第108話

投稿遅れました...マジで修正作業しんど過ぎる。

一話の文字数倍くらいになってるぞ?殆ど書き直しやんけ

誰だよ書いた奴...


キリ悪いけど流石に投稿しないとヤバいと思ったのでぶった切って投稿しました。ではどーぞ。


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自然を、大地の恵みを表す土や草。


この時代ならば、よっぽどの都会――石畳やレンガで作られている――でなければ、そこら中にあるであろうそれらは、しかし彼らの視界には入らなかった。


近くにある地面からをれを見る事が出来ないのはまだ分かる。

近くの地面は全て血で染まっているのだから。


だが、いくら目を凝らして遠くを見据えても、緑が目に映る事は終ぞなかった。



―――大地を埋め尽くす、魔物どもによって。



「次から次へと...!!どれだけいるのだこの化け物共はッ!?」


騎士団長がそう叫びながらも、飛び掛かって来た虫の様な魔物を一刀両断する。その身に怪我は一つもなく、体力も魔力も大して消耗していない。

しかし、その表情は険しかった。


「少なくともあと10万は居るぞい」


何処か達観した表情でそう告げる魔術王。諦めた様子はないが、しかしその馬鹿馬鹿しい数に呆れている様様子だ。


「どうかな、僕はその倍は居ると見た!」


ハハハ、と乾いた笑い声を響かせながらそう言ったのはミュラー。彼会話しながらも、しかし弓を馬鹿みたいに連射していた。彼のフェイルノートは必中の弓であり、対少数には絶大な威力を発揮する...のだが、この分ではその特性も意味を成していない。何せどこに撃っても外れる事はないのだから。


「王国軍に包囲された時の方がキツかった」

「まぁこんだけ戦力が居れば流石に」

「隊長がいればなぁ...」

「それは禁句だろ」


そんな呑気な会話をしているのは懲罰部隊。

一見気楽そうに見える彼らだが、その内情は結構悲惨である。

ライトが居なくなってからというモノの、懲罰部隊は散々ば運命を辿ったのだ。何人かの隊員が戦死し、次いで最も指揮能力の高いレオがライトに殺され、挙句の果てには内輪揉め。サラは精神的にやられてるし、ガル含む復讐心に満ちた連中は王国に従う事を拒んでいる。彼らが決定的な決裂を起こすのもそう遠くない。


隊内部での確執は無くならず、戦力も士気も統率力も協調性もゼロ。まぁ元はと言えば犯罪者集団なのでそれも無理もないのだが。


ともかく、そんな懲罰部隊が足手纏いにならない程度に戦えているのは、偏にその特性故だろう。魔力量に特化した彼らの最も得意とするのは対多数戦闘。数でゴリ押ししてくる魔物共に対してはかなりの活躍を見せていた。


そんな懲罰部隊の隊員の一人が、ふと周りを見渡して言葉を溢す。


「...にしても、凄い光景だな」


その光景は、正に終末戦争のようであった。

大地を埋め尽くす魔物どもは勿論、こちらの戦い方も尋常ではない。

多種多様の、それでいてそれぞれが絶大な威力を誇る魔術が空をも埋め尽くす勢いで飛び交う。魔術王、クリスティア、懲罰部隊が織りなす魔術の弾幕は、最早カオスであった。


しかも、それだけではない。


その弾幕の発射元を潰そうと押しかけて来る魔物共から彼らを守るため、その本領を発揮する王立騎士団ロイヤル・ナイツ。アイギスの加護は、背に守るべき人間が居る時にこそ輝くのだ。

自分達が破られれば、この魔物は王国に押し寄せる。であればこそ、自分達が彼らを守護するのだと自らを鼓舞し剣を振りかざす彼らの姿は、正に騎士であった。


そして、それら全員の実力を底上げしている人物が一人。


「怪我をした方は円陣の中に!私が治します!!」


そう、聖女であった。


彼女は、目の前の魔物たちが自分の罪である事を認識している。

全ては、自分のせいなのだから。

強姦されそうになっていた自分を助けてくれた彼を、正に恩を仇で返すように冤罪を掛けたのだ。それが、全ての原因なのだ。


だが、だからこそ。

自分は罪から逃れてはいけないのだ。


そう覚悟を決めた彼女は、自分の罪と対面する。

その立ち姿は、やはり聖女であった。



人魔大戦が始まってから数時間にも拘らず、そこでは最大級の激戦が繰り広げられていたのだ。


魔術王、懲罰部隊、ヴァルター、ミュラー、合衆王国第一王女クリスティア王立騎士団ロイヤル・ナイツ、そして聖女。あと影は薄いがヒロや暗殺者部隊だって居る。


間違いなく人類側の最高戦力であるし、彼らが敗北したら最早人類に勝ち目はないだろう。3国ので目の前に居る大量の化け物に対抗出来るのは、今や彼らだけなのだから。


ともかく、そのような戦力が1カ所に集結していたのは非常に都合が良かった。それも、人魔大戦が始まった丁度その時に、である。何者かの作為を感じる程の奇跡であり、そしてその奇跡のおかげで人類は多くな損害を被っていない。


そして、この様子ではその先も同じであろう。流石の彼らと言えども数週間以上戦う事は出来ないが、魔物側にもそれ程のリソースを割く事は出来ない。人魔大戦での戦線はここだけではないのだから。


しかし、魔物とは学習するのだ。


魔物が数でのゴリ押しを行っていたのは、単に前回の人魔大戦でのデータから導き出した最適解である。


しかし、それが通用しないのであればやり方を変えるのみ。



大量の数で押せないのならば、強力な個で殺す。

魔物は――正確には、魔物を生み出すモノはそう判断した。


そして、それは表れる。



「ッ...!デカいのが来るぞ、総員警戒!!」


戦況の観察に徹していたオリヴィアが、そう声を張り上げた。

その声に吊られ、全員の視線が一か所に集まる。


「...何だ、あれは」



―――それは、山であった。

正確には、山と見間違う程の大きさの、であった。


見た目は、簡単に言えば亀だろうか。

その巨大過ぎる故、甲羅の上には森が生えている。それが山であると誤認された原因であろう。その歩みは非常に遅く見えたが、一歩踏み出すごとに揺れる地面を考えるに、その歩幅は尋常ではないのだろう。


つまり、それが彼らの元に辿り着くのはそう遠くないという事だ。


「......一度態勢を立て直さなければ」


呆然とした雰囲気が漂う中、クリスティアがそんな言葉を捻りだした。

確かに、あの巨大な魔物相手に普通の魔術は効かないだろう。であるなら、なんらかの大技を繰り出す必要があり、必然的にその大技を繰り出す時間を作る必要があるのだ。

クリスティアのそのような意味が込められた言葉は、その場に居る全員が瞬時に理解した。ヴァルターを除いて。


「ワシの魔術ではあ奴を倒す事は出来そうにないのでな...露払いは任されたぞ」


そう名乗り出たのは魔術王。

魔術の技量が売りである彼に、果たして大量の敵を殲滅するような力業があったのかと数人が首を傾げたが、しかし魔術王が自信をもって名乗り出たのなら信用出来るだろうとそれを口にする事はなかった。

ヴァルターを除いて。


「貴様に出来るのか?ここは我のジュワーズに...」


一瞬頭痛がした魔術王だったが、しかし悪い案ではないかと思い直した。確かに、自分の魔術障壁――それも創造魔術使用中の――を打ち破ったあの技ならば役に立つだろう。


「ならばタイミングを合わせるとするかの」

「成る程、分かった」


魔術王は、ふと思案した。

解せないのだ。持ち主を選ぶ特性がある遺物が、何故よりにもよってヴァルターなんぞを選んだのか。古代文明より伝わる伝説では、ジュワーズは王権を表す宝剣だと言うのに――と。


「...まぁ今気にする事ではないか」


ともかく、目の前の敵を打倒しなければ。


「【我は魔術王】」


「【過ぎ去りし日々の中に魔術の精髄を刻み、歳月を魔術の研鑽に捧げし者】」



――――世界が再び変貌する。負の象徴である魔に満ちた世界から、奇跡の象徴である魔に満ちた世界に。魔術王が定めたルールにのみ従う、魔術王が創造した世界に。


「【魔法陣の輪を織り成せ、魔法陣の輪舞が始まる

  変容せよ、範囲よ、新たな現実へと舞い踊れ

  空よりも高く、太陽よりも輝く力をこの手に】」



一方、ヴァルターも黙っている訳ではない。

ヴァルターは剣を地面に突き立て目を瞑った。



「【虹の如き精彩】」


空間が歪み、虹色の光を放つ。

王立騎士団ロイヤル・ナイツはその身に何度も受けた技に、思わずゾクリと背中が粟立つのを感じた。


「【王権の象徴たる陽よ、大地に遍く光を注げ】」


その時が来たと察した魔術王は、自身の魔力の放出を開始する。


「【第1節・太陽剣】」

「【創造魔術クリエイト愛と智と夢幻エフェクション・ウィズダム】」



―――赤に染まった世界に光が差し込んだ。

王権の象徴にして太陽を意味するジュワーズは、地上に太陽を発現。大地を覆う魔物は、それを認識する間もなく蒸発した。


しかし、そうして出来た大きな空白地帯は直ぐに魔物達が押し寄せ、再びその姿を隠してしまう。


「――打ち漏らしは任せたぞ」


だが、それを許す魔術王ではなかった。


この世のありとあらゆる攻撃魔術が、異常な密度と投射量を以て文字通り魔物を殲滅していく。その全ては人類が理論上使用可能な最大限の威力であり、肉片すら残さずに敵を塵芥と化していく。


爆炎とそれに伴う黒煙、土煙が視界を覆った。仲間を巻き込む事だ出来ない魔術王が、自分達の近くには破壊的な魔術を使わなかったからだろう。数体の魔物がその煙の向こう側から飛び掛かって来る。


「ここは決して通さん」


だが、その魔物は不可視の壁にぶつかったかのようにその身を急停止させた。

理性の伴わない赤き目で、魔物はソレを見極めようと周りを見渡す。


「【神の盾イージス】」


だが、それらの魔物は一瞬にして押し潰された。またしても、不可視の何かに。

そうして打ち漏らされた数体の魔物が処理され、再び視線を煙に巻かれた前方へと向ける。そして、その煙は晴れ――



「――成る程、流石は魔術の王だな」


ほぼ全員が絶句しながらその光景を見つめる中そう呟いたのは、果たして誰であったか。ともかく、どれ程の光景であった。


魔物は、もうそこには居なかったのだ。


「は、ハハ...我が国には、端から勝機などなかったのか」


呆然自失と言った様子でそう言ったのは唯一残った皇族だった。

自らの国と、それを守護する二人の遺物持ちには信頼を寄せていたが...よもや、遺物持ちですらない老人がこのような力を持っていたとは。

そうとも知らずに戦争を仕掛けた我が国は、彼我の戦力差すら計れない程愚かであったのか――と、そんな思いを込もったその言葉は、しかしそう思わせた本人に否定される。


「あまり悲観なさるな。こんな事が無ければ、この戦争がどうなったかなど誰も分かりはしますまい。少なくともそちらの方が戦上手でありましたぞ」


確かに、魔術王の言う通りなのだろう。

暗殺者という戦術的価値のないユニットを、ある種の戦略的扱いによって王国をあそこまで混乱させたのだ。古代文明に於ける特殊部隊、或いは特殊作戦部隊のに酷似したその部隊をこの文明レベルで使用したというのは、確かに一種の偉業であるともいえる―――彼らがそうなった経緯に、目を瞑れば。


子供を攫い、そして人体実験を行った末に生まれた暗殺者。

正に、帝国の業である。


であるからして、やはりその皇族は魔術王のその言葉を素直に受け取る事など出来はしなかった。


だが、そんな皇族の思いは他所に戦況は移り変わる。


「...さて、露払いは済んだ。で、あのデカブツは誰がやる?」


何処か挑発するような雰囲気を発しながらそう告げたオリヴィア。

魔術王、騎士団の面々、懲罰部隊は首を横に振る。


「僕の矢が通じるかは分からないが...まぁ、やってみるさ」


ミュラーがそう名乗り出た。

彼が持つのは、遠距離攻撃可能な唯一の遺物――フェイルノートである。

彼が持つフェイルノートは、持ち主によってその形を変える特性によって弓の形を取っている。しかし、それに伝わる伝承は遺物の中では最も少なく、またそれが弓であったかどうかも不明。罠の様な何かを誤訳して弓という形で後世に伝わってしまったという説もある。


ともかく、フェイルノートとは非常に不安定かつ不明瞭な遺物なのだ。

所持者や第三者のイメージがその力を左右する事のある遺物に於いて、それは重大な弱点足りうるのだ。


「【放たれる矢に無駄はなく】」


だが、ミュラーはそれ弱点を克服している。

少なくとも、この状況下では。


「【必中故に必殺】」


―――フェイルノートの伝承には、一つだけ明確な事がある。


「【森羅万象を貫く弓よ、今その真価を示せ】」



それは、獣を狩る武器であった事だ。



「【第一節・穿ち抜く魔弓】」




―――轟音が鳴り響く。

一瞬にして音速の壁を越えた矢が生した出す衝撃波ソニックブームが、その場に居た全員を吹き飛ばさんと襲った。

しかし、放たれた矢はその派手さとは真逆で。空に切れ目が入ったかの様に、一直線に魔物へと飛翔する。


そして、それは着弾と同時にまたしても巨大な音が鳴る。

次いで聞こえる、悲鳴のような、それでいて心の臓が震えるような音が響き渡った―――それは、その魔物に有効打を与えられた証拠である。



「仕留められなかったが...まぁ上出来だね」



その亀の魔物は、最早その最大の特徴――甲羅を破壊されていた。




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刺し穿つ死棘の槍ゲイボルグ


...知らんな

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