第87話
なんか毎回サブタイトル考えるの面倒くさいなって思ったので、今回からはデカめのイベントがあった時にのみサブタイトルを付けます。
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帝都に来てから三日経った。
ライトはまだ元気になってない。
いつも魘されいているし、起きている時にも幻聴に苦しめられている。
何か食べ物を買いに行こうとしたけど、ライトを連れていくか迷った。
ライトは追われている身だから、宿に置いていったほうが良いかもしれない。
けど、そう告げた時のライトを表情があんまりに不安げだったからやめておいた。
ライトを置いて外に出るのは、手配書とかの具体的な情報が出回ってからでいい。
〇
ご飯を食べさせても吐き戻してしまった。
体調的な問題じゃないから、胃腸に良い物を食べさせてもダメだった。
暖かい飲み物くらいなら大丈夫そうだったから、ゆっくり慣れさせようと思う。
王国で町が一つ無くなったらしい、市場でそういう噂を耳にした。帝都に詳しい情報が届くのもそう遅くないかも知れない。
あと、お金がどんどん減っている。このままだとあと2週間くらいしかもたない。何か稼ぐ手段を考えないと。
〇
ついにライトの情報が出回ってしまった。
懸賞金とかは掛けられていないからか、あの女の人が密告する素振りはない。
とはいえ、これからは私一人で買い出しに出かけなければいけなくなってしまった。
まだ元気になっていないライトを一人で部屋に残すのは凄く不安だ。
「じゃあ、行ってくるね」
それでもやらなければいけないだろう。ライトは
節約の為にご飯を減らしたからだろう、少しフラフラする。
睡眠不足も理由かもしれない。
歩けるだけマシだけど、もう少し体力を付けたほうが良いかもしれない。
そんなことを考えながら歩いていると、いつも使っている市場に辿り着いた。
「...困った。今日は休み?」
だが、その市場は開いていなかった。一瞬宿に戻ろうかと考えたが、少し何か食べないと倒れてしまいそうだった。
だけど、私が倒れたらライトを見てあげられる人がいなくなる。それはダメだ。
そう考えて、何か食べ物を買える場所はないかと歩き出す。
ライトと一緒に居た時は行けなかった、人通りが多い場所を目指そう。そしたら何かしらあるかもしれない。
〇
「...迷った」
おかしい。私はこんなに綺麗な場所を歩いていただろうか。
王国の貴族街のような雰囲気がする。
早く戻ろう。そう思って振り返った瞬間、何かにぶつかってしまった。
「いってぇな、何だお前?」
...不味いかもしれない。今ぶつかったこの男、凄い高そうな服を着ている。
顔も口調とは裏腹に上品さが滲み出ているし、貴族だろうか。
「ごめんなさい」
「って、おいおい!よく見りゃ可愛いじゃねえかお前!」
どうしよう、本様に困った。
魔術で黙らせるのは簡単だけど、それをしたら私まで追われる立場になってしまう。
ここは黙って去ろう、そう考えて再び歩き出そうとしたが――
「金も払うからよ、ちょっと
ピタ、と足が止まった。
ライトを長時間部屋に置いておけない私は、ちゃんとした仕事をする事は出来ない。
お金を稼ぐには、普通の手段はとれない。
...なら、ここは付いていった方が良いのかもしれない。
そう悩んでいるのを見透かしたのか、男は私の手を取って歩き出そうとした。
「体調も悪そうじゃん、君。良いから付いてきなって―――」
...いや、やっぱりダメだ。せめてライトに一言告げてからじゃないと。
この男に付いていったら、どれだけ時間が掛かるか分からない。長すぎたらライトに心配を掛けてしまう。
「...人を待たせてるの。その後で良ければいくらでも相手するから」
「チッ、しゃーねーな。じゃあ場所教えるから、用事終わったらそこに―――」
その時、苛立たし気にそうまくし立てる男の後ろから誰かが声を掛けた。
「失礼、エンゲルブレヒト様ですね?こんな所で何をしておられるので?」
〇
〇
時は数分前に戻る。
帝都に無数にある通りの一つで、一組の男女が手を繋ぎながら歩いていた。
「ってかさ、俺達何で帝都で待機なんだ?」
「暇なんじゃない?知らないけど」
一見すれば単なる恋人だが、その目は修羅場を超えた者のそれだった。
「テオ、今は何してんのかなー」
「そんなの分かる訳ないじゃない...生きているかも分からないんだから」
テオ、と呼ばれるその少年は、彼らからすれば裏切者だ。
テオが帝国から離れたせいで監視の目も厳しくなったし、実際今はここにいない二人はテオに対してあまりいい感情を抱いていない。
しかし、彼らテオと呼んだ時の表情は、懐かしむようなそれだった。
「―――故郷に帰って、幼馴染と再会して。それで、幸せに暮らしていると良いな....俺達の分まで」
「あら、まるで私たちが不幸みたいないい方ね?」
「ハハっ...そうだな。確かに俺は幸せだよ」
今は。そう付け足さずとも、彼女は分かっているだろう。
役目を果たした後に待っているのは、死のみだという事は――
「...なぁ、あれ」
と、その時。
道の先に、自分たちと同い年くらいの少女が男に絡まれているのが見えた。
彼にはその男に見覚えがあった。
「あんのクソ野郎...また女に手ぇ出してやがる」
あの男に関する噂は酷い物ばかりだ。女を痛めつけるのが趣味だとか、一人町に繰り出しては平民の女を持ち帰っているとか。
そして、彼はそれらの噂の殆どが事実である事を知っている。
「...助けましょ。流石に目の前で見て見ぬふりは出来ないわ」
どうやら彼女もその噂を知っている様だ。
彼女は眉を顰めながらそう言った。
彼らに背を向けたまま女の子に話し掛け続けるその男に近づいていくと、躊躇う事なくその肩に手を掛ける。
「失礼、エンゲルブレヒト様ですね?こんな所で何をしておられるので?」
〇
「失礼、エンゲルブレヒト様ですね?こんな所で何をしておられるので?」
そう声を掛けられた目の前の男が、私の肩を突き飛ばすように放した。
いつもなら少しよろめく程度の衝撃だったけど、体調の悪い今それをやられたら大分不味い気がした。
ずっと休んでいなかったからだろうか。今までの疲労が纏めて襲い掛かってくるような感覚がして、今にも倒れそうだった。俯きながらなんとかそれを耐える。
それでも現状を把握しようと聞き耳を立てる。
「ネズミ如きがオレに話し掛けるな。俺は公爵だぞ?」
振り向いて自分の肩に手を掛けた人間が誰かを認識した男は、心底面倒くさそうな口調で吐き捨てるように言葉を発した。
「そう言われましても。我々も皇帝直属でしてね、お遊びが過ぎるようでしたら報告せざるを得ませんよ?」
「テメェ...覚えとけよ」
男はそう言い残すと、ツカツカと苛立ちを抑えずに去っていった。
「ハッ、三下みたいな捨て台詞だな」
...彼は一体何故声を掛けたのだろうか。もしかして私を助けたつもりなのだろうか。
あと少しでお金が手に入ったかもしれないのに、こちらからしたら邪魔が入ったようなものだ。
「大丈夫だった?」
女性の声だ。気遣うような口調でそう言いながら、そっと私の背に触れて来た。
「...大丈夫」
「ちょっと貴方、ひどい顔色よ?近くに私たちの家があるから――」
「大丈夫と、言ってるッ!!」
自分が理不尽だという自覚はある。でも少し急がないと。
体調と時間を掛けすぎたという焦りのせいだろう、冷や汗が止まらない。
今すぐにでもここを去るべきなのに、口を開かずにはいられなかった。
「私は...お金が必要なのに、貴方は今それを邪魔した」
「待ってくれ、あの男は危険なんだ」
「そんなのどうだって――ッ!?」
――急に叫んだせいだ。
意識が遠ざかってしまう。
それを手繰り戻そうとするが、あっという間にそれは遠くに行ってしまって。
バタッ、と音を立てて、ミアは倒れてしまった。
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なんかライト以外の視点で書くのが難しく感じるようになった。
正直クソ文章かもしれん。
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