第135話

またやらかした。全話のサブタイトルは次のヤツです...

ではどーぞ。文字数少ないけど許して。

――――――――――――――――


「冒険者ギルド?」


冒険者、ギルド。どちらも聞いた事のない単語である。いやまぁどちらも意味自体は分かるのだ。前者の意味する事は「危険を冒す者」であり、後者は「組合」という意味である。

であるからしてその単語の羅列から直訳すれば、冒険家や探検家へ依頼を斡旋する組合なのだろうか。

しかし会話の文脈から考えるにそういう物ではないのだろう。何せたかだか冒険家に国を守る力などないのだから。


「えぇ。まぁ名前についてはそういう物と思って下さい。魔物討伐、ダンジョン攻略、魔石の採掘などを目的とする国際組織です」

「...国際?」

「まぁまだ帝国だけですけどね。ですがこれから王国、合衆王国、いずれは東側の国にも加盟して貰う予定です」


今一要領を得なかった。いや、目的も存在意義も理解出来るのだが、それを国際化すると言うのが分からない。


「現実的じゃないだろう。魔物も魔石も国でどうにかすれば良いんだから、わざわざ他国で誕生した組織を頼るなんて考えられん」


一般的に考えれば、魔物討伐も魔石採掘も全て自国が主導でやるべき事だろう。

つまるところ魔物討伐は治安と国防、国内の街道などのインフラに関わる事であり、魔石に至っては主要産業と成り得る潜在的な価値がある。


それを他国の組織に任せるなんて愚行を犯す程、王国の上層部は無能じゃないのだ。


それに合衆王国だって別に帝国と親密な関係にある訳では無いのだ。それに今のところあちらに魔物は渡っていない――とは言え魔物の死骸を喰った生き物の中には渡り鳥だって居ただろうし、所詮時間の問題ではある――のだから、合衆王国にこれっぽっちも理がない。


あと大前提として、魔物を討伐出来る程の戦力ならば、絶対に国が管理下に置こうとするだろう。


これらの理由から、ヒロの冒険者ギルド案は現実的ではない。

...のだが、ヴァルターはこれに同意したらしい。ならば何かしらの種か仕掛けがあるのだろう。


「まぁ、国際組織と言ってもあくまでも名前とシステムだけです。帝国冒険者ギルド、王国冒険者ギルドみたいな感じで、国家には属さずとも指揮系統は別になります。まぁ加盟条件に有事の際は加盟国が協力して脅威を除けるとありますが」

「...ならデメリットはないか。だがメリットはあるのか?」

「えぇ。まず王国からすれば断る事は出来ないでしょう。スタンピードの対処に加え、魔術王の喪失した状態での二正面作戦は無謀です。それに断られた所で、死兵と化した帝国のパチルザンに攻められるだけですがね」


...まぁ、それもそうか。皇帝となったヴァルターの纏う雰囲気は王者のそれであった。アイツが死にに行けと命じれば誰もが喜んで万歳突撃をするだろう。


とは言え国力が大幅に低下した帝国がそれをやってしまえば共倒れになりかねない。つまるところ、これは脅迫である。

瀕死の病人の如き帝国。体力はとっくの昔に限界を迎え、残る余力は絞られた雑巾の最後の一滴の如き有り様。

八方塞がりの王国。体力はまだあれど、状況は正に必死に崖の縁に掴まっているような物だ。


帝国は振るえば自らも死ぬ剣を突き付けながら、もう片方の手を今まさに崖の底に落ちそうな王国へ差し伸べるのだ。


「という事は、王国の加盟と同時にその有事の際のとやらで帝国の冒険者ギルドが王国の為に動くのか」

「そう言う事です。ただこれだけでは王国も疑心暗鬼になるだけでしょうし、冒険者ギルドに登録した人間はギルド加盟国同士の戦争には参加出来ないですね」

「...いや、それ帝国が損するだけじゃないか?今はまだスタンピードがあるから良いとしても、どうせ力を取り戻した王国は戦争を仕掛けて来るその時にヴァルターだけの力では今度こそ滅ぼされるぞ」


戦とは人の性である。どれだけ痛い目に合っても、どれだけの犠牲が出ても、人は戦を止めないだろう。

だから、きっと王国と帝国は再び戦争を始める。魔石と言う新たな発見が広まれば、その用途や武器の開発競争が進むだろう。

人は単純だ。木の棒を手にした幼子の様に、新たな道具を手にしたからには、それを使わずにはいられなくなる。


だから、戦争は避けられないだろう。そもそも半世紀は戦争を続けている王国と帝国の仲がそう簡単に良くなるとは思えない。


「まぁ割と何とかなりますよ。アイギスは王国の国防の要ですが、その性質からして敵国に攻め入れば力を失います...それに、合衆王国の発展ぶりは凄まじいです。数十年前は只の都市国家群だったとは思えない程」


あぁ、確かにそうか。ここまで説明されれば流石に理解出来た。

今の会話では概要しか掴めていないだろうが、それでも問題はなさそうだ。詳しい事は当事者同士で話し合えば良いだろう。


「なるほど、分かった。今回はお前を信用するとしよう」

「あと申し訳ないですけど、サラスティア王女救出には参加出来ません」

「...まぁそうだよな」


やはりそうなるか。

端から期待はしていなかったので特に何とも思わなかったが、本人は割と気にしているらしい。


だが、ここまでお膳立てされれば後は俺だけでやらねばならないだろう。

相手が誰であろうと。


「問題ないさ、寧ろここまでやってくれて本当にありがたい。流石にここから先は俺がなんとかしてみせるさ」

「...でも、相手はあのエルですよ。正直に言わせて貰えば今の貴方が彼に勝てる訳がない」


意外と言うなコイツ。何時も思っているんだが、俺はコイツからから敬意という物を感じた事が一度も無い。にも関わらず敬語なのは本当に謎だ。



まぁ良い、返答は決まっているさ。



「いいや、勝つさ。今度こそ」





――――――――――――――――

最近思ったんだけど、やっぱり一話ごとの文字数を増やすより投稿頻度を上げた方がPV付きやすい。なのでこれからはこういう感じが続くかもしれません。

まぁ次はターニングポイントだから長いけど...

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