第27話 囚人達

今飛行機の中なんだけど、物凄いハズレ席を引きました。

折角窓際なのに、ドンピシャで壁があって何も見えない...


空の上で、雲と眼下の景色を見ながら小説を書くという夢は叶いませんでした。

帰りの飛行機に期待することにします。



視点が変わりすぎて見にくかったらすいません。これからは主人公視点です。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


夜、満点星空の下、俺達は監獄島にある少し開けた場所で、火を囲っていた。


――俺達、つまり俺以外が居るという事だが、それには訳がある。


あの後、なんとなく島無いを徘徊してたら他の囚人に会った。

その囚人たちによると、俺がアベルが死んだ場所で海を見ながらボーっとしていた時、囚人達はとある少女と会ったと言っていた。そこで、食料やら毛布やらを貰ったとも。


最初は囚人達も合衆王国へ連れて行って貰う予定だったらしいが、海戦で船が一隻沈んだらしく、その船の乗組員分のスペースも確保しておかなければならいのでそれは無理だったらしい。“約束を守れなくてすまない”と何度も謝り、出港したそうだ。


という事を説明され、今に至る。



「状況も整理したところで、軽く自己紹介でもしますか」


場を仕切っているこの男、たぶん俺に魔力切れについて教えてくれた奴だ。

そしてその男が、「じゃ」と言葉を続ける。


「まずは俺から。貴族が死んだところに出くわし、てその罪を擦り付けられてここに来た。ガルとでも呼んでくれ。よろしく。」


男がそう言うと、その右隣の、自分と同い年くらいの少年が口を開いた。


「じゃあ、右回りでやっていく事にしよう。名前はリアム。東の大陸の更に東、誰も知らない大陸から来た。異質過ぎたせいでここに送られた。以上。」


「合衆王国出身のクラウだ。人質として王国に売られた。どっちの国にも恨みはあるが、合衆王国の事はそれでも好きだ。よろしく。」


「元騎士のレオだ。主君に裏切られて家族を殺されてその罪を私のせいにされてここに来た。再び会えるかは分からないが、今の主君は私を救ってくれた彼女だ。」


俺の右隣にいた中年の男が言い終えたのを確認して、おれも口を開いた。


「剣聖の息子だ。クソしょうもない誤解でここに来た。さっきの話に出てきた王女様の兄、つまり王子と一緒に脱獄しようとして失敗した。彼から遺言を預かっているから、何としてもその王女様と会いたい。よろしく。」


「――剣聖?」


クラウと名乗った男が驚いたように呟いた。

他の囚人達も、驚いたように目を瞠っている。


...剣聖というのは、ただの肩書ではない。軍の正式かつ特殊な階級でもあり、敬称であり、称号でもある。敵国にすらその名が通じる程、父さんは尊敬されていたのだ。


――だから、こんな事になった。というのは、あまりにも無責任な考えだろうか。




全員の軽い自己紹介が終わってから、囚人たちは各々好きな事を始めた。ボーっとしている者、寝ている者、ずっと何か食べてる者。そして、話をしている者。


その話をしていた者達の一人、先ほどの場を仕切っていた男――確かガルと名乗っていた――が話しかけてきた。


「さっきしょうもない誤解って言ってたけど、具体的にはどんな物なんだ?」


話をしていた他の囚人達もそれに頷いていた。

元騎士のレオもそれに追随して口を開く。


「確かに気になるな。剣聖の息子が一発で監獄島送りになるような事とはどんな物なんだ?」


あまり言いたくはないが...仕方ない。


「...強姦。」


「...ふーん。でも、そんなちんけな罪でここに送られる事ってあるのか?」


再び尋ねてくるガルという男。


「話せば長くなるんだが...いいか?」

「気にすんなって。ここにいる連中全員話せば長くな事情を抱えてるからな」

「ハハッ、確かに...じゃあ、話すとしますか。」


そうして俺はあの時の事を話した。




一通り話し終えた俺に対する反応は様々だ。驚く者、同情する者、どうでもよさそうな顔をしている者。


「...にしても、お前運悪すぎだろ。」


確かに、言われてみればそうだ。たまたま女性が襲われているのに出くわして、助けたら誤解されて、しかも相手が聖女で、そして動機も十分な上に怪しい行動をしていた俺...不運が重なるにしても、限度があるだろ。マジで。



「じゃあ、お前は王国自体に恨みがある訳じゃないんだな。」

「そうなる。かといってもうあんな国戻りたくないけど。」

「まぁ、コイツらの話聞いてなお王国が好きだって奴いたら、そいつはよっぽどの愛国者か、話を理解できていないバカかのどちらかだな。」

「ハッ、確かに。言えてるな。」


アイツらの話といのは、それぞれがどういう経緯でここに送られたかの話だ。

俺も話に参加していたので聞いていたのだが、聞けば聞くほど酷いものばかり。

領主の不正をバラしてしまって家族が皆殺しの目にあったりとか。

征伐戦争で王国軍がどんな事をしているのか記事にしようとして、合衆王国行の軍艦に従軍記者としてついていったら監獄島についたとか。

貴族のガキに嫌われて冤罪をでっち上げられたりとか。


確かに、そんな話を聞いてなお、王国が好きって奴はいないだろう。


あと、その話を聞いて気付いた事がある。

それは、囚人内で考えが割れているという事だ。


さっきの話を聞いたところ、王国の貴族とかに家族などの親しい者を殺されたもの、単純に冤罪の者。この二者の話ぶりは大分違っていた。前者は王国に復讐したがっており、後者は割とそうでもよさそうだった。俺はもちろん後者だ。



――どちらにせよ、この後は共に行動するのだ。いろいろ話さないと。



「じゃあ。自己紹介...にしては随分重い話もこれくらいにしておいて――」


俺は他の事をしている囚人たちにも聞こえるような声でそう言うと、周りを見渡す。


「―――これからの話をしようじゃないか。」


囚人達の目が、変わった。







―――これからの話、といっても、俺達に出来る事は限られている。

無謀を覚悟の上で海に飛び込む、おとなしく王国の艦隊が来るのを待つ、来た艦隊とやり合う。精々がその位だ。その中で、俺達は選択しなきゃいけない。


まぁ、どの道も結局行きつく場所は死だ。


それでも、限られた選択の中で、限られた生の中で、俺達は考えなければ。



「そうだな」

「あぁ。王国の連中、皆殺しにしてやる。」

「めんどくせぇ」

「食料ってこれで終わり?」

「そんな事より見てよ上。めっちゃ星綺麗。」


......か、考えなければ。






...............

.........

......

...






なんとか全員を話に参加させ、話し合う事数十分。


俺達は話し合いの結果、俺達は艦隊が来るのを待つことにした。

海に飛び込んだり、艦隊とやり合うのはそのまま死ぬだけだ。


王国側の艦隊がわざわざ犯罪者を乗せるとは考えられないが、自殺行為をするよりはマシだ。殺されそうになったらその場で戦い始めればいい。


何せ、ここに居る全員が魔力切れによる眠りに就いていたのだ。


――つまり、全員が全員、証さえ超えてしまう程の圧倒的な魔力を持ってるのだ。どんな相手が来ようと、正面から戦えば負けることはない。










―――一方その頃、王国のとある港では、艦隊の出港準備が大急ぎでされていた。

合衆王国と王国の中継地、通称監獄島が敵艦隊に強襲されたのだ。


ここを失えば、征伐軍は補給に支障が出て大損害を被る事になる。


当然、監獄島に向かう艦隊の指揮官は優秀である必要がある。


また、監獄島が占拠されている可能性もあるため、その場合は要塞内で戦うことになる。

屋内での戦いでは、剣術が有利。よって、剣術においては王国内に右に出る者が居ない程の強者が指揮官――と言っても実際には海軍提督が指揮をとる――となった。




――――――剣術では最強。




そう、剣聖だ。



「ライト...」


剣聖であり、一人の親でもあるその男は、船の艦橋でそう呟くのだった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

全てを捧げると決意した相手に一瞬で置いてかれるレオさん...


今はラオスのホテルでカタカタしてます。


今日は疲れた...

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