第126話
自主企画で中高生の作品の本棚第二弾始めました。公開した次の日には30作品も参加された。あとこの企画始めた理由が中高生向けの自主企画がなかったからなんだけど、さっき確認したら小中高向けの上位互換があった。参加作品数も60くらいあるし別に俺がこの企画続けなくてもいいのでは...?
ではどーぞ。後数話でターニングポイントなのでもう少しお待ちを
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全てが破壊されつくされた帝都より遷都されたその町も、しかし人魔大戦に爪痕がありありと残っている。至る所で石畳が剥がれ、焼け落ちた建物の残骸が散乱し、町を行き交う人々の表情は決して明るい物ではなかった。
しかし、普段は未来への絶望による閉塞感に満ちている筈のその町は、今興奮の渦に突き落とされていた。
そう、それは明日に皇帝の処刑が行われるからだ。
自分達の富を吸い尽くし、その悉くを軍費に注ぎ、しかしそうまでしても尚王国に勝てなかった無能。自分達の苦境の全ての元凶である皇帝が処刑されるのだ。
苦しい生活によって溜まりに溜まったフラストレーションもあってか、それを発散しうる最高の劇である処刑に掛ける期待は最高潮である。
そんな街を歩く異質な3人組があった。
黒髪黒目の少年、隻眼の少年、そして法衣をその身に纏った少女である。つまり滅茶苦茶目立っている。そして王国に降伏した帝国内には至る所に王国の監視の目が張り巡らされており、特に明日が公開処刑の予定日と言うのもあって厳重な警戒態勢が引かれているのだ。
彼らがその警戒網に掛かるまでそう時間は掛からなかった。
「お前ら、こんな所で何をしている」
だが、ライトと聖女が行方不明になったという情報は上層部によって止められている。よって彼らが警戒網に掛かった理由はあくまでも剣を所持しているからである。指名手配犯を発見したというよりも、どちらかと言うと職務質問の様な物だ。
もしその兵士達が自分らの前に居るのが元魔王であるライトと知っていたのならば、たった数人で止めるという無謀をする訳がないのだから。
しかしライトらはそれを知らない。
ライトは突如現れた王国兵に警戒を露わにしながら口を開いた。
「何って、公開処刑を見に来たに決まってるだろう」
わざわざヴァルターに会いに来た、と本当の事を言うべきではないだろう。怪しさ満点であろうとも見た目は少年である自分らがそんな事を言っては怪しまれるに決まっている。ヴァルターと会う方法すら決まっていない現状でそんなリスクを負う訳にはいかないのだ。
「じゃあその剣はなんだ?」
その兵士はそう言うとライトが持っている剣に指を指した。
ライトの剣であるアスカロンは、切れ味や頑丈さ、対魔力に於いて圧倒的な力を持っている。だがそれは一般的に普通の少年が持っている物とは言い難かった。
「...父親の形見だ」
手に入れた経緯が剣聖である父親を殺して手に入れたものであるという事に目を瞑れば、何も間違った事は言っていない。
「明日に元皇帝の処刑行われるのは知っているだろ?今ここは厳重態勢が引かれてるんだ、剣を持った奴は通せない」
「チッ」
「もっとも、何か身分を保証できるものがあれば別だがな」
ライトは逡巡した。ここでこの兵士を殺したら確実に騒ぎになるなろう。巡回による警備というのは厳格なローテーションによって成り立っているのだから、そこに穴が開けば直ぐに気付かれる。なら正面突破は無理。だがこの街の地理など全く知らない自分達で彼ら兵士の目を掻い潜るのもまた不可能だろう。
というかそもそもヴァルターが何処に居るのかすら分かっていないのだ。なんという計画性のなさだろうか。自分をここまで連れて来た張本人であるヒロも何の情報も持っていないようだし、これではどうヴァルターに会えばいいのか分からない。
そう頭を悩ませていたライトだったが、彼の頭に一つ案が思い浮かんだ。
「...ならヴァルター様に伝えてくれ。隻眼の剣士が訪ねてきたとな」
これは一種の賭けであった。
目の前の兵士がライトを怪しんで追い返せばそれまでであるし、仮にこの兵士が上に報告してもある意味で捕虜の身分であるヴァルターがどう反応するかも未知数だ。
とは言えこの賭けはローリスクハイリターンだからやって損はないだろう。オッズはあまり良くないだろうが。
「...分かった、伝えておこう」
どうやら上手くいったようだ。
これもライト一行らが纏う只者じゃなさそうな雰囲気のおかげだろう。特にいかにも高位な聖職者っぽい彼女の存在は大きかった。兵士は彼女が居たからこそ上に判断したのである。
果たしてそれは吉と出るのか凶と出るのか、それを知るのはこの場には居なかった。
〇
「おい、隻眼の剣士に心当たりはあるか?」
遂に明日に迎えた公開処刑に向け、一人自室で物思いに耽っていたヴァルターに声を掛けたのは王国兵だった。
ヴァルターの階級からすれば下っ端に過ぎない警備兵が使っていい言葉遣いではなかったが、しかし彼は敗戦の将軍なのだ。不当に扱われている事に不満がない訳では無いが、この扱いも直ぐに終わるだろうと思いそれを言葉にするのは堪えた。
まぁ今はそんな事はどうでもいい。先ほどの王国兵の言葉には明らかにそれよりも気にすべき言葉が含まれていた。
「隻眼の剣士...?」
「そうだ。心当たりがないようなら追い返すが」
「いいや、あるな」
隻眼の剣士...十中八九ライト・スペンサーの事であろう。
だが不可解な点が多すぎる。そもそも廃人と化したライトが自分から名乗るなど可能なのか、大罪人であるはずのライトが何故ここに来たのか。
とは言えそんな事はあって確認すればいい事だろう。そう判断したヴァルターは再び王国兵へと声を掛けるのだった。
〇
「久しぶりだな、ヴァルター」
「そうでもないがな。まさかあのお前がここまで元に戻るとはな」
ついこの間――ライトがエルに誘拐された時――のライトと今のライトにあまりにも大きな違いがあったからだろう。強烈な違和感を覚えながらもヴァルターは彼に挨拶をした。
しかし、やはり違和感は拭えない。将校として戦場に身を置いていた自分からすれば、あの時のライト・スペンサーは完膚なきまでに壊れていた。そして、一度壊れた心というのはそう簡単に治る物ではないのだ。
それがこうも話せるまで理性を取り戻したのはどんな原理だ、と疑問を抱かずにはいられなかった。
そんなヴァルターの内心を察したのか、ライトは苦々しげな表情を浮かべながら口を開いた。
「聖女の紋証魔術だよ」
「成る程、そう言う事か」
各属性の頂点たる加護持ちのみが使う事が出来る紋証魔術ならば、或いは人の心を治すという偉業を成し遂げる事が可能なのかもしれない。
どうやってここに来たのかという問いはまだ気にならないでもなかったが、それはわざわざ聞くまでもない事だ。ライトが自分に用があると言うのならまずはそれを聞くべきだろう。
「それで、今日は何故来た」
「それが、俺も良く分からないんだが...」
「なに?」
そうしてライトは彼がヴァルターの元へ来た経緯を語り始めた。
エルの手によって聖女と引き合わされ、先程言っていた紋証魔術で理性を取り戻し、その後現れたヒロという少年によってここまで連れてこられたこと。
しかし連れてきた本人であるヒロもまた詳しい事は話してくれず、その上この場に通せるのは本人だけだとライト以外の二人は未だ外で待っているとのことだった。
「それで、何か分かるか?俺が求めているのはサラを助ける術なんだ」
「うーむ、心当たりがないでもないが...」
ヴァルターは尚も顰めた顔をしていた。
ライトは心当たりがあるならば言ってくれればいいではないと疑問を抱いた。
「なら言ってくれ」
「...そうだな、明日以降は忙しくなる。今の内に話しておこう」
決心でもついたのか、真剣な表情を浮かべなららヴァルターがそう言った。
「前提として、お前の行動に関わらずサラスティア嬢は必ず処刑される」
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ほんまにPVの振れ幅が酷すぎてメンタル死ぬ。
あとこれから先の展開少し悩んでるので次の投稿まで時間かかるかもしれません...
ユルシテ...ユルシテ...
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