第65話

前回のタイトルミスった。

あと、流石に二桁PVはヤバいなって思ったので何とか捻りだして書きます。

船に関してはパイレーツ・オブ・カリ〇アン当たりをイメージしてもろて。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


そう俺が語り終えたのを見計らって、オーティスが口を開く。

背中合わせで見張りをしながらだったから、彼の顔は見えない。だがなんとなく、表情を変えていなそうだな、と思った。


「まぁ、いいんじゃねぇの、夜空くらい。」


彼の返答は簡素な物だった。思わず拍子抜けしていると、彼は再び口を開いた。


「何より、今日は満月だ。星空も確かに美しいが、月の綺麗な夜空もいい。」


そういう問題か?...いや、そういう問題か。

確かに、俺がトラウマを抱えているのは星空だ。月を見上げる分には問題ないのかもしれない。屁理屈のように聞こえるが、そもそもこれは心の問題なのだ。理論的に考るのも馬鹿馬鹿しい。



そう心の中で結論付け、俺は意を決して顔を上に向ける。



「...静かだな。」


思わず、そう呟いてしまう。星空が煌めく美しさだとすれば、月は静かに佇む様な美しさを纏っていた。その明かりに照らされて、星空はまばらにしか見えない。


「俺、海とか空とか見てると、なんで戦争なんかやってんだろって思うんだ。なんか、全部が全部馬鹿馬鹿しく見えてしょうがないんだ。」


...今のオーティスは、どんな表情を浮かべているのだろうか。言葉通り、戦争を馬鹿にしたかのような顔をしているのか。それとも、言葉とは裏腹に何処か寂しげな表情を浮かべているのだろうか。


なんとなく、どちらでも無いような気がした。


「...そうだな。確かに、馬鹿馬鹿しいよ。」


なんでこんなに殺さなければいけないんだ。なんで仲間が死ななければいけないんだ。そう思ったことはある。でも、たぶんをの気持ちは贅沢だ。少なくとも、他の兵士から見れば。


だってそうじゃないか。俺は、俺たちは大きな力を持っている。それに比べ、彼ら兵士は一人では戦力にならない。言ってしまえばその他大勢と同じなのだ。戦争などなければ、誰かにとって大切な人かもしれない兵士は、戦場ではただの数字になってしまうのだ。行きたくもない戦場に、でも大切な人や故郷を守るために飛び込む。


ただ、”馬鹿馬鹿しさ”という一点においては王国兵が圧倒的に勝っていると思う。合衆王国兵には故郷を守るという大義がある。それに比べ、王国兵は徴収された人間がほとんどだ。いきなり兵士に仕立てられ上げられて、やりたくもない侵略戦争の片棒を担がされる。その結末が、理不尽に殺されるなんてばかばかしいとしか言いようがない。彼らにも、家族や大切な人がいただろうに。


まぁ、今更か。俺の手は、彼らの血で汚れているのだから。



色んな考えが頭の中を走り回ってる。


でも、月は相変わらず静かに佇んでいた。


確かに。あの月の、大海の、大自然の雄大さに比べたら、こんな事を考えることすらも馬鹿馬鹿しいのかもしれない。



「...早く、この馬鹿馬鹿しい戦争も終わるといいな。」








月を視界に収めつつ、しかし任務の為に海の彼方に視線を巡らす。

まぁ、あの大艦隊が嵐を超えて来る訳ないだろうと高を括っていた。だがしかし、戦場において油断”大敵だ。しかも、俺はあの時油断したせいで味方を失う羽目になったのだ。俺は一層心を引き締めていた。



―――と、その時。


「...なぁ。あれって船だったりする?」


後方の水平線に、微かな凹凸が見えた。最初は島か何かだと思ったが、それはおかしい。船は直進しているからだ。後ろに島があるならどこかのタイミングで通過なりしていないとおかしい。


そして何より、その凹凸が少しずつ大きくなっているのだ。まるで、こちらに後ろから近づいてくるかのように。


(見間違いであってくれよ...!)


そして、俺の言葉に反応したオーティスが見張り台から身を乗り出してこう呟いた。


「どれどれ――スキル、遠見—―」


オーティスが証を持っているという事実に一瞬驚愕するが、それもそうかと納得する。これだけ軍人の数がいるのだ、証を持っているやつも相応にいるのだろう。

そして、俺はその証の結果が良いものであってほしいと一縷の望みを掛けるが...


オーティスは深い溜息をつき、目頭を手で押さえながらこうつぶやいた。


「...なんであの嵐を突破しようって思うのかねぇ...」


どうやら、俺の願いは叶わなかった様だ。







「敵艦隊補足!!!」


喉が張り裂けるのではないかと疑う程の大声を張り上げがオーティス。そして、船員達のオーティスの声に対する反応は迅速だった。彼らは1分も経たぬ内にぞろぞろと甲板に出て、各々の持ち場に付く。


「総員第一種戦闘配置!第三戦速に移行!追いつかれるな!ライト殿、そこにいても意味ないでしょう!早く降りて下さい!」


バークの声に一瞬固まってしまう。だが、それは降りるかどうかで迷っているわけではない。どう降りるかが問題なのだ。片腕で梯子を使う事の難易度は先ほど思い知ったばかりだ。


...まどろっこしいな、もう飛び降りよう。


最悪怪我しても証を使えば何とかなるし。そう思うと同時に見張り台の縁に手をかけ、身を空中に投げ出す。


浮遊感と迫る甲板を感じ、その直後足から着地した。

あまりの衝撃に思わず目を顰めるが、それも一瞬の事。証を使って足を治療する。

そうして顔を上げると、そこには驚いた様な表情を浮かべたバークが居た。


「...あまり無茶しない様に」


どうやら今の飛び降りに対した言った様だ。心配させてしまったかと思い、証があるから問題ないと言葉を返すが、彼は微妙な表情をしたままだった。


「それより、これからどうするんだ?」


今一番気になるのはこれから俺たちが取るべき行動だ。おそらく、嵐を突っ切る過程で敵艦隊を追い越してしまったのだろう。もともと追い越す予定だったとは言え、このタイミングは少々不味い。後ろに敵艦隊が居る以上そのまま回頭して撤退する訳には行かないし、それ以外のルートでは帰還出来ない。軽量化の為に食料含めた荷物は最小限だからだ。


「数から推測するに、あの艦隊は高速艦のみで構成された別のモノですな。」

「...また、ハメられたのか。」


速度に秀でた船のみで構成された艦隊が迫っている。それは、敵がこちらの行動を予測していなければ出来ない行動だ。大方、エイベルあたりが指示したのだろう。


(まさかこの作戦まで読まれるとは...)


これは予想外と言うしかない。こうなれば時間との勝負だ。俺らが設計図を奪取して撤退するのが先か、敵艦隊がこちらに追いつくのが先か。


しかも最悪な事に、設計図を奪取した所で待っているのは敵の大艦隊だ。その中を突破しないと国に戻れない。エイベルの誘導によって、俺たちは取れる手を1つのみに絞られてしまったのだ。


「...こうなってしまった以上出来ることなどそう多くはない。」


しかし、そう思い悩む俺に対し、バークの返答はシンプルだった。


「前進あるのみ、ですよ。」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

あ゛あ゛あ゛あぁ!!

見てわかる通り迷走中ですハイ。伏線もないし展開もない。これと一個前の話まるまる無駄な気がしてきた...もう次からかっ飛ばしていきます(ヤケクソ)。

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