第71話 二歩目、上陸とサラ
今回ヒロインとの会話を入れたのですが。そこで気づきました。
俺、一回ともまとももなヒロインとの会話書いてなかった。
これじゃキャラも分からないし、ほんと何やってんだ俺...
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王国に上陸を果たした俺達は、王都に向かって順調に歩を進めていた。
こっそり王都に向かうなら街道を使うのは悪手だが、俺達はあくまでも陽動。特に気にすることもなく、整備された道を歩いていた。
そうして歩くこと1日、道の先の方に家らしき物が見えた。
「お、村発見」
畑に囲まれた、ごく普通の田舎村。畑仕事をしている男も何人か見られるた。
暁に染まった空も相まって、物凄く平和な景色に見える。
ただ、武装した俺達を見て少し怯えている様子も見えるが。
「...どうする?」
「うーん...」
出来れば食べ物を拝借したいし、屋根のある所で寝たい。あと、そろそろ俺達の存在に気付いてほしい。陽動のつもりが敵に気づかれていないなど話にならない。
だから、適当に火でも放って、逃げ出した村人達に情報を伝えさせるというのが一番合理的なのだが...そう考えている間にも、俺達は村に近づいた。
そして、もう村の中、という所で決心する。
(まぁ、殺さなければいいだけだ。)
そうして隊員達に指示を出そうと振り返るが、目の端に小さな男の子が映った。
「...お母さん。あの人たち、なに?」
思わず固まっていると、男の子の母親らしき女性がその子の口を塞いだ。
「コラっ!ダメでしょ、軍人さんにそんな事言っちゃ!」
...どこにでもありそうな光景だ。なのに、それが尊いと思ってしまった。
「はぁ...やめだ、やめやめ。このまま行こう。」
どうやら、村人たちは俺達の事を王国の軍人だと思っているようだ。
本当なら訂正すべきなのだろうが、それが酷く馬鹿らしく思えた。
それに、わざわざここで俺達の存在を知らしめる必要は無い。
どうせこのまま進んでも、哨戒中の部隊とかに遭遇するだろう。そこでやればいいだけだ。そう言い訳がましく心の中で言い、俺は村を後にするのだった。
そうして再び歩き出して1時間。空はすっかり暗くなっていた。
田舎の太陽はせっかちなのだ。上るのも沈むのも早い。
だんだんとその光を強くしている星を眺めながら、俺はボソッと呟いた。
「今日は野宿だな...」
「誰のせいだよ」
「」
間髪入れずに口を出してきたガルに思わず真顔になるが、後悔はしていないので良しとしよう。これで良かったのだ...
「さて、メシ食ったらさっさと寝るぞ。見張りは15分交代、一周したら起床だ。」
10分×全隊員。5時間も寝れたら十分だろう。
「やっぱメシが不味いな...船の時と言い、どうにかならないのかコレ。」
「今回に限ってはお前のせいだぞ。」
「...」
俺は久しぶりに星を見上げる。オーティスの助言(?)のおかげで、時間を掛けながらも俺は夜空を見ることが出来るようになったのだ。
「無視すんなよ」
まだ太陽が完全に沈んでから30分も経っていない。それでも、星はやはり綺麗だ。
...ふと、レオとの会話を思い出す。この作戦が終わったら何処かで心を休める、という話だったハズだ。
仄暗い感情も復讐心も、星を見ていたらどうでも良くなるのが分かる。心が浄化されるような気分だ。
レオと話した時は特にやりたい事もなかったが、今こうして星を眺めていると、もっときれいな星を見たいという欲が出てきた。
どこか空気の澄んだ山の頂で、ゆっくり星を眺めていたい。
サラを守るのが第一優先だ。だから、その次くらいにやりたい事が出来た。
なら、尚更戦争を終わらせなければ。
俺は、そう新たな決意を胸に灯すのだった。
「だから無視すんなって...」
〇
「...ライト、少し良い?」
「んぁ...?」
夜、木の幹に寄りかかって寝ていた俺に、誰かが声を掛けた。
寝ぼけているせいか、思考がはっきりしない。
(そうだ...見張りの交代か...)
あと10秒...10秒経ったら起きよう。見張りと言っても10分だけだし。
「ラーイートーーー!」
「起きてる!起きてるから!」
その瞬間、頭を掴まれて強引に揺らされた。
あまりの強引さに目が回り、そのまま恨めし気に下手人を見る。
「...もうちょっと優しく起こしてくれてもいいじゃないか。」
「10秒って言ってから何分絶ったと思ってるの?いい加減起きる!」
「わかったって...うっ...変なところで寝たせいで体中痛い...」
本当に分かってるのかと憤慨するサラを横目に、俺はゆっくりと体を起こした。
この体勢じゃ遠くまで見通せないし、何よりまた眠ってしまいそうだ。
「見張り見張り...木の上でいいか。」
そう言って寄りかかっていた木に手を掛ける俺を、サラが制止した。
「あぁ、そうじゃないの。ちょっと話があって。」
「?」
話とは何だろうか。帰りたいとかだったらとても嬉しいのだが、口調からしてそんな話しではないだろう。俺の横に座り、意を決したように言葉を口にする。
「ライトは、私の事どう思ってるの?」
その一言で、俺は黙り込んでしまう。
サラは、俺にとってどんな人物なのだろうか。
一度、俺は彼女に対して恋愛感情を抱いているのだろうか、と考えたことがある。
そして、その答えは否だった。
俺は、彼女に対して大きな引け目を持っている。彼女の兄を死なせてしまったのは他でもない俺自身だし、その事実を無視して彼女の事を好きになってしまう程、俺は精神が図太くない。
あと、友人の妹に恋をするというのもあまり頷けない。なんというか、複雑なのだ。
「まぁ...守るべき存在、かな?」
悩んだ末に捻りだした答えはあまりにも簡素なものだったが、彼女はそれを見越していたのか、あまり気にした風には感じない。
サラは悩みを吹き飛ばすかのように立ち上がり、透き通った笑みを浮かべた。
「そう。でも、私も守られるだけの存在ではいたくない...いつか、対等な関係になってみせる。“守るべき”じゃなくて、“一緒に居たい”って思わせて見せる。」
彼女はそれだけ告げると、透き通った笑みを浮かべて去っていくのだった。
(...どうしよう?)
ちょっと心拍数が上がっているし、顔が熱くなってる。
今まで、こんなストレートに好意を向けられた事は無かったのだ。
何故かアベルに責められた気がした。つい先ほど、恋愛対象として見れないとかなんとか言っていたせいで、余計にバツが悪い。
雑念を振り払い、見張りに集中しようと意識を切り替える。
幸いな事に、見張り中に眠くなることは無かった。ただ、見張りを交代した後も変に目が覚めてしまったせいでなかなか寝付けなかったが。
変な場所で寝たせいだ。そういう事にしておこう。
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ってことで、漸くまともなヒロインムーブをさせてみました。
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