第56話 死線


「バカだなぁあいつ...」


わざわざ自分の策を敵に大声で伝えて来るライトを見て、どこか冷めた気持ちになった。


(いくら強くても所詮はガキか...)


アイツの策自体は別に悪くはない。

ただ、アレは敵に明かしたら価値が一気に下落するタイプの策だ。


対策は幾つかあるが...まぁ、一番簡単なモノで良いだろう。

この作戦はあくまでも懲罰部隊の戦力を削ぐことだ。

合衆王国軍と戦闘でもしてしまったら目も当てられない。


ってことで、ライト君には悪いが―――



「一時撤退、フェーズ4だ。」



リセットさせて貰おう。






「ライト!アイツら味方のの方に移動してる!!」

「何!?」


隊員の耳を疑うような報告に驚く。


目をそちらに向けてみれば、確かにエイベルたちは敵軍と合流する動きを見せていた。


その不可解な行動の真意を探ろうと、必死に頭を回す。


敵からすれば、依然として有利な状況が続いているはず。なのにも関わらず、敵は隙ともとれる行動をとった。ということは――


(合衆王国軍が近づいてきている?)


いや、それは早計だ。


そう頭に浮かび上がる楽観的な考えを直ぐに捨て、それ以外の理由を考える。


俺が策を伝えたタイミングでアクションを起こしたという事は、それはこの策の対策を取るという事か?


...いや待て、何も考える必要はない。


「総員傾注!これは間違いなく好機だ。取り合えず距離を取―――」



―――指示を出すのが、遅れた。


その瞬間、全身の毛が総毛立つのを感じた。


(何故、気付けなかった...ッ!)


―――これは、もう終わりかもしれない。







総魔力量だけで考えれば、俺達とあの軍勢にそれほど差はない。むしろ俺達が勝っているくらいだろう。


だが、その魔力量を一瞬で消費出来るかと言われると話は変わってくる。


俺達は個人の魔力量では圧倒てしているが、アイツらは人数で圧倒しているのだ。



何が言いたいのかと言うと、瞬間火力が桁違い。




魔術や魔力の説明をする時、よく水瓶を例にされる。


その水瓶の大小は魔力量の大小。

瓶の口の大小は魔術の規模の大小。


一度に放出される魔力が多ければ多い程、その魔術の威力は高いとされている。俺達は水瓶の大きさは大きいが、それに比較すると瓶の口の大きさはそれ程でもない。


前に、火力は世界一だと言ったことがある。

それはなにも誇張ではない。


だがその火力とはあくまでもな火力であり、瞬間火力ではないのだ。


水瓶の話を例にすると、そこそこの量の水を垂れ流すことは出来るが、一瞬を切り取って比べたらそうでもないという事だ。


それに対し、あの軍勢はどうか。


一つの瓶の大きさは大したことないし、瓶の口の大きさだって小さい。

だが、数は超大量10万本


それを一気に全部ひっくり返したら―――







――――その一瞬で出る火力水量は、俺達の比ではない。








「クソがッ!!!」



どうする、どうする、どうする。

どうすればいい、どうすればいいんだ!?


幸いなことに、魔術はまだ放たれていない。

だがそれも時間の問題だ。


敵の方へ目を向ける。


エイベル達が敵軍と合流し、その障壁内に入った瞬間。

それまでに何か打開策を講じなければ、俺達は終わる。


防げるか?いや、いまからじゃ確実に間に合わない。

前みたいに空を飛ぶ?ダメだ、空中に居る時に迎撃されて終わる。

あえて敵陣地に突っ込むか?だめだ、それも間に合わない...ッ!!


......詰みだ。完全に詰んだ。


時間を巻き戻せれば、と手を握りしめるが、もう遅い。


(このまま、死ぬのか?)


まだ、復讐もしていないのに―――


...いや、諦めるなッ!!こんなところで、死んでたまるか!




と、その時。何故かふとのことを思い出した。


残りの魔力は、おおよそ6割。


...これでは、完全な状態で放つことは出来ない。


それでも、ある程度は使える。


けど、そもそもどんな効果があるかも分からないのだ。

分が悪すぎる賭けだ。


...でも、どうやらやるしかないみたいだ。


大きく息を吸い、隊員達の顔を見渡す。



さぁ。




理を破壊する者システム・クラッシャーを使う。」



一か八かの掛け、付き合ってもらおうか。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

どうも、また投稿サボった挙句クソみたいに少ない文字数のやつ投稿するという舐め腐った作者です。


ごめんなさい。

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