ターニングポイントⅡ 戦争の転換点
個人的にはお掃除講座より鬼畜。かつ意味不明な回。
なんか書いてるこっちがイライラしてきた。地獄に叩き落としてやる(理不尽)
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「ふ、ふざけるな!誰に向かって―――」
だらしない腹を揺らし、唾を飛ばしながら叫んでくる男。その醜態を冷めた目で見つつ、俺は無意味な事を考えていた。
こんな状況になってもなお傲慢さを維持できる精神力にはある意味感服する。そして、それと同時に人間、育ちが違うだけでこんなモノになってしまうのか。俺と...いや、サラとコイツが同じ人間なのが信じられない。別の生物だったりしない?なんかこう...“ブタ貴族”みたいな。学園でも将来ブタ貴族になるであろう人物は沢山いた。そういう奴らは挙って俺の陰口を叩くのだ。もしかしたら、コイツはそういう同級生の親かもしれない。
――と、完全に無意味な思考を中断し、目の前の事に集中する。未だに何事か喚いてる男。そいつを地面に投げつけた。
「グェッ!」
「“ウィンド・カッター”」
呻き声さえブタ似なのか、と毒を吐きながら死なない程度に魔術を叩き込む。最も、死なないといっても“設計図の場所を吐く時間内は”という条件付きではあるが。
「いッ!?ぐッ、ぐううううぅ...!!」
「言え、早くしろ。助けてやらんでもないぞ。」
「に、二階の...三号室だ...!!た、頼む...息子が、息子が居るんだ...!」
「あっそ。聞いたかお前ら、とっとと回収して戻ろう。」
こんなに上手くいくとは。俺は降って湧いた幸運に感謝しながら、その男を放置して歩き出す。
「ま、待ってくれ...」
しかし、俺の足首を掴んだ男によって俺の歩みは止められた。とっとと振り払って進もうと思ったが、なんとなく気になったので男に声を掛けようと振り向く。
「なぁ、その息子の名前ってなに?」
「たのむ......たす...け...」
しかし、男はもう死にかけだった。あまり時間を掛けるべきではないが、このまま無視するのは無性に腹が立つので証を使って回復させる。
「う...」
「で、息子の名前は?」
再び何が起こった、と困惑した表情を浮かべる男。
「早く答えろブタ」
「...サイラス・ブラウンだ。まさか、息子に手を掛けるつもりか!」
「チッ...外れかよ」
それだけは止めろとかなんとか叫んでる男だったが、俺はもう眼中になかった。溜息をつきながら、時間を無駄にしただけだったと心の中で悪態をつく。知り合いにサイラスなんて名前の奴はいないからだ。同級生の父親だったら少しは気が晴れたのに。
苛立ちをぶつけるかのように魔術を叩きつけた。今度は殺すつもりで。
「“ストーン・ランス”」
「ぷぎゅっ」
...ハハ。最後の最期に一番ブタらしい声が出たじゃないか。
〇
設計図の回収は思った以上に上手くいった。敵はちらほら出てきたが、たかが数十人で俺達をどうこう出来る訳がなく、順調に設計図が保管されている部屋に到着した。理由は知らないが、設計図は石板である事が多い。だから見つけるのはそう大変な事ではなかった。
設計図を手にした俺たちは無事船に戻り、今は甲板で作戦会議をしていた。船長室でやればいいじゃないかと思ったのだが、顔に出たらしい。それではいざという時に対応が遅くなるらしい。仕事熱心な事だ。
「さて。あの艦隊をどう突破するかという話なのだが...」
「ぶっちゃけ、
「それをエイベルが予測してないとは考え難い、という事か。」
「そうなんだよなぁ...」
俺達の目標は、不気味なほど沈黙を貫いている敵艦隊を突破して合衆王国に帰還することだ。その重要なファクターとなるのが
だが、エイベルが居る限り、その“簡単な事”が上手くいくことはないだろう。アイツの証は魔術の発動を妨害するもの。しかし、膨大過ぎる魔力が込められた魔術には対抗出来ない。それは以前
「敵艦隊に動きあり!」
しかし、敵は議論を続ける時間すらも与えてくれないらしい。
結論を出すのを諦めた俺たちは、腹を括って戦闘へと挑むのだった。
〇
「面倒くさい。見たくもない小説の2周目を無理やり見せられてる気分だ。」
戦場にいながら、寛いだ姿勢で意味不明な文句を垂れる仮面の男。
この船は...いや、この艦隊の運命は、皮肉なことにコイツに預けられる事になった。
エイベル自身全く納得していないし、出来ることなら今すぐコイツを殺してやりたい。というか、実際そうした。これでも王国最高の頭脳とか言われたオレだ。不本意に脅されているこの状況で何もしない訳なく、一度全力殺そうと試みたことがある。
あの時は悪夢でも見てるのかと思ったほど、非現実的だった。忘れもしない、あれは船の上での出来事だった。
まず最初に、メシと飲み物に毒を仕込んだ。そして船内も毒ガスで充満させた。とは言え気づかれないことが第一条件だったので大分効きの弱いものだったが。まぁ、毒如きで殺せるとは最初から思っていなかったため、毒が効き始める時間にアイツの部屋に暗殺者を放った。そして、暗殺者が部屋を襲った10秒後に、船を暗殺者と船員もろとも師団級の魔術で吹き飛ばした。アイツが居た船周辺を結界で包んで逃がさないようにして、その中に魔術を叩き込み続けた。もし結界から逃げられていた時の為に、周辺海域に大量の毒もばら撒いた。
不死の証を持つ者でも完封してみせる自信があった。
にも関わらず、アイツは生きていたのだ。
恐ろしいどころじゃない。神にでも愛されているのか、と心の中で悪態をつく。
何にせよ、俺にコイツを殺す手段はない。
コイツが「任せろ」と言った以上、任せるしかないのだ。
(それにしても、何故コイツはあのガキに拘るのか...)
始めて会った時からそうだ。あのガキの事について話すとき、アイツは殺したくて殺したくてたまらないと言った憎悪の感情を目に浮かべている。殺そうとすれば直ぐにでも殺せそうなのに、コイツはガキを殺すつもりがない。何処までも中途半端なのだ。まるで――――
しかし、その男によって思考は中断される。
「そろそろか」
何が、と尋ねる前に、今度は見張りの声が耳に届く。
「敵船、動き出しました!こちらに向かって来ます!」
まるで知っていたかのようなタイミングだ。今までもこういう事があった。まるで未来を知っているかのような言動もそうだが、先ほどの“2周目”という言葉は俺に確信を与えつつある。
まぁ、知ったところでどうにか出来るとは思ってもいないが。
(だが、時間さえあれば必ず殺してやる。)
「さぁ、
だが、神はエイベルに時間を与えなかった。
嫌な予感がして上を見上げる。
―――そこには、巨大な魔法陣があった。
それだけなら、あのガキが何か仕掛けたのかと思うだろう。
だが、空には複数の魔法陣があった。一つ一つの大きさは懲罰部隊が全力で発動した
「お前は凄いよ、エイベル。こんなチートがなければ、きっとお前には敵わなかった。だから、こう思わずにはいられないんだ。お前がもう少し遅く生まれていたら、ってな...あばよ。」
男は、狂気に目ではなく、罪悪感で満ちた目をしていた。
エイベルは、何が起こったのか分からぬまま、意識を手放す。
「—――ごめんよ、オリヴィア。」
最後に、愛娘の名前を呟いて。
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......
...
10万人の将兵が海の底に沈められた、監獄島沖の惨劇。後にそう呼ばれるその悪夢は、懲罰部隊と、とある大罪人の名前を、歴史に刻むことになる。
――最初に起こった、あくまでもきっかけに過ぎない事件として。
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エイベルの殺意高過ぎぃ...
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