第133話

投稿遅れました(n連続)

もう俺小説書くの向いてないんじゃないんかな。

今回はその癖文字数も少ないし文章も終わってます。申し訳ない


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酒は人の本音を引き出す。或いはそうでなくとも、酒があれば言いたくない事、言いにくい事を口にする事が出来る。

だから懲罰部隊という揃いも揃ってヤバい人生を送って来た人間の集まりで、いつも酒を飲んでいたのは正解だったのかもしれない。


だから、と言うのは少しおかしいが、彼らは今酒場に居た。

テオは度数が低めの果実酒を、ライトは自棄の様にスピリッツを呑んでいた。


テオが下を向きながら口を開く。


「...ごめんよ、君がそんな目に合っている間、僕は呑気に幸せを謳歌していた」


ライトは何も言わない。いや、何と言ったらいいのか分からなかった。

実際、ライトがテオに対して抱いている感情は決して負のそれではない。

ただ、羨ましかったのだ。


大切な人を失い、絶望に暮れ沢山の人を殺した。

しかしテオは大切な人を取り戻し、平和に幸せな生活を送っていた。


あぁ、同じ懲罰部隊でもこんなにも差が出るものなのか、と。そんな自虐じみた羨望を、ライトはテオに対して感じていたのだ。


「...別に、良いさ」


だが口を閉ざす訳にはいかない。助けを欲しているのは俺で、だから現状を説明する責任があるのだ。

酒を呷る。とっくに味覚を失ったライトにとって、喉を焼くような酒を飲むとほんの少しだけ気が晴れるような気がした。


「...手早く済まそう。サラ救出に差し当たって立ちはだかる障壁は目下二つ。王国の戦力、そしてエルだ」

「エル?」


テオはそう言って眉をひそめた。その反応に首をかしげるライトだったが、しかしテオが隊を離れたのは俺が拷問されている最中だったか、と思い至った。


「あぁ、お前は知らないか」

「いいや、知ってるよ。裏社会じゃ知らない人間は居ない...王国で暗殺業をやってる人間が皆殺しにされたとか、国家権力まで手にしてるとか、そういう根も葉もない噂話を聞いただけだけど」


王国で暗殺業をやってる人間が皆殺しにされた。あぁ、そう言えば俺とアイツが初めて会った時、アイツは黒ずくめの連中と戦っていたな。

だがテオがそれを知っているなら話は早い。


「あぁ、結論から言うとそれは全て事実だ。そして俺に掛けられた冤罪から人魔大戦までアイツが黒幕さ」

「...それは、凄まじいね。なら問題はエルをどうするか、という点かな?」

「いや、奴は俺が何とかすべき人間だ。今は王国の最高戦力と通常戦力の二つに対する策が欲しい」


正直に言って、エルの相手を出来る人間は俺以外に居ない。単純に力の問題だ。右目に付けられた呪いのせdで大分足を引っ張られてるが、それでも剣術、魔力共に俺を超える人間は奴以外に居ないのだ。

それに奴の俺に対する確執、或いは執念は異常だ。ならば、相手をするのは俺以外にあり得ないであろう。


「そうだな、帝国で革命が起きた。ヴァルターには何やら策があるようだし、まぁしばらくは持つ筈だ」


その策とやらを教えてくれたら、俺の取れる選択肢も増えたというのだが。まぁそんな事を言っても仕方がない。俺はアイツに恩が出来てしまったし、不本意だがある程度信頼しなければならないだろう。


「...分かった。僕は何とか暗殺者部隊を解放して説得、処刑日に王族へ攻撃を仕掛けよう。勿論僕も一緒にね」

「攻撃?暗殺じゃなくか?」

「うん。決して殺さず、しかし相手の恐怖を煽るように攻撃するのさ。これで王立騎士団ロイヤル・ナイツは完全に釘付けに出来る」


人の好さそうな雰囲気を纏ったままそう言い放つテオに、思わず感心した。

なんだかんだ言ってコイツは暗殺者なのだ。のほほんとした顔の下ではいつもえげつない事を考えているのかもしれない。


「ミュラーの方は厳しいか?」

「無理だね。これは二択だよ、隊長。片方が脱走された事を知ったら残った方は必ず即座に殺されるんだから。なら現状使えそうな方を選ばないとね」


...いや、それにしたって結構エグい事言うな。多分この様子じゃ、使えそうにないと判断したらかつての仲間すらも切り捨てるのだろう。

だが、だからこそ信頼出来る。


「分かった、じゃあそれで行こう」

「了解。じゃあ僕はもう行くよ。あまり時間もないしね」


テオはコップに残っていた果実酒を一気に飲み干すと立ち上がった。

その姿に、じゃあな、と一言告げようとしたライト。しかし何かを思い出したらしく、とてつもなく気まずげな表情を浮かべた。


「...すまん、奢ってくれ。俺金ないんだった」

「えぇ...僕は今ヒモなんだよ。彼女から貰ったお小遣いを奢りに使うって...」


この世の終わりみたいな会話である。

片や部下に酒代を奢らせる上官、片や彼女に養ってもらっているヒモ。


「頼むよ、何時か借りは返すって」

「...まぁ良いよ。僕もそんなに使ってないし」


それにしても、部下に金の無心とは剣聖の子ともあろう人間が落ちぶれた物だ。

とは言え、それは随分と今更過ぎる事であるが。





そんな何処か気の抜けたやり取りをしていたが、ライトの内心は割と荒れていた。

処刑が行われるのは明後日であり、それまでに全ての準備を終わらせなければならないのだから。


テオの事を信頼して、王立騎士団はなんとかなるとしよう。だがそれでも依然としていくつもの障害がある。

魔術王に関してはアスカロンがある限りそう簡単に負けないだろう。だが向こうには大量の王国兵の援護があるし、それを突破したとしても追跡を逃れるのはそう簡単な話じゃない。


俺と違ってサラには水も食料も必要だ。それらを確保しつつ王国の追手から逃れるというのは現実味がない。軍備だけあっても戦争には勝てないとは良く言った物で、つまり俺がどれだけ力を持とうとも、誰かと行動を共にする限りそういう問題が必ず発生するのだ。


それと、エルをどう対処するかという問題もある。奴が魔術王と共闘してくる事はないだろうが、逃亡中に奴に目を付けられたら一巻の終わりだ。


何かいい案はないのか、と必死に頭を捻る。だが結論は出ない。ガチで酒飲まなきゃよかった。でも飲まなきゃやってらんねぇよ。


戦いとは一種のギャンブルらしい。所詮戦略も戦術も訓練も、そのギャンブルの勝率を上げるために過ぎない。そしてギャンブルで今の状況を例えると、俺は負けまくったせいで出来たマイナスを取り返そうとしているのだ。


それでもやるしかないのだ。何せ切れる手札掛け金が尽きてるのだから。もうこれ以上払える物はない。正に一世一代のギャンブルだ。

でもそうやって意気込む程ギャンブルって負けやすくなるんだよな。


「...やっぱ酔ってるわ俺」


サラが捕まっていると言うのに、俺は一体何をしてるんだ。冷静になれ。

そう自分を叱咤し、スキルで酒を抜く。正直に言えばもっと酔っていたかった、現実逃避していたかった。だがそれは許されないし、何より俺が許せない。


クリアになった思考回路で必死に考える。

何か手はないのか、どうすればサラを救い出す事が出来るのか。


だが、やはりそれでも結論は出ない。

或いは強いて言うなら、行き当たりばったりでなんとかするしかない。それがライトが導き出した結論であった。




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前にペンネームを変えるかもって言ったんですが、その件で決まったので一応報告。

宰原さいはらアレフ」という名前にしようかな、なんて思ってます。

※宗教団体とは関係ありません


ではまた

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