第62話

なんとか更新続けていきたいですね。ただでさえ一話ごとの文字数が少ないのに...仕事と両立しながら毎日5000千文字書いてる人とかマジでスゴい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「こうして集まるのも久しぶりだな...」


いつものように火を囲って、各々好きなことをしている隊員達。だがそれも、以前より暗い雰囲気を纏っているように見えた。


(...まぁ、俺より落ち込んでる奴はいないが。)


やはり他の隊員達は復讐なりなんなりの信念を持っているか、あるいはどうでもいいという一種の諦めを持っているのだろう。


「それで王国ってのはどんな国なんだ~?」

「あんな悪魔どもの総本山だ!どうせ地獄みたいなところに決まってるぜ!」

「ハハっ!ちげぇねぇ!」


そして、それ以外にもいつもと違う事がいくつかある。それは飲んでるのが俺達以外にもいる...いや、正確に言えば全員飲んでるという点だ。


敵に打撃を与えられなかっとは言え、国から追い出したのは事実。そして兵士たちにとっては、その事実は十分歓喜に値するものだ。こうして脅威が去った今、少しくらい羽目を外しても構わんだろうということで兵士全員に酒が配られたらしい。


と、いうことで。俺たちは今絶賛絡まれ中である。隊員の暗い雰囲気もこいつらのせいかもしれない。


「...あぁ、たしかにクソみたいな国だよ。」


合衆王国の兵士たちに適当に返事をしつつ、そういえなコイツらにとって俺達はどう見えているのだろうかと疑問に思った。


王国に故郷を焼き払われ、必死の抵抗空しく後退していく戦線。そこに王国の人間である自分たちが参戦したのだ。王国の人間のくせに、何故こんな奴等に頼らなければいけない。だが俺らに助けられたのも事実だ。心中穏やかでないのは確かだろう。


そんな彼らがわざわざ話しかけてくるのだ。酒が入っているとはいえ、その心意気は素直にすごいと思う。


「ってか、俺達こっからどうすんの?王国兵どもは蹴散らしたし、もう戦争は終わりか?」


その合衆王国兵の一言に、俺は思わず暗い気持ちになった。

戦力は残ってるし、こちらに海上輸送を妨害する手段もないため補給も万全。

王国からすれば、停戦する理由など一つもないのだ。


(まぁ、強いて言うなら帝国と開戦した時だが...)


帝国はまだ先の戦争から立ち直り切れていないと聞く。そんな状態で王国を敵に回すのは無謀だろう。王国の中核戦力も帝国との国境線に張り付いたままだし。


...そう。王国の

これはエイベルが簡単に撤退を選べた理由の一つだろう。“帝国との国境線から何人か引っ張れば、どうせまた上陸出来る”。そういう安心感があったからこその、あの大胆な撤退なのだ。



...とは言え、それを合衆王国の兵士に言う必要はない。というか言ってはいけない。この情報が広がれば士気の低下は免れないし、何より酒の場でネガティブなことを言って得など何もない。


「そうだな。」


俺は曖昧な返事をするのみだった。



...だが確かに、これからの戦局はどうなるのだろうか。

王国は監獄島に籠って増援を待つだろうし、こちらも手出し出来ないとなれば。


「まぁ、しばらくは何もないだろうな。」










「貴官らに監獄島に行って貰う。」


クリスティア王女に呼ばれ、何事かと話を聞こうとしたらこれだよ。

まさかもうこんな事を命令されるとは...さっきの会話、完全にフラグだったようだ。


「...貴官らって、懲罰部隊だけでって事ですか?」


軍の中ではあくまでも上官と部下の関係。上下関係がガッチガチな軍隊で俺達が偉そうにしていては士気に関わる。命令は基本的に守るようにしている。ということで敬語を使って話している俺だが、流石に一部隊だけで監獄島を攻略しろというのは流石に疑問を持たざるを得ない。


「この前の戦いを見たでしょう。俺達だけでは勝ち目は薄いと思いますが...」

「弱気だな。まぁ、厳重に守られた要塞を攻略しろなんて事は言わないさ。」

「...?」


要点が掴めない。監獄島を攻略するのに、厳重に守られた要塞は攻略しない?どういうことだ?


「分からないなら説明しよう。敵が撤退を始めたのは昨日、しかも大艦隊だ。監獄島に到着するのにかなりの時間がかかるだろう。そこで、貴官らには別の港に残っている高速船を使ってすぐにでも追い越し、先に監獄島に攻め入れ。」


なるほど、言いたい事は理解した。


「...いや、どっちにしろ無謀では?」


主力が到着していないとは言え、あそこには常に守備兵力がある。時間をかけたら挟撃されるし、かりに攻略出来たとしても直ぐに10万の兵力が押し寄せてくるのだ。そうなれば、こちらに退路はない。


何故そんな命令を...とそんな気持ちでクリスティアを見るが、彼女は苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。


「こちらも手をこまねいて待っているわけには行かんのだ...」


まぁ、それはそうだろう。時間を掛ければ掛けるほど不利になるのはこちらなのだ。

言ってみればジリ貧。こちらから行動を起こさなければという焦りは理解できるが...


「...流石に死ねと言われてハイそうですかと頷く訳には行きません。」


この作戦はあまりにも無謀すぎる。

一応とは言え隊員の命を預かっている身だ。こんな作戦を容認する訳にはいかない。


そんな俺の思惑を知ってか知らずか、


「安心しろ。貴重な戦力をむざむざ死なせるほど馬鹿ではないさ。」


俺が再び頭に疑問符を浮かべると、彼女は少し得意げな顔をしてこう言った。



「—―貴官らには監獄島の港にあるであろう設計図を取って来て貰いたい。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

未成年飲酒は犯罪です。絶対にしないようにしましょう(今更)


あと、この世界は成年が早め...というか成年、未成年という概念がない世界です。なのでセーフ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る