第18話 協力者

学校の提出物だる過ぎるねんけど。

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「弱すぎる。それでも剣聖の息子か?」

「だから努力して来たんだ」

「もっと努力するんだな」


うるさい。


「剣聖の息子なの!?凄い!!」

「さぞかし強いんだろうなぁ...」


「...え?そんなに弱いの?私本気出してないんだけど...」

「ハハハハハ!アイツだっせぇ!!剣聖の息子だからって警戒し過ぎたわ!」


うるさい、うるさい、うるさい


「君にはガッカリだよ。ライト君」


「お前には、期待していない」


うるさい、うるさい、うるさい!黙れ!

俺は努力してきたんだ!!お前らなんかよりもずっと!!



『そうか、それで?手段も選ばずに努力して、お前はどうなった?』


「外道が」

「言い逃れするつもりか!」

「最低...!」


うるさいうるさい!!

冤罪だ!!俺はそんな事してないっ!


『確かに冤罪だ。だが、アイツは犯罪者であると分かっていたのだろう?劣等感の末に犯罪者に教えを乞うなんて考えられん。自業自得だ。』



ああああああ!うるさいうるさいうるさいうるさい!!黙れェ!



「...ッ!?」


ハッとして目を覚した。体中に嫌な汗が流れている。


「はぁ...夢か...」




監獄島という地獄に送り込まれるて、一週間ほど経った。


相変わらずクソみたいな生活を送っているが、船で移送されていた時よりは幾分かマシだ。とは言え、地獄は地獄。精神がガリガリと削られている実感がある。


それは、自分にはまだ削られる精神と、それを自覚できる判断力があるという事だ。

それすらもなくなってしまう前に、何としても行動を起さなければいけない。


とは言え、日光の元に出るどころが牢からも出れない自分に出来ることは限られている。ここは地下牢であるため、窓すらない。


...どうやって脱獄しようか考えれば考えるほど絶望してくるが、諦めたら終わりだ。


絶対に、こんなクソッたれな場所から出てやる―――








「入れ」


その時、久しぶりに囚人の呻き声以外の声が耳に入った。

それは、自分がこの部屋にぶち込まれる時にも掛けられた言葉だが、自分はずっと動いていない。となれば、声を掛けられたのは自分以外の誰かという事になる。


気になって目を上げると、そこには、暗い地下牢でも分かるくらい綺麗な金髪をした少年がいた。俺より少し年上だ。

悔しそうな表情をしているが―――その目の奥は、爛爛と輝いている。

何も諦めておらず、絶望もしていない。そんな目だ。




「お前の部屋の新入りだ。敵国の王子らしい。精々仲良くするんだな」


そう言って、看守は戻って行った。




......王子?







俺と同じ牢にぶち込まれた、どうやら王子らしい少年。



......何か、凄い目でこっちを睨んで来るんですけど。


滅茶苦茶気になるので、一応話しかけてみる。


「何か用か?」


「...犯罪者と話すつもりはない。」



...は?何だお前?



「―――今、なんつった?」

「犯罪者と仲良くするつもりはないと言ったのだ。クソったれの国の中でも更にクソな底辺野郎が。」


なるほど、敵国の王子なだけあって、俺に向ける敵意は中々な物だ。


――だが、“底辺”という言葉に、思わずイラっとする。未だにこんなチンケな劣等感を持っているのも笑える話だが、それとこれは別だ。ウザい物はウザいのだ。


なので、俺も負けじと煽り返す。


「そんなクソ国家に無様に捕まったお前は、差し詰めクソ以下のハエかな?」

「――殺すぞクソ野郎」

「やってみろよハエ野郎」



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..........................

......................

..................

.........

......

...




カビの匂いの漂う、ジメジメした地下牢の中。俺は――いや、俺達は汗を流しながら肩で息をしていた。




「ハァ...ハァ...な、なぁ、こんな無駄な事やめようぜ...」

「ハァ...そうだな。確かに、こんなしょうもない事に体力を費やす余裕なんてないしな...」



...ありとあらゆる暴言を吐き散らしながら、元々少ない体力を使ってヘロヘロになりながら殴り合っていた俺達は、さぞ醜かっただろう。



「ハァ...さっきは悪かったな。」

「...あぁ、こちらこそ...」



―――早速だが、本題に入らせてもらおう。ガリガリと体力と気力が削られていくこの地獄の中で、俺達に余裕なんて贅沢なものはないのだ。



「お前、ここから抜け出したいんだろう?」



碧い目が、見開かれた。

そして、先ほどより警戒した声色で話しかけて来る。


「...何故そう思った?」


「お前の目が、諦めて絶望した奴のそれには見えなかったんでね。それだけさ。」


俺が肩をすくめてそう言うと、そいつは更に警戒を滲ませた


「...もしそうだったらどうする?」



「なに、簡単な話さ。―――――協力しないか?一緒に脱獄してやろうぜ。」


再び驚いたように目を見開いた。

だが、今度は楽しそうな、しかしどこか獰猛な獣を連想させる、そんなギラついた目をしている。


「いいねぇ。その話、乗った。」





「じゃ、軽く自己紹介でもすっか。まずは俺から、俺はライト・スペンサーだ。冤罪でここにぶち込まれた。よろしく。」

「ライト・スペンサー?...お前、もしかして剣聖の息子か?」

「...あぁ、残念なことにな。あの親父のせいで俺がどれだけ苦労したか...」


苦々しい顔でそう答えると、ソイツは意外そうな顔をした。


「なんか複雑そうだな...その腕とかどうしたんだ?剣聖の息子なのに...まぁ、あまり詮索はしないでおこう。オレの名はアベル。アベル・ブリセーニョだ。早速だが、脱獄についての具体的な内容について話していこうじゃないか。」

「そうだな...けど、何か具体的な策はあるのか?」


脱獄、と一言に言ってもそれれは簡単事ではない。なにせこの部屋から出ることもすらないんだ。脱獄の隙なんてものはこれっぽっちもない気がする。


「...あぁ。一つだけ、出来る事があるかもしれない。」

「と言うと?」


「―――俺の“証”を使う。」




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アベル君は王国に引き渡された王子とは別の王子です。普通に戦争で捕虜になりました。

ちなみに、異大陸出身の登場人物はスペイン系の名前を参考にしています。

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