰には、二振りの宝剣があった。

刃は鞘にて見えずとも、見る者が見れば一目でわかるだろう。そんな研ぎ澄まされた雰囲気を持っていた。


或いは。


ジュワユーズ、アスカロン、フェイルノート。

遺物だけが持つ、一種の神秘さを。





――――――――――――――


サラの詠唱を考えるにあたって序盤を見返したんですが、性格改変があまりにも酷いと今更ながらに気付きました。流石に別人が過ぎるので修正します。


例↓

「私は最強の魔術師アベルの、妹よ――!」

「殺す!!バケモノが!」

「アンタ、何でここに居るの?」


  死  ね  (迫真)


ミアが綾波レイ似だからってサラをアスカみたいに書きやがってクソガキが

なので修正が最優先事項です(白目)



更新は...まぁ頑張ります。

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