第58話呆気なく
バイトが忙し過ぎてヤバいっす。
ごめんなさい。
一日14時間労働で週1の休みってどういうことだよ...
中卒扱いだからってどんだけ使ってもいいとか思うなよ糞ブラックが(ごめんなさい)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ハハハ...俺の...勝ちだ」
目の前に広がる、さっきまでと何も変わらない光景。
それは、俺達がまだ生きている事を、そして“掛け”に勝った事そ示している。
結局、あれがどんな効果をもたらすモノなのかは分からない。
まぁ、魔術を相殺するとかそんなモノだろう。
だが、使う前は全く意味不明だったのだ。
完全に偶然。どんな確率だよ、全く。
「ぐっ...」
...だが、全てが上手くいった訳ではない。
アレは、俺達の総魔力量のおよそ8割を使う魔術だ。
そんなモノを消耗した状態で使ったという事は、その先は誰でも分かる。
「吐きそうだ...」
魔力切れの症状である、激しい頭痛と吐き気。
それらを何とか抑えながら、この状態からどうすれば良いのかを必死に考える。
状況は依然として最悪だ。
あそこを切り抜けられたのは奇跡だが。
これからはそうは行かない。
俺達も敵も、この場にいる人間はほぼ全員魔術を使い切っている。という事はつまり、一人当たりの戦力は同等。
...同じ土俵で戦わなければいけなくなる。
簡単に言えば、30人対100000人。
万に一つも勝ち目はない。
その上、こちらには負傷者も多いし、魔力切れで気絶している連中もいる。
全員助ける方法は...ない。
「意識が残っている奴は聞け...!」
だが、敵はまだ呆然自失といった状態。
つくなら、そこしかない。
「敵の一斉斉唱魔術は退けたが、依然として最悪な状況だ...!!」
何人生き残れるだろうか。
もしかしたら...いや、かなりの確率で全滅するだろう。
さっきの時と同じ。低確率に掛けるしかない。
「自分で歩ける奴は合衆王国軍の居る方へ逃げろ...ッ!!」
今日は何回ギャンブルすればいいんだよ。全く!
なんて呆れながらも、とうの昔に腹は括ってある。
だが、それは俺の話。
隊員全員が、こんな所で死ぬ気を持っている訳ではない。
「歩けない奴は...すまない、残って時間稼ぎでもするしかない。」
それでも、少しでも生存率を上げるために。
犠牲は、必要だ。
――――――でも、だからこそ。
「俺も残る。」
隊長である俺は、責任を取るべきだ。
〇
「――――え?」
ライトの言っている事が、信じられなかった。
今の状況に絶望して、そんな事を口走ったのかとも思った。
でも、彼の覚悟を決めたようなその瞳を見て、彼が本気だと分かってしまった。
「そんな事、絶対にダメ...ッ!!」
頭で考えるより先に、口から飛び出してきた私の言葉。
熱くなった私の頭は、しかしライトの何処か困惑したような表情を見た瞬間冷水をぶっかけられたかのように覚める。
(私は...何てことを...!)
自らの責務を自覚し、最後まで戦い抜くという彼の意志を―――覚悟を。
何も考えずに、ただ本能的に否定してしまった。
でもそんな私に怒るでもなく、ただ困ったような表情を浮かべるだけのライトを見て、心が締め付けられるような気持ちになった。
「...何で、なんでライトが死ななきゃいけないのッ!_?」
それでも、口に出さずにはいられなかった。
何より、彼がここに残らなければいけないこの状況が許せなかった。
「何でって言われてもなぁ...まぁ、こんな状況になったのは俺の慢心のせいだから、かな。」
「そんな事...ッ!」
確かに、慢心はあったのかもしれない。
それでも、彼は彼なりに最善の選択をし続けたと思う。
それでも、ライトの意志は固かった。
「―――頼む、行ってくれ。時間がないんだ...!!」
...焦りを感じさせる程の、願い。
覚悟と、悲痛さと、必死さをも伴うそれを軽々しく断る事が出来る筈もなく。
爪が手のひらに食い込む程手を握りしめ、歯が軋むほど歯軋りをする。
それでも、行先のないやるせなさと怒りを感じながら、言葉を絞り出す。
「.........絶対、生き残って。」
――――その瞬間、王国軍の方で何かが光ったのを感じた。
「...ッ!?避けろサラッ!!!!」
〇
王国軍から飛んでくる、炎魔術。
それがサラの居る方へ突き進むのを、ただ見る事しか出来なかった。
もうこれで終わりでもいい。俺の命を賭してでも、彼女を救いたいと、必死に願う。
時を戻せればと、必死に願う。
だが、魔力が切れ、証すら持たない俺にはどうすることも出来なかった。
叫びながら、彼女の方へと走り寄る。
だが、魔力切れの症状の為か、走る事すらまともにできずに倒れ込んでしまう。
「あああぁ...ああ、ああああああああッ!!!!」
自分の無力さと絶望感に打ちひされ、無意味に叫ぶ。
それでも、目を逸らせなて。
――――呆気とした表情を浮かべたまま、炎に包まれる彼女を、その一部始終を。全て、目に映してしまった。
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